心音聴診と心電図
基礎看護学 / バイタル・フィジカルアセスメント
解説
心音聴診と心電図は、循環器系のフィジカルアセスメントと生体検査の基本です。今回は心音の発生機序と聴取部位、そして心電図検査の種類と特徴について解説します。
心音の発生機序
心音とは、心周期に伴って弁が閉鎖する際に生じる振動音のことをいいます。健常成人では主にI音とII音が聴取され、これを「ラブ・ダブ」と表現します。
I音
I音は、心室収縮の開始時に**房室弁(僧帽弁・三尖弁)**が閉鎖することで生じる音です。低調で持続がやや長く、心尖部で最も大きく聴取されます。脈拍の触知とほぼ同時に聞こえる点も特徴です。
II音
II音は、心室の収縮が終わり拡張期が始まる時点で**半月弁(大動脈弁・肺動脈弁)**が閉鎖することで生じる音です。高調で短く、第2肋間付近の心基部で明瞭に聴取されます。
III音・IV音
III音は拡張早期の急速流入期に心室壁が振動する音で、若年者では正常でも聞かれますが、成人では心不全などで病的に出現します。IV音は心房収縮による心室充満時の音で、心肥大や高血圧などで聴取されます。
心音の聴取部位
心音の聴診では、各弁の音が最もよく伝わる4つの部位を順に聴取します。
大動脈弁領域は第2肋間胸骨右縁、肺動脈弁領域は第2肋間胸骨左縁に位置します。第3肋間胸骨左縁はエルブ点とよばれ、I音とII音の両方が明瞭に聞こえる部位です。三尖弁領域は第4肋間胸骨左縁、僧帽弁領域は心尖部、すなわち第5肋間と左鎖骨中線の交点にあります。
心尖部ではI音が、心基部(第2肋間付近)ではII音が優位に聴取されるのが正常所見です。僧帽弁由来の雑音を確認したい場合は、左側臥位にすると心尖部が胸壁に近づき、より明瞭に聴取できます。
臨床検査の分類と心電図
臨床検査は、患者の身体を直接調べる生体検査(生理機能検査)と、患者から採取した試料を調べる検体検査に大別されます。心電図検査は身体に電極を装着して心臓の電気活動を直接記録する生体検査の代表例です。生体検査には心電図のほか、脳波、呼吸機能、超音波、画像検査などが含まれます。
標準12誘導心電図
標準12誘導心電図は、肢誘導6つと胸部誘導6つの合計12方向から心臓の電気活動を記録します。
肢誘導は、双極肢誘導のI・II・IIIと、単極肢誘導のaVR・aVL・aVFの6つで構成され、前額面の電気軸を記録します。胸部誘導はV1からV6の6つで、水平面の電気活動を記録します。各誘導が反映する心筋領域はおおむね、II・III・aVFが下壁、I・aVLとV5・V6が側壁、V1・V2が中隔、V3・V4が前壁となります。
心電図波形の意味
心電図波形は、P波が心房の脱分極、QRS波が心室の脱分極、T波が心室の再分極を表します。PQ間隔は房室間の伝導時間、QT間隔は心室の電気的収縮時間を示します。
ホルター心電図
ホルター心電図は、携帯型の小型心電計を約24時間装着し、日常生活下の心電図を連続記録する検査です。安静時の標準12誘導では捉えにくい一過性の不整脈や、夜間・労作時に出現する狭心症の検出に有用です。
検査中、患者には行動記録票に起床・食事・入浴・服薬・動悸や胸痛などの症状の時刻を記録してもらい、後で波形と症状を照合します。電気カーペット・電気毛布・IH調理器・低周波治療器・MRIなどの強い電磁場はノイズ混入や機器の誤作動の原因となるため、検査中は使用を避けます。入浴やシャワーも原則として禁止です(防水機種は可)。
その他の心電図検査
運動負荷心電図は労作性狭心症の診断、加算平均心電図は微小な遅延電位の検出、植込み型心電計は長期間の不整脈モニタリング、テレメトリーモニターは入院患者の連続監視に用いられます。検査目的に応じた使い分けを押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心音のうち、心室収縮開始時の房室弁閉鎖音はである。
- 2.
心音のうち、拡張期開始時の半月弁閉鎖音はである。
- 3.
僧帽弁領域の聴取部位は第5肋間と左鎖骨中線の交点で、別名とよばれる。
- 4.
大動脈弁領域の聴取部位は第2肋間である。
- 5.
心電図検査は、生体検査と検体検査のうちに分類される。
- 6.
標準12誘導心電図のうち、aVR・aVL・aVFはに分類される。
- 7.
標準12誘導心電図の胸部誘導はV1からVまでの6誘導である。
- 8.
心電図波形において心室の脱分極を示す波形はである。
- 9.
携帯型小型心電計を約24時間装着し日常生活下の心電図を連続記録する検査をという。
- 10.
ホルター心電図装着中は、電気毛布やIH調理器などの強いを避ける必要がある。
