小児のバイタルサイン基準値
小児看護学 / 小児の成長・身体発達
解説
今回は小児のバイタルサイン基準値について解説します。バイタルサインとは生命徴候のことで、体温・脈拍(心拍)・呼吸・血圧の4項目を指します。小児は成人とは生理学的特徴が大きく異なり、年齢が低いほど脈拍と呼吸は速く、血圧は低い傾向を示します。看護師国家試験では、発達段階ごとの基準値を区別して覚えているかが繰り返し問われます。
小児の生理学的特徴
小児は身体に対して相対的に基礎代謝量が大きく、酸素消費量も多くなっています。一方で心臓自体は小さく、1回の収縮で送り出せる血液量(1回拍出量)が少ないため、必要な心拍出量を確保するためには心拍数を増やす必要があります。その結果、年齢が低いほど脈拍数は多くなります。呼吸も同様に、1回換気量が少ないことを補うために呼吸数で代償しており、新生児・乳児ほど多呼吸となります。これらの特徴を踏まえると、小児では「年齢が上がるほど脈拍と呼吸はゆっくりになり、血圧は徐々に高くなる」という大きな流れがつかめます。
発達段階別の基準値
小児は新生児期(生後28日未満)、乳児期(生後1か月〜1歳未満)、幼児期(1〜6歳)、学童期(6〜12歳)、思春期に区分されます。脈拍と呼吸の基準値は年齢区分とセットで覚えることが重要です。
脈拍数の基準値
安静時の脈拍数の目安は、新生児で120〜140回/分、乳児で110〜130回/分、幼児で100〜110回/分、学童で80〜100回/分、成人で60〜80回/分です。学童期の脈拍は国試での出題頻度が高く、必ず押さえておきましょう。脈拍は発熱、啼泣、運動、不安、疼痛、脱水などで容易に増加するため、できるだけ機嫌のよい安静時や睡眠中に1分間測定するのが原則です。測定部位は通常は橈骨動脈ですが、乳児では上腕動脈、新生児では聴診による心尖拍動の確認が推奨されます。
呼吸数の基準値
呼吸数の目安は、新生児で40〜50回/分、乳児で30〜40回/分、幼児で20〜30回/分、学童で18〜20回/分、成人で12〜20回/分です。小児は横隔膜優位の腹式呼吸が中心で、胸郭の動きよりも腹部の動きで観察したほうが正確です。新生児には周期性呼吸(短い無呼吸を挟む不規則な呼吸)がみられることがありますが、20秒以上続く無呼吸は病的なものとして対応が必要です。
体温と血圧
体温は乳幼児では成人よりやや高く、おおむね36.5〜37.5℃が正常範囲です。環境温や啼泣、衣類の影響を受けやすいため、室温調整と測定条件をそろえることが重要です。血圧は年齢が上がるほど上昇し、乳児で収縮期80〜90mmHg、幼児で90〜100mmHg、学童で100〜110mmHg程度を示します。マンシェットの幅は上腕の長さの2/3程度を目安に、年齢に合ったサイズを選択することが正確な測定の前提となります。
異常値の判断と徐脈の重要性
小児のバイタルサインで特に注意すべきは徐脈です。成人では脈拍60回/分未満を徐脈と定義しますが、小児では年齢別基準値を用いるため、たとえば乳児で60回/分は明らかな徐脈であり、低酸素血症、頭蓋内圧亢進、迷走神経反射、先天性心疾患などの重篤な病態を疑う緊急サインとなります。小児では徐脈は心停止の前兆になりうるため、PALS(小児二次救命処置)では心拍60回/分未満かつ循環不全所見があれば胸骨圧迫の適応とされます。成人の感覚で「脈拍60なら正常」と判断しないことが、小児看護の最大の落とし穴です。
まとめ
小児のバイタルサインは年齢区分とセットで覚えるのが鉄則です。脈拍は新生児120〜140、乳児110〜130、幼児100〜110、学童80〜100、成人60〜80回/分と低下し、呼吸数も新生児40〜50から学童18〜20、成人12〜20回/分へと減少します。血圧は年齢とともに上昇し、体温は乳幼児で成人よりやや高めです。小児では1回拍出量・1回換気量の少なさを心拍数・呼吸数で代償していること、そして徐脈が心停止の前兆になりうる重大サインであることを理解しておくことが、国試と臨床の双方で重要となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
新生児の安静時脈拍数の基準値は1分間に約回である。
- 2.
乳児(生後1か月〜1歳未満)の安静時脈拍数の基準値は1分間に約回である。
- 3.
学童期(6〜12歳)の安静時脈拍数の基準値は1分間に約回である。
- 4.
乳児の安静時呼吸数の基準値は1分間に約回である。
- 5.
小児の呼吸は胸郭よりも腹部の動きで観察する呼吸が中心である。
- 6.
小児では1回拍出量が少ないため、心拍数を増やして必要なを確保している。
- 7.
乳児で心拍数が60回/分の場合は明らかなであり、心停止の前兆となりうる緊急病態を疑う。
- 8.
小児二次救命処置〈PALS〉では、心拍数60回/分未満かつ循環不全所見がある場合にの適応となる。
