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バイタルサインの正常値・異常値

基礎看護学 / バイタル・フィジカルアセスメント

解説

バイタルサインとは、生命徴候のことであり、患者の生命活動が正常に営まれているかを示す客観的な指標です。今回はバイタルサインの正常値と異常値、そして観察のポイントについて解説します。

バイタルサインの定義と意義

バイタルサインは一般に体温・脈拍・呼吸・血圧・意識の5項目を指し、近年ではこれに**SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)**を加えることが一般的です。これらは患者の全身状態の変化を早期に把握する基本情報であり、急変の予兆を捉えるためにも欠かせません。看護師は数値の単純な記録だけでなく、患者の表情や随伴症状と併せて総合的に評価する必要があります。

成人安静時の基準値

成人の安静時における基準値を理解しておくことは、異常を判断する第一歩です。体温は36.0〜37.0℃が正常範囲で、深部体温は約37℃に保たれています。脈拍は60〜100回/分で、60未満を徐脈、100を超えるものを頻脈といいます。呼吸は12〜20回/分が正常で、25回以上を頻呼吸、12回未満を徐呼吸と呼びます。血圧は至適血圧が120/80mmHg未満、正常高値が130/85mmHg、140/90mmHg以上でⅠ度高血圧と分類されます。SpO2は96%以上が正常の目安です。

脈拍観察のポイント

脈拍の観察では回数だけでなく、リズムが整か不整か、脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)はどうか、そして動悸・息切れ・胸痛・冷汗などの随伴症状の有無を確認します。脈拍数は年齢によって異なり、新生児・乳児・小児では成人よりも高い基準値となるため、患者の年齢に応じた評価が重要です。

呼吸異常の4軸整理

呼吸の異常は、回数・深さ・リズム・努力性の4つの軸で整理すると理解しやすくなります。

回数による分類

1分間に25回以上を頻呼吸、12回未満を徐呼吸、一定時間呼吸が停止するものを無呼吸といいます。

深さによる分類

1回換気量が増加した深い呼吸を過呼吸(hyperpnea)、浅い呼吸を低呼吸といいます。過呼吸と過換気を混同しないことが大切です。

リズムの異常

無呼吸と過呼吸を周期的に繰り返すチェーンストークス呼吸、不規則な無呼吸を伴うビオー呼吸、代謝性アシドーシスの代償として現れる深く速いクスマウル呼吸などがあります。

努力性呼吸

終末期にみられ吸気時に下顎が動く下顎呼吸、小児で観察される鼻翼呼吸や陥没呼吸、心不全患者が座位で呼吸を楽にする起座呼吸などが代表的です。

過換気症候群への対応

かつては紙袋を口に当てて再呼吸させるペーパーバッグ法が行われていましたが、酸素低下を招くリスクから現在は推奨されていません。患者を安心させ、ゆっくりとした呼吸を促す対応が基本となります。

体温の測定部位と深部体温

体温は測定部位によって値が異なり、腋窩温<口腔温≒鼓膜温<直腸温の順に高くなります。直腸温は腋窩温より約0.8〜1.0℃高く、体表から測定できる部位の中で最も深部体温に近い値を示します。集中治療では膀胱温・食道温・肺動脈血温なども測定されます。体温は視床下部にある体温調節中枢の働きによって37℃前後に保持されています。

腋窩温の測定では、まず汗を拭き取り、体温計を下方から約45度の角度で密着させ、水銀計では10分以上、電子体温計では予測値が表示されるまで保持します。体温測定は通常、0時・6時・12時・18時など1日4回を基本とします。

口腔体温(舌下温)の測定と適応

口腔温(舌下温)は腋窩温より約0.5℃高く、深部体温に近い値を示すうえに外気の影響を受けにくく日内変動も小さいため、安静時の基礎体温測定(女性の排卵周期の把握など)に適しています。測定の際は、体温計のセンサー部を舌下中央の舌小帯両側のくぼみに当て、口を閉じて鼻呼吸を保ちながら計測します。一方で、協力が得られず誤嚥や口腔損傷の危険がある乳児・小児、意思疎通や開口保持ができない意識障害患者、口腔内疾患や口腔・顎顔面の手術後の患者、開口困難者、経口摂取直後(飲食物の温度の影響を受けるため)には不適とされ、これらの場合は腋窩温や鼓膜温などの代替部位を選択します。

