StudyNurse

災害サイクルと看護活動

看護の統合と実践 / 災害看護

解説

今回は災害サイクルと看護活動について解説します。 災害とは、地震・津波・台風・洪水・噴火などの自然災害や、大規模事故・テロなどの人為災害によって、地域の医療資源だけでは対応できないほどの健康被害が発生した状態をいいます。災害看護では、発災からの経過時間によって被災者に生じる健康問題や必要とされる支援が大きく変化するため、時間軸に沿って活動を組み立てる「災害サイクル」という考え方が基本になります。

災害サイクルの区分

災害サイクルとは、災害の発生から復興・備えに至るまでを時期で区分し、それぞれの時期に応じた看護活動を整理する枠組みです。一般的には、超急性期、急性期、亜急性期、慢性期(復興期)、静穏期(準備期)に分けられます。

超急性期と急性期

超急性期は発災直後からおおむね72時間までを指し、人命救助が最優先される時期です。瓦礫の下敷きや外傷、出血、窒息など生命を脅かす事態が集中するため、迅速な救出と応急処置が中心になります。急性期は発災から1週間程度までを指し、外傷の治療やショック・感染症への対応、トリアージに基づく医療機関への搬送調整などが行われます。これらの時期はまとめて「災害急性期」と呼ばれることもあります。

亜急性期

亜急性期は発災後1週間から1か月までの時期です。避難所での集団生活が始まり、トイレを我慢して水分摂取を控える人が増えることで、下肢の静脈に血栓が形成される**深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)**や肺塞栓症が起こりやすくなります。こまめな水分補給と歩行・足の運動の促しが予防の要となります。また、活動量の低下による廃用症候群(生活不活発病)にも注意が必要です。

慢性期(復興期)

慢性期は発災後1か月以降から数年に及ぶ時期で、応急仮設住宅への移行や復興に向けた生活再建が進みます。長引く避難生活と環境変化、服薬・通院の中断、かかりつけ医療機関の喪失などが重なるため、高血圧や糖尿病など慢性疾患の悪化が目立つようになります。さらに、うつ病や**PTSD(心的外傷後ストレス障害)**などの精神的問題も顕在化します。

静穏期(準備期)

静穏期は次の災害に備える時期で、防災教育、災害対応マニュアルの整備、訓練、備蓄、地域連携体制の構築などが行われます。

災害看護の基本枠組みCSCATTT

災害現場での活動の基本枠組みとしてCSCATTTがあります。これは Command/Control(指揮命令)、Safety(安全)、Communication(情報伝達)、Assessment(評価)、Triage(トリアージ)、Treatment(治療)、Transport(搬送)の頭文字をとったものです。前半のCSCAは活動の土台となる組織的活動、後半のTTTが医療的活動にあたります。

Safety(安全)の3S

災害現場では救助者自身が二次被害を受ける危険があるため、安全確保が早い段階で重視されます。Safetyは Self(自分)、Scene(現場)、Survivor(傷病者)の順、いわゆる3Sで確認します。看護師自身の安全が確保されなければ、結果的に救える命を救えなくなるため、救護に飛び込む前に倒壊・火災・漏電・有害物質などのハザードを評価することが大原則です。

災害時の心理反応の経過

災害後の心理反応は時間とともに変化し、茫然自失期(発災直後〜数日)、ハネムーン期(1週から数か月、連帯感で乗り切る時期)、幻滅期(2か月から1〜2年、支援減少や現実に直面する時期)、再建期(数年〜)と推移します。発災後3〜7日は**急性ストレス反応(ASR)の時期にあたり、交感神経の緊張により動悸・発汗・頭痛・不眠・食欲不振・下痢など自律神経を介した身体症状が最も強く現れます。これは脅威的出来事に対する正常な適応反応で、多くは1か月以内に軽快します。しかし症状が1か月を超えて持続する場合はPTSDへの移行が懸念されるため、精神科医療や心理的応急処置(PFA)**などの専門的介入を検討します。

時期別の看護活動のまとめ

超急性期・急性期では人命救助・トリアージ・応急処置と安全確保が中心となります。亜急性期では避難所生活に伴うエコノミークラス症候群や生活不活発病の予防、衛生環境の改善が重要です。慢性期では集団生活下での感染症予防、慢性疾患の継続管理、こころのケア、PTSD・うつへの対応が看護の柱となります。静穏期では次の災害への備えとして防災教育や訓練を行います。災害サイクルの各時期に何が起こりやすく、何を優先するのかを結びつけて理解することが、災害看護の問題を解く鍵となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    災害発生からおおむね72時間までの、人命救助が最優先される時期をという。

  2. 2.

    発災後1週間から1か月までの亜急性期に、避難所での水分制限や長時間の同一姿勢によって生じやすい疾患をという。

  3. 3.

    災害現場での活動の基本枠組みで、指揮命令・安全・情報伝達・評価・トリアージ・治療・搬送の頭文字をとったものをという。

  4. 4.

    CSCATTTのうち、救助者自身の二次被害を防ぐために早期に確保すべき項目で、Self・Scene・Survivorの順で確認するものをという。

  5. 5.

    発災後3〜7日に交感神経緊張による動悸・不眠・食欲不振などの身体症状が最も強く現れる、正常な適応反応をという。

  6. 6.

    災害後の強いストレス症状が1か月を超えて持続する場合に移行が懸念される精神疾患をという。

  7. 7.

    発災後2か月程度が経過し応急仮設住宅での生活が始まる慢性期に、服薬中断や環境変化の影響で悪化しやすい健康問題はである。

  8. 8.

    避難所で多数の被災者が集団生活を送る慢性期において、看護師が中心的に行う活動はである。

災害サイクルと看護活動」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。