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『私らしく死にたい』に看護師はどう応える?看取り期の意思決定支援

看護師国家試験 第115午後103(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後103

状況設定

Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が近隣に住んでいる。病的な大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが次第に衰弱をみせ、体色の悪さを増してきたことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みがないことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。

Aさんは「私らしく死にたいの」と何度も看護師に語りかけるようになった。 看護師のかかわりで最も適切なのはどれか。

  1. 1.「Aさんはまだまだ頑張れますよ」
  2. 2.「できるだけAさんのそばにいます」
  3. 3.「Aさんがどうしたいか教えてください」
  4. 4.「そんなことを言うとご家族が悲しみますよ」

対話形式の解説

博士博士
今回は102歳のAさんの事例じゃ。施設で看取りの方針となり、Aさんが『私らしく死にたいの』と繰り返し語るようになった場面じゃな。
サクラサクラ
『私らしく』って、すごく重い言葉ですね。看護師はどう返せばいいんでしょう?
博士博士
選択肢は四つある。①『まだまだ頑張れますよ』②『できるだけそばにいます』③『どうしたいか教えてください』④『家族が悲しみますよ』じゃ。どれが最も適切と思う?
サクラサクラ
うーん…②のそばにいるって優しい気がしますけど、それだけだと足りない気もして。
博士博士
いい着眼じゃ。正解は③『Aさんがどうしたいか教えてください』じゃよ。
サクラサクラ
どうして③なんですか?
博士博士
『私らしく』という言葉は人によって意味が違う。どこで、誰と、何を大切にして最期を過ごしたいか、本人の言葉で具体化することが、尊厳ある看取りの出発点なんじゃ。これはアドバンス・ケア・プランニング、いわゆるACPの基本姿勢でもある。
サクラサクラ
なるほど。①はどうして不正解なんですか?
博士博士
①は老衰で回復の見込みがない現実とかけ離れた励ましじゃ。Aさんの切実な気持ちを否定し、これ以上語れなくしてしまう恐れがある。
サクラサクラ
②の『そばにいます』は寄り添ってる感じがしますけど…
博士博士
姿勢としては大切じゃが、Aさんが求めているのは『自分らしい最期』を実現する具体的な対話じゃ。物理的に寄り添うだけでは希望を引き出せん。
サクラサクラ
④は明らかに違いますよね、家族のせいにしてる感じで。
博士博士
その通り。家族の感情を理由に本人の語りを抑えるのは、本人の意思を二の次にしてしまう不適切な関わりじゃ。家族支援は別軸で行うべきものじゃよ。
サクラサクラ
看取りの現場では、聴く姿勢と問いかける姿勢の両方が大事なんですね。
博士博士
うむ。そして聴き取った内容は家族や多職種で共有し、日々のケアや環境調整に反映していく。これがACPの実践じゃ。

POINT

終末期にある本人が発する「私らしく死にたい」という言葉の意味を、開かれた問いかけで具体化し、意思決定支援につなげる姿勢が問われています。

解答・解説

正解は3です

問題文:Aさんは「私らしく死にたいの」と何度も看護師に語りかけるようになった。 看護師のかかわりで最も適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。「私らしく死にたい」というAさんの言葉には、その人自身の価値観や望む最期の姿が込められています。看護師は、その思いを抽象的なままにせず「どうしたいか」を具体的に語ってもらうことで、本人の希望をケアに反映させる第一歩を踏み出すことができます。これは終末期におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の基本姿勢でもあり、本人主体の意思決定支援として最も適切な対応です。

選択肢考察

  1. ×1.  「Aさんはまだまだ頑張れますよ」

    Aさんは老衰により回復の見込みがなく、家族も施設での看取りに同意している段階です。状況にそぐわない励ましの言葉は、本人の「私らしく死にたい」という切実な気持ちを否定することになり、これ以上自分の思いを語れなくしてしまう恐れがあります。終末期では事実から目をそらさせる励ましではなく、本人の語りを受け止める姿勢が求められます。

  2. ×2.  「できるだけAさんのそばにいます」

    そばにいる姿勢自体は終末期ケアにおいて大切な要素ですが、この場面でAさんが繰り返し訴えているのは「自分らしい最期」を実現したいという具体的な願いです。物理的に寄り添うだけでは本人の希望を引き出すには不十分で、価値観や具体的な希望を聴き取り、ケアに反映していく対話の方が優先されます。

  3. 3.  「Aさんがどうしたいか教えてください」

    「私らしく」という言葉は人それぞれ意味が異なります。どのような場所で、誰と、何を大切にして最期を過ごしたいかを本人の言葉で具体化することが、尊厳ある看取りの出発点です。看護師が問いかけて聴き取った内容は、家族や多職種で共有し、日々のケアや環境調整に反映していきます。これはまさにACPの実践であり、本人主体の意思決定支援として最も適切です。

  4. ×4.  「そんなことを言うとご家族が悲しみますよ」

    家族への配慮を理由に本人の語りを抑え込む対応は、本人の意思を二の次にしてしまう不適切な関わりです。Aさんが自分の死について語れる相手を失えば、孤独感や無力感を強める可能性があります。家族の感情への支援は別途必要ですが、まず優先されるのは本人の思いを受け止め、表出を促すことです。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、本人が望む医療・ケアについて、本人・家族・医療チームが繰り返し話し合うプロセスです。終末期では「DESC法」のような技法だけでなく、開かれた問いかけ(オープンクエスチョン)で本人の価値観を引き出すことが重要です。また、聴覚は最期まで保たれやすいため、傾眠や昏睡が進んでも声かけを続けることが望まれます。施設看取りでは、医師・看護師・介護職・家族が情報を共有し、本人の希望を一貫して支える体制づくりが鍵となります。

終末期にある本人が発する「私らしく死にたい」という言葉の意味を、開かれた問いかけで具体化し、意思決定支援につなげる姿勢が問われています。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。