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102歳の看取り、戸惑う家族にどう寄り添う?〜終末期の自然経過を伝える看護〜

看護師国家試験 第115午後104(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後104

状況設定

Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が近隣に住んでいる。病的な大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが次第に衰弱をみせ、体色の悪さを増してきたことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みがないことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。

Aさんはほとんど食事がとれなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きも減少し、傾眠状態となった。家族はAさんの状態の変化に驚き「本人は苦しいのでしょうか。そばにいても良いのかどうか分かりません」と看護師に話した。 Aさんの家族への看護師の説明で適切なのはどれか。

  1. 1.「もう何も聞こえません」
  2. 2.「これからの経過についてお話しします」
  3. 3.「不安になりますのでケアは職員で行います」
  4. 4.「これからはご家族が目を離さないでください」

対話形式の解説

博士博士
今日は115回午後104問じゃ。102歳のAさんが施設で看取り期に入り、食事もとれず尿量も減って傾眠になった場面。ご家族が『本人は苦しいのでしょうか、そばにいてよいのか分かりません』と看護師に尋ねてきた。さて、どう答えるのがよいかな?
サクラサクラ
うーん、家族の不安に寄り添うって意味では『できるだけそばにいます』とか答えたくなりますけど…正解は『これからの経過についてお話しします』なんですね。
博士博士
そうじゃ。終末期の家族は『この変化は普通なのか』『苦しんでいるのではないか』という見通しのなさに最も強く不安を覚える。だから、まずは『これから何が起こりうるか』を伝える説明こそが、最大の安心材料になるんじゃよ。
サクラサクラ
なるほど、不安の正体は『分からないこと』なんですね。じゃあ各選択肢を順番にお願いします。
博士博士
まず1の『もう何も聞こえません』。これは医学的にも誤りじゃ。意識が低下しても聴覚は最後まで保たれるといわれておる。家族が声をかける機会を奪ってしまうと、後の後悔にもつながる。
サクラサクラ
『聞こえてるかもしれないから声をかけてあげてくださいね』と伝える方がずっといいですね。
博士博士
その通り。次に2の『これからの経過についてお話しします』が正解。食事摂取量の低下、尿量減少、傾眠、四肢冷感、下顎呼吸など、看取り期に予測される変化を順序立てて伝え、苦痛緩和の方針や家族ができる関わりも一緒に説明する。これを『アンティシパトリー・ガイダンス(予期的指導)』というんじゃ。
サクラサクラ
予測される経過を前もって共有しておくと、いざその時が来ても『これは聞いていた変化だ』と受け止められますね。
博士博士
そうじゃ。3の『不安になりますのでケアは職員で行います』は、家族を看取りの場から遠ざけてしまう。手を握る、口を湿らせる、好きだった音楽を流す、そんな小さなケアこそ家族にとって大切な時間で、後のグリーフケアにもつながる。
サクラサクラ
『何もできなかった』という後悔を残さないためにも、家族が参加できる余地を残すんですね。
博士博士
最後に4の『これからはご家族が目を離さないでください』。これは家族に過大な責任と負担を負わせてしまう。看取り期は数日続くこともあり、家族の休息確保も看護師の大事な役目じゃ。交代で休む、夜間は施設職員が観察するなど、無理のない体制を一緒に組み立てる方がよい。
サクラサクラ
『そばにいたいけど疲れた』という気持ちも責めない、ということですね。終末期の家族って、本人と同じくらいケアが必要なんですね。
博士博士
その通り。看取り看護は本人と家族の双方を支える営みじゃ。経過の説明、苦痛への対応、ケアへの参加、休息の確保、そして看取り後のグリーフケアまでが連続している。『これからのお話をしますね』の一言が、その全体の入り口になるわけじゃな。
サクラサクラ
家族が安心して最期の時間を過ごせるよう、看護師が見通しと選択肢を渡していくんですね。とても勉強になりました。

POINT

看取り期の家族支援では、身体変化を『異常』ではなく『自然な経過』として位置づけ、これから起こりうることをあらかじめ説明する『アンティシパトリー・ガイダンス』が不可欠です。家族の不安は『何が起きているのか分からない』ことから生まれるため、経過の見通しと家族にできる関わりを具体的に伝えることが、安心と納得につながります。

解答・解説

正解は2です

問題文:Aさんはほとんど食事がとれなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きも減少し、傾眠状態となった。家族はAさんの状態の変化に驚き「本人は苦しいのでしょうか。そばにいても良いのかどうか分かりません」と看護師に話した。 Aさんの家族への看護師の説明で適切なのはどれか。

解説:正解は 2 です。終末期に向かう過程で生じる食事摂取量の低下、尿量減少、傾眠といった身体変化は、自然な経過の一部です。家族はこれらの変化を「異常」「苦痛」と受け止めて戸惑いやすいため、看護師は今後予測される経過、苦痛緩和の方針、家族が本人にどう関われるかを具体的に説明し、不安を和らげる必要があります。「これからの経過についてお話しします」と切り出すことは、家族の問いに正面から応える看取り期の家族支援として最も適切です。

選択肢考察

  1. ×1.  「もう何も聞こえません」

    意識レベルが低下しても、聴覚は比較的最後まで保たれるといわれており、家族の声かけが本人の安心につながる可能性があります。『何も聞こえません』と断言することは医学的にも不正確で、家族が声をかける機会を奪い、後悔につながる恐れがあるため不適切です。

  2. 2.  「これからの経過についてお話しします」

    食事摂取量の低下、尿量減少、傾眠は終末期にみられる自然な変化です。家族が抱く『苦しいのでは』『そばにいてよいのか』という疑問に対し、今後予測される経過、苦痛への対応、家族としてできる関わり方を具体的に説明することで、不安を軽減し納得して看取りに臨む支援となります。

  3. ×3.  「不安になりますのでケアは職員で行います」

    家族をケアから遠ざける対応は、家族が本人と過ごす時間や役割を奪うことになります。看取りでは、家族が手を握る、声をかける、口を拭うといった小さなケアに参加することが、本人への愛着の表現となり、家族自身のグリーフケアにもつながるため不適切です。

  4. ×4.  「これからはご家族が目を離さないでください」

    家族に常時の見守りを強いる説明は、心身ともに大きな負担となります。看取り期は数日から1週間程度続くことも多く、家族が休息をとりながら無理なく寄り添えるよう支援することが原則です。家族に過剰な責任を負わせる表現は適切ではありません。

終末期の身体変化(end-of-life signs)には、食事・水分摂取量の低下、尿量減少、四肢冷感やチアノーゼ、傾眠から昏睡への意識レベル低下、チェーンストークス呼吸や下顎呼吸、死前喘鳴などがあります。これらは『死の過程』として自然に生じるもので、本人にとって必ずしも強い苦痛を伴うものではありません。聴覚は最後まで残るといわれ、家族の声かけが安らぎとなることもあります。家族へは、変化が予測されるものであることを伝え、苦痛緩和の手立て、参加できるケア、休息のとり方、急変時の連絡体制までを含めて段階的に説明することが大切です。

看取り期の家族支援では、身体変化を『異常』ではなく『自然な経過』として位置づけ、これから起こりうることをあらかじめ説明する『アンティシパトリー・ガイダンス』が不可欠です。家族の不安は『何が起きているのか分からない』ことから生まれるため、経過の見通しと家族にできる関わりを具体的に伝えることが、安心と納得につながります。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。