思春期の心理発達
小児看護学 / 小児の心理発達・権利・社会
解説
思春期とは、子どもから大人へと移行する過渡期にあたる時期で、おおむね小学校高学年から高校生にかけて、年齢でいえば10歳ごろから18歳ごろまでを指します。身体的には第二次性徴の出現によって始まり、心理的には自我の目覚めと自立への動きによって特徴づけられる、人生のなかでも大きな変化を経験する時期です。
思春期の身体的変化と心理への影響
思春期の入り口では、性ホルモンの分泌が急増し、第二次性徴が現れます。女児では8〜10歳ごろから乳房の発育が始まり、続いて陰毛の発生、そして初経を迎えます。男児では10〜12歳ごろから精巣容積の増大が起こり、陰茎の発育、陰毛の発生、変声、精通へと進みます。同時に身長や体重も急激に増加し、外見は急速に大人に近づいていきます。こうした身体の変化は本人にとって戸惑いや不安を伴うものであり、思春期の子どもは自分の身体や外見への関心を強くもつようになります。鏡を見る時間が増えたり、容姿を気にして悩んだりするのも、この時期の自然な姿といえます。
エリクソンの発達課題と同一性の確立
心理学者エリクソンは、人の生涯を8つの段階に分け、それぞれに達成すべき発達課題があると考えました。乳児期では基本的信頼、幼児前期では自律性、幼児後期では自発性、学童期では勤勉性が課題となります。そして思春期から青年期にあたる第5段階の課題が、同一性(アイデンティティ)の確立です。同一性とは「自分は何者であり、これからどのように生きていくのか」という自己の一貫した感覚のことで、これを獲得することが思春期最大の心理的課題です。同一性の獲得に失敗すると同一性拡散と呼ばれる状態に陥り、自分が何者かわからず将来への展望を描けなくなることがあります。
心理的離乳と第二反抗期
思春期になると、子どもは親や家族に対して依存的だった関係から離れ、精神的に自立しようとします。この過程を心理学者ホリングワースは心理的離乳と呼びました。乳児期の母乳からの離乳が身体的な自立であるのに対し、心理的離乳は精神的な自立を意味します。この時期の子どもは親からの干渉を嫌い、自分の部屋にこもったり、家族との会話を避けたりするようになります。親に反発する態度が目立つことから、この時期は第二反抗期とも呼ばれます。第一反抗期が2〜3歳のいわゆるイヤイヤ期にみられるのに対し、第二反抗期は思春期に現れます。ただし表面的には反発していても、内心では依存と自立の間で揺れ動いており、親の支えを必要としていることも多いのが特徴です。
アンビバレンスと情緒の揺れ
思春期にみられる感情の大きな特徴が、アンビバレンス(両価性)です。これは精神医学者ブロイラーが提唱した概念で、同一の対象に対して愛と憎しみのような相反する感情が同時に存在する状態をいいます。親から離れたいけれども守ってもらいたい、一人になりたいけれども寂しい、というように、思春期の子どもは矛盾する気持ちの間で大きく揺れ動きます。情緒が不安定になりやすく、些細なことで怒ったり落ち込んだりすることも少なくありません。
仲間関係の発達
親から距離を置く一方で、思春期には友人との関係が深まります。学童期の中学年から高学年(9〜12歳ごろ)には、気の合う同性の仲間と閉鎖的で結束の固い小集団をつくる時期があり、これをギャングエイジと呼びます。独自のルールや秘密を共有することで、協調性やリーダーシップ、規範意識といった社会性が育まれます。続く思春期では、対人関係論を提唱したサリヴァンによれば、秘密や悩みを打ち明け合える同性の親友との関係(チャムシップ)が重要となり、やがてより広いピアグループ、そして異性への関心へと発展していきます。仲間集団に同一視することで、子どもは家族以外の世界に自分の居場所を見いだしていきます。
思春期の看護の視点
思春期は心身ともに不安定で、摂食障害、うつ、自傷行為などの問題も生じやすい時期です。看護にあたっては、感情の揺れや反抗的な態度を成長過程の一部として理解し、本人のプライバシーや自主性を尊重する姿勢が求められます。一方的な指導を避け、思春期特有の心理を踏まえて関わることが大切です。
まとめ
思春期は第二次性徴による身体の急変とともに、同一性の確立という発達課題に取り組む重要な時期です。心理的離乳によって親からの自立が進み、第二反抗期として反発が現れる一方、友人との親密な関係が心の支えとなります。アンビバレンスに代表される情緒の揺れも、自立に向かう過程として理解することが重要です。
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- 1.
エリクソンの発達段階で、思春期・青年期の発達課題はである。
- 2.
思春期に親や家族との関係が依存的なものから対等な関係へと変化し、精神的に自立していく過程を、ホリングワースはと呼んだ。
- 3.
思春期にみられる、親や大人への反発が強まる時期をという。
- 4.
思春期に顕著にみられる、同一の対象に対して愛と憎しみなど相反する感情が同時に存在する状態をという。
- 5.
学童期中学年から高学年にみられる、同性の仲間と閉鎖的で結束の固い小集団をつくる時期をという。
- 6.
サリヴァンが提唱した、思春期に秘密や悩みを共有し合う同性の親友との親密な関係をという。
- 7.
思春期の入り口で性ホルモンの分泌増加により出現する身体的変化をという。
- 8.
エリクソンの発達課題で、同一性の確立に失敗した状態をという。
- 9.
思春期にある人が親密な関係を求める対象として最も重要となるのはである。
