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終末期の看取りケア

老年看護学 / 高齢者の精神・心理・看取り

解説

今回は終末期の看取りケアについて解説します。看取りとは、人生の最終段階にある人がその人らしく穏やかに最期を迎えられるように、身体的・精神的・社会的・霊的(スピリチュアル)な側面から支援するケアのことです。看護師は、苦痛の緩和、本人と家族の意思の尊重、環境の調整、そして死後のケアまで一貫して関わる重要な役割を担います。

終末期と看取りの考え方

終末期とは、治癒を目指した積極的な治療を行ってもその効果が期待できず、近い将来に死を迎えることが予測される時期を指します。この時期のケアの中心は、延命や検査ではなく、本人の**QOL(生活の質)**を最大限に保ち、苦痛を緩和し、その人らしさを尊重することにあります。 看取りケアでは「何をするか」だけでなく「何をしないか」を判断することも重要です。過剰な輸液や頻回な処置、苦痛を増やすだけの検査は控え、残された時間を穏やかに過ごせるよう支援します。

意思決定支援とACP

終末期のケアを進める上で土台となるのが、本人の意思の尊重です。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、本人・家族・医療者が繰り返し話し合いを重ねるプロセスとしてアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が推奨されています。 ACPでは、本人の価値観や希望を共有し、状態の変化に応じて何度も意思を確認し直すことが大切です。本人の意思が明確に確認できなくなった場合でも、これまでの言動や価値観、家族による推定意思をもとに「本人にとっての最善」を関係者で考えていきます。看取りの方針を決める際に最も優先されるのは、過去の発言ではなく現時点での本人と家族の意思であり、時間経過とともに気持ちが変化しうることを前提に支援します。

死前徴候と臨終期の観察

死期が近づくと、身体には特徴的な変化(死前徴候)が現れます。看護師はこれらを的確に観察し、家族に説明して最期の時間をともに過ごせるよう環境を整えます。 呼吸はチェーンストークス呼吸から、やがて下顎呼吸へと移行します。下顎呼吸とは、呼吸中枢の機能が低下し、顎と頸部の補助呼吸筋を使ってあえぐように空気を取り込む呼吸様式で、死の直前数時間以内に出現することが多いサインです。さらに気道分泌物による「死前喘鳴」もみられます。 循環では血圧低下と頻脈に始まり、やがて徐脈・脈拍触知不能となります。意識は傾眠から昏睡へと進み、皮膚は四肢冷感・チアノーゼ・大理石様皮膚となり、尿量も減少していきます。

終末期の援助とその人らしさの尊重

看取り期の援助で重要なのは、本人の嗜好や残存機能を活かしたケアです。聴覚は臨終期まで比較的保たれるとされており、意識レベルが低下しても声かけや音楽は届きます。生前に好きだった音楽をかける、家族の声を聞かせるといった援助は、本人の心を落ち着かせ、家族にとっても共有できる大切な時間となり、悲嘆ケアの観点でも意味があります。 口腔内乾燥には湿らせたスポンジによる保湿、皮膚には低刺激の清拭と保湿、体位は褥瘡予防と快適性のバランスをとって調整します。食事については誤嚥のリスクがあっても、本人が望むものを少量ずつ楽しんでもらう「コンフォート・フィーディング」の考え方が重視され、誤嚥を完全に防ぐことよりも食べる喜びを支えることが優先されます。

在宅看取りの支援

在宅で看取る場合、家族が安心して最期を迎えられるよう、訪問診療・訪問看護・訪問介護・福祉用具貸与などの社会資源を組み合わせて活用します。看護師は、急変時の連絡先、苦痛緩和の方法、死亡時の対応(救急車を呼ぶのではなくかかりつけ医に連絡すること、死亡診断書の発行、エンゼルケア)について、あらかじめ家族に具体的に説明しておきます。 家族の介護負担を最小限に抑えること、心の準備を支えること、そして看取り後の遺族ケア(グリーフケア)までを視野に入れて関わることが、在宅看取りを支える看護師の重要な役割となります。

まとめ

終末期の看取りケアでは、本人のQOLとその人らしさの尊重を最優先とし、ACPに基づいて本人と家族の現在の意思を繰り返し確認しながら方針を決めていきます。臨終期には下顎呼吸をはじめとする死前徴候を観察し、家族に説明して最期の時間を支えます。聴覚が最後まで保たれることを踏まえた声かけや好きな音楽などの非薬物的ケア、口腔・皮膚の保清、過剰な医療を控える判断、そして在宅では多職種連携と家族支援が看護の柱となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    人生の最終段階における医療・ケアについて、本人・家族・医療者が繰り返し話し合い意思を共有していくプロセスをという。

  2. 2.

    看取りの方針を決定する際に最も優先されるのは、過去の発言ではなくである。

  3. 3.

    臨終期に呼吸中枢の機能低下によって出現する、顎と頸部の補助呼吸筋を用いてあえぐように行う呼吸様式をという。

  4. 4.

    終末期において意識レベルが低下しても最後まで比較的保たれるとされる感覚はであり、声かけや好きな音楽が有効な援助となる。

  5. 5.

    終末期ケアの中心は延命や治療ではなく、苦痛緩和と本人らしさの尊重を通じてを維持することである。

  6. 6.

    終末期に誤嚥のリスクがあっても、本人が望むものを少量ずつ楽しんでもらう食支援の考え方をという。

  7. 7.

    在宅看取りを支えるために活用される代表的な社会資源として、訪問診療、訪問介護、福祉用具貸与のほかがある。

  8. 8.

    人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインを策定している省庁はである。

終末期の看取りケア」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。