熱型の分類

熱型は日内変動と平熱への復帰の有無によって分類されます。日内変動が1℃以内で高熱が持続するものを稽留熱といい、大葉性肺炎・腸チフス極期・髄膜炎などでみられます。日内変動が1℃以上あるものの最低体温も平熱以下にはならないものを弛張熱といい、敗血症・ウイルス感染・悪性腫瘍・膠原病などで認められます。日内変動が1℃以上あり平熱まで下がるものは間欠熱と呼ばれ、マラリア・薬剤熱などが代表疾患です。有熱期と無熱期が不規則に繰り返されるものは波状熱といい、ブルセラ症やホジキンリンパ腫でみられます。

低体温症と復温時の注意

深部体温が35℃未満となった状態を低体温症といいます。35〜32℃の軽症では振戦・頻脈・多尿、32〜28℃の中等症では振戦消失・徐脈・意識低下、28℃未満の重症では心室細動や心停止のリスクが高まります。34℃台でも意識障害・不整脈・凝固障害を生じうるため、ただちに加温と循環管理が必要です。加温の際は加温輸液や加温吸入による中枢加温を優先します。末梢からの急速加温は冷えた末梢血が中枢に戻ることで血圧低下を招く**復温性ショック(rewarming shock)**を引き起こすため注意します。

緊急対応が必要なバイタル所見

急激な血圧低下、頻脈または徐脈、頻呼吸や努力性呼吸、SpO2低下、意識レベル低下を認めた場合はショックや呼吸不全を疑い、ただちに医師へ報告します。特にショックでは**5徴(5P)**として、Pallor(蒼白)、Prostration(虚脱)、Perspiration(冷汗)、Pulselessness(脈拍触知不能)、Pulmonary insufficiency(呼吸不全)の5項目を覚えておきましょう。

まとめ

バイタルサインは患者の状態を最も端的に示す情報であり、正常値からの逸脱に気づくことが看護の出発点となります。各項目の基準値とともに、呼吸異常の4軸や熱型の分類、低体温症や復温性ショック、ショックの5徴といった重要概念を整理して理解することで、急変の予兆を見逃さず安全な看護を提供することができます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    成人安静時の脈拍数の基準値は回/分であり、これを下回ると徐脈、上回ると頻脈と呼ばれる。

  2. 2.

    成人安静時の呼吸数の基準値は12〜20回/分で、25回以上を、12回未満を徐呼吸という。

  3. 3.

    代謝性アシドーシスの代償性反応として出現する、深くて速い呼吸をという。

  4. 4.

    無呼吸と過呼吸の状態を周期的に繰り返す呼吸をという。

  5. 5.

    体温は測定部位により値が異なり、腋窩温<口腔温≒鼓膜温<の順に高くなる。

  6. 6.

    体温調節中枢は間脳のに存在し、深部体温を約37℃に保っている。

  7. 7.

    日内変動が1℃以内で高熱が持続する熱型をといい、大葉性肺炎や腸チフス極期にみられる。

  8. 8.

    低体温症において末梢から急速に加温すると、冷えた末梢血が中枢に戻ることで血圧が低下するを生じる危険がある。

  9. 9.

    ショックの5徴(5P)は、蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・である。

  10. 10.

    過換気症候群への対応として、かつて行われていた紙袋を用いた法は酸素低下のリスクから現在は推奨されず、安心させてゆっくり呼吸を促す対応が基本となる。

  11. 11.

    口腔体温(舌下温)は外気の影響を受けにくく日内変動が小さいため、女性の排卵周期の把握などの測定に適している。

  12. 12.

    口腔体温の測定は、誤嚥や口腔損傷の危険がある乳児・小児、意思疎通ができない患者、口腔内疾患や口腔手術後の患者には不適である。

  13. 13.

    口腔体温を測定する際は、体温計のセンサー部を中央の舌小帯両側のくぼみに当て、口を閉じて鼻呼吸を保ちながら計測する。

バイタルサインの正常値・異常値」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。