精神症状のアセスメント
精神看護学 / 精神看護総論・その他
解説
精神症状のアセスメントとは、患者の精神機能を多面的に観察し、どの領域にどのような異常が現れているかを系統的に評価する看護技術です。今回は精神症状のアセスメントについて解説します。
精神症状の分類
精神症状は、観察する精神機能の領域ごとに分類すると整理しやすくなります。代表的な分類は、意識障害、知覚障害、思考障害、自我障害、感情(気分)障害、意欲(行動)障害、記憶障害、知能障害の八つです。看護師はまず患者がどの領域に問題を抱えているかを判断し、続いてその症状が示唆する疾患や危険性を考えながら援助を組み立てていきます。
知覚障害
知覚障害は、外界の刺激を正しく受け取れない状態を指します。代表的なものが幻覚と錯覚です。幻覚は対象なき知覚、つまり実際には存在しない刺激を感じ取る現象で、幻視、幻聴、幻嗅、幻味、幻触(体感幻覚)に分けられます。一方、錯覚は実在する刺激を歪んで知覚する現象で、暗がりでハンガーを人影と見間違えるような体験が該当します。統合失調症では幻聴、せん妄やアルコール離脱では幻視が多くみられます。
思考障害
思考障害は、思考の流れ方を評価する思考過程の障害と、思考の内容を評価する思考内容の障害に分けられます。
思考過程の障害
思考過程の障害には、考えが次々に湧き止まらない観念奔逸(躁状態に多い)、考えが突然止まる思考途絶(統合失調症に多い)、まわりくどく要点に至らない迂遠、つながりのない滅裂思考などがあります。
思考内容の障害(妄想)
思考内容の障害の代表が妄想です。統合失調症では他者から害を加えられると感じる被害妄想、自分に関係づける関係妄想、追われると感じる追跡妄想、毒を盛られたと感じる被毒妄想など、外向きの妄想が目立ちます。これに対しうつ病では、自分を過小に評価する三大微小妄想、すなわち罪業妄想(罪を犯したと思い込む)、貧困妄想(財産がないと思い込む)、心気妄想(重い病気にかかっていると思い込む)がみられます。
自我障害
自我障害は、自分の体験を自分のものとして感じられなくなる症状群です。自分や周囲が現実感を欠いて感じられる離人症、他者に行動や思考を操られていると感じるさせられ体験(作為体験)、自分の考えが吹き込まれる・伝わる・抜き取られると感じる考想吹入・伝播・奪取などがあります。統合失調症に特徴的な症状です。
感情障害と意欲障害
感情障害には、気分が沈む抑うつ、高揚する爽快気分、感情の起伏が乏しくなる感情鈍麻、不安、易怒性などがあります。意欲障害には、自発性が失われる無為、刺激に反応しない昏迷、抑制を失う衝動行為などがみられます。
うつ病のアセスメントと看護
うつ病の中核症状はICD-10やDSM-5で、抑うつ気分、興味と喜びの喪失(アンヘドニア)、易疲労性とされます。DSM-5の大うつ病性障害では、抑うつ気分または興味・喜びの喪失のいずれか一つを含めて計5項目以上が2週間以上持続することが必要で、食欲・睡眠の変化、精神運動の変化、無価値感、思考力低下、自殺念慮なども評価項目となります。看護では自殺リスクが高いことを念頭に置き、安全な環境を整え、希死念慮を直接的に確認することが重要です。安易な励ましや叱責は避け、SSRIやSNRI、抗精神病薬、修正型電気けいれん療法(mECT)など治療への支援を行います。
境界性パーソナリティ障害のアセスメントと看護
パーソナリティ障害はDSM-5で、A群(妄想性・シゾイドなど奇妙で風変わり)、B群(反社会性・境界性などの感情的)、C群(回避性・依存性などの不安・恐怖)に分けられます。なかでも**境界性パーソナリティ障害(BPD)**はB群に属し、見捨てられ不安、理想化と脱価値化(スプリッティング)、反復する自傷・自殺企図、慢性的空虚感、激しい怒り、解離、衝動性を特徴とし、成人期早期に顕在化します。治療には弁証法的行動療法(DBT)などが用いられ、看護では分裂への対応、限界設定(リミットセッティング)、自傷リスク評価、チームでの一貫した関わりが原則です。
まとめ
精神症状のアセスメントは、症状を領域別に分類し、疾患特有のパターンと結びつけて理解することが基本です。幻覚・妄想の種類、うつ病の三大微小妄想と自殺予防、境界性パーソナリティ障害の特徴と一貫した対応など、各疾患のキーポイントを押さえることが、安全で質の高い精神看護につながります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
幻覚は対象なき知覚であり、実在する刺激を歪んで知覚する現象はという。
- 2.
躁状態でみられる、考えが次々と湧き出る思考過程の障害をといい、統合失調症でみられる思考が突然止まる症状をという。
- 3.
うつ病の三大微小妄想は、罪業妄想、、である。
- 4.
他者に自分の行動や思考を操られていると感じる自我障害を(作為体験)という。
- 5.
DSM-5の大うつ病性障害では、抑うつ気分または興味・喜びの喪失のいずれかを含む計5項目以上が週間以上持続することが診断に必要である。
- 6.
うつ病の中核症状の一つで、興味と喜びの喪失を意味する用語をという。
- 7.
境界性パーソナリティ障害はDSM-5のクラスターに分類され、見捨てられ不安、理想化と脱価値化、反復する自傷・自殺企図などを特徴とする。
- 8.
境界性パーソナリティ障害の看護では、明確な枠組みを設ける(限界設定)と、チームでの一貫した関わりが原則である。
