月経周期とホルモン動態
母性看護学 / 女性のライフサイクル・性周期
解説
今回は月経周期とホルモン動態について解説します。月経周期は、視床下部・下垂体前葉・卵巣・子宮内膜が連携して織りなす一連のホルモン変動であり、女性の生殖機能の根幹をなします。看護師国試では、各時期に分泌が増減するホルモン、基礎体温の変化、子宮内膜や頸管粘液の所見、そして排卵を引き起こすLHサージの仕組みなどが繰り返し問われます。基礎から順に整理していきましょう。
月経周期の基本
月経周期とは、月経開始日(出血が始まった日)を1日目として数え、次の月経が始まる前日までの期間を指します。標準的な周期は28日で、25〜38日の範囲内であれば正常とされます。月経出血は通常3〜7日間続きます。
月経周期は、卵巣に注目した卵巣周期と、子宮内膜に注目した子宮内膜周期の二つの視点で整理されます。卵巣周期は卵胞期・排卵期・黄体期の三つに分かれ、子宮内膜周期は月経期・増殖期・分泌期の三つに対応します。28日周期では月経期が1〜5日目、増殖期(卵胞期)が6〜13日目、排卵期が14日目前後、分泌期(黄体期)が15〜28日目という時期分類になります。
ホルモン調節の仕組み
月経周期は、視床下部・下垂体前葉・卵巣からなる視床下部-下垂体-卵巣系によって階層的に調節されます。
視床下部からは**ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)**が拍動性に分泌されます。GnRHは下垂体前葉を刺激し、**卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)**というゴナドトロピンの放出を促します。FSHは卵巣の卵胞を発育させ、LHは成熟卵胞からの排卵と、その後の黄体形成を促します。
卵巣からはエストロゲン(卵胞ホルモン、エストラジオールが代表)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。これら卵巣ホルモンは視床下部と下垂体に対して原則としてネガティブフィードバックを行い、GnRHやFSH・LHの過剰分泌を抑えています。しかし排卵直前のみ、エストロゲンの作用が例外的にポジティブフィードバックへ転換する点が、月経周期最大のポイントになります。
卵胞期(増殖期)
月経開始から排卵までの約2週間を卵胞期といい、子宮内膜では増殖期にあたります。月経直後はエストロゲン・プロゲステロンが低値で、視床下部・下垂体への抑制が外れるためFSHが上昇します。FSHにより複数の原始卵胞が発育を開始し、やがて1個の主席卵胞が選択されます。
発育する卵胞からはエストロゲンが分泌され、その血中濃度は卵胞期後半に向かって上昇します。エストロゲンは子宮内膜を厚く増殖させ、頸管粘液を増量・水様化させて精子の通過を助けます。この時期の基礎体温は低温相で、排卵までの期間続きます。
排卵期とLHサージ
卵胞期後半に成熟卵胞から分泌されるエストロゲン(エストラジオール)が一定濃度(おおむね200pg/mL以上)を48時間ほど持続すると、抑制的だったフィードバックが反転してポジティブフィードバックが働きます。これにより視床下部のGnRH分泌、続いて下垂体前葉からのLH分泌が一気に急増します。これをLHサージといいます。
LHサージが起こるとおよそ24〜36時間後(一般には36〜40時間後とも記載されます)に排卵が誘発されます。つまり排卵直前にはLHが最も高くなる時期であり、市販の排卵検査薬は尿中LHを検出することで排卵日を推定しています。28日周期では排卵はおよそ14日目前後に起こります。排卵期の頸管粘液は牽糸性が高く水様で、精子の通過に最も適した状態となります。
黄体期(分泌期)
排卵後、残された卵胞は黄体へと変化し、プロゲステロンとエストロゲンを分泌します。プロゲステロンは黄体期中期(排卵後6〜7日目ごろ)に血中濃度がピークに達し、子宮内膜を分泌期へと変化させて、受精卵の着床に適した環境を整えます。着床はこの黄体期中期に起こります。
プロゲステロンは視床下部の体温中枢に作用して体温を0.3〜0.6℃上昇させるため、排卵後の基礎体温は高温相となります。高温相は通常10〜14日間持続し、これより短い場合は黄体機能不全が疑われます。基礎体温が低温相と高温相の二相性を示すことは排卵が起こっている証拠となり、低温相から高温相への移行点が排卵日の目安です。
黄体期の頸管粘液はプロゲステロンの影響で量が減少し粘稠となり、精子の通過は妨げられます。乳房緊満感、浮腫、気分変調などの月経前症候群(PMS)様症状が出やすいのもこの時期です。
妊娠が成立しなかった場合、黄体は約14日で退縮して白体となり、プロゲステロン・エストロゲンが急減します。これに伴い子宮内膜の血管が攣縮して内膜が剥脱し、月経出血として排出されます。妊娠が成立した場合は、絨毛から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が黄体を刺激して妊娠黄体として維持し、プロゲステロン分泌が継続することで内膜が保たれます。
各時期の所見の対応
国試では「ある日付がどの時期にあたるか」を計算させ、その時期のホルモン・基礎体温・子宮内膜・頸管粘液・症状を答えさせる総合問題が頻出です。月経開始日から日数を数え、排卵期(14日目前後)の前か後かでまず卵胞期か黄体期かを判定します。卵胞期はエストロゲン優位・低温相・増殖期内膜・水様で多量の頸管粘液、黄体期はプロゲステロン優位・高温相・分泌期内膜・粘稠で少量の頸管粘液、と整理しておくと判断が容易になります。
まとめ
月経周期は視床下部のGnRH、下垂体前葉のFSH・LH、卵巣のエストロゲン・プロゲステロンが階層的にフィードバック制御する精緻な仕組みです。卵胞期にはFSHのもとで卵胞が発育しエストロゲンが上昇、排卵直前にはエストロゲンによるポジティブフィードバックでLHサージが起こり排卵を誘発します。排卵後は黄体からプロゲステロンが分泌され、基礎体温は高温相となり子宮内膜は分泌期に変化して着床に備えます。妊娠が成立しなければ黄体は退縮し、ホルモン低下に伴って月経が起こります。時期と各ホルモンの動き、基礎体温の二相性、頸管粘液や子宮内膜の所見を対応づけて理解することが、国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
月経周期は月経開始日を1日目として数え、標準的な周期日数は日である。
- 2.
視床下部から拍動性に分泌され、下垂体前葉を刺激してFSHやLHの放出を促すホルモンをという。
- 3.
卵胞期に下垂体前葉から分泌され、卵巣の卵胞発育を促すゴナドトロピンはである。
- 4.
卵胞期に発育する卵胞から分泌され、子宮内膜の増殖と頸管粘液の増量・水様化を促す卵巣ホルモンをという。
- 5.
卵胞期後半に高濃度のエストロゲンがポジティブフィードバックを引き起こし、下垂体前葉からのLHが急増する現象をという。
- 6.
LHサージが起こると、その後およそ24〜36時間以内にが誘発される。
- 7.
排卵後の卵胞が変化して形成される内分泌組織であり、プロゲステロンとエストロゲンを分泌するものをという。
- 8.
黄体から分泌され、子宮内膜を分泌期へ変化させて着床環境を整えるホルモンをという。
- 9.
プロゲステロンは視床下部の体温中枢に作用して体温を上昇させるため、排卵後の基礎体温はとなる。
- 10.
妊娠が成立した場合、絨毛から分泌され黄体を妊娠黄体として維持するホルモンをという。
