寝衣交換(脱健着患)
基礎看護学 / 清潔・療養環境
解説
今回は寝衣交換における脱健着患の原則について解説します。
寝衣交換の目的
寝衣交換とは、患者が身につけている寝衣を新しいものに着替えさせる援助のことです。臥床している患者や自力で更衣が困難な患者に対して、看護師が安全・安楽に行う重要なケアの一つです。 寝衣交換の目的は大きく四つあります。第一に皮膚の汗や汚れを除去し、感染予防と清潔を保つこと。第二に乾いた清潔な衣類により、患者の快適性を高めること。第三に更衣の過程で全身の皮膚状態・関節可動域・循環動態を観察できること。第四に身だしなみを整えることで自尊心の維持や闘病意欲の向上といった心理的効果が得られることです。
脱健着患の原則
脱健着患(だっけんちゃっかん)とは、寝衣交換時に守るべき基本原則で、脱ぐときは健側から、着るときは患側から行うことを指します。健側とは麻痺や障害のない動きやすい側、患側とは麻痺・障害・点滴などにより負担をかけたくない側のことです。
脱健着患の根拠
患側は関節可動域が狭く、痛みや拘縮を伴うことが多いため、無理に動かすと苦痛や損傷を招きます。着衣時には衣類にゆとりがある状態で患側から袖を通すことで、関節を大きく動かさずに済み、皮膚や関節への負担を最小限にできます。一方、脱衣時に健側から先に抜けば、最後まで袖が通っている側が動きやすい健側となり、衣類を引き寄せやすく、最後に患側を慎重に抜くことができます。点滴中の患者でも同様の考え方で、ルートの抜去や薬液漏れのリスクを最小化できます。
適用される場面
脱健着患の原則は、左右で動きやすさに差がある状況すべてに適用されます。代表的なのは脳卒中後などの片麻痺患者です。麻痺側が患側にあたります。次に点滴静脈内注射中の患者では、点滴が刺入されている側が患側として扱われます。そのほか、関節リウマチで関節可動域制限のある側、術後で患肢が動かしにくい場合、ギプス固定中の肢なども患側として同じ原則で介助します。
健側と患側の判別
判別の基本は「動かしにくい・触れたくない側が患側」という考え方です。右片麻痺では健側が左、患側が右となります。左片麻痺ではその逆で、健側が右、患側が左です。点滴の場合は刺入部のある側が患側です。左前腕に点滴が入っていれば健側は右、患側は左となり、脱ぐときは右袖から、着るときは左袖から行います。
点滴中の更衣手順
点滴中の寝衣交換では、ルートトラブルを防ぐための工夫が必要です。まず点滴ボトルとルートにかかる張力を確認し、必要に応じてクレンメで一時的に滴下を止めます。次に健側の袖から脱がせ、続いて患側の袖を抜きますが、このときルートが袖に引っかからないよう袖を内側から手繰り寄せながら慎重に行います。 新しい寝衣を着せるときは、まず点滴ボトルを先に袖の内側から外へ通してから、患者の患側の腕を袖に通します。順序を誤るとルートが絡まり、抜去や閉塞の原因となります。最後に健側を通して整えます。更衣の前後には刺入部の腫脹・発赤・疼痛の有無を必ず観察し、滴下状態も再確認します。
状態別の寝衣の選択
寝衣は患者の状態に合わせて選ぶことが大切です。意識障害のある患者や術後・ドレーン留置中の患者では、急変時の処置や全身観察が容易な前開きの寝衣を選択します。発熱時には吸湿性・速乾性に優れた素材が望ましく、汗による不快感や体温の低下を防ぎます。浮腫や循環障害のある部位にはゴムや縫い目で締め付けない、ゆったりした寝衣を用います。袖ぐりが広い開襟型やラグランスリーブ、スナップボタン式の寝衣は介助しやすく、関節への負担も少ないため臨床でよく用いられます。
自立支援と介助の留意点
片麻痺患者では、できる動作は本人に行ってもらう自立支援の視点も忘れてはいけません。残存機能を活用することは、リハビリテーションとしての意味だけでなく、患者の主体性や自尊心の維持にもつながります。看護師はすべてを介助するのではなく、患者ができない部分を補う姿勢が求められます。同時に、室温調整やプライバシーへの配慮、保温、転倒予防、皮膚観察を並行して行います。
まとめ
寝衣交換では脱健着患、すなわち脱ぐときは健側から、着るときは患側からという原則が基本となります。患側とは片麻痺の麻痺側、点滴側、ギプス固定側など負担をかけたくない側を指し、点滴中であれば点滴ボトルを先に袖へ通してから腕を通すといった工夫が必要です。意識障害のある患者には前開きの寝衣を選び、観察と急変対応に備えます。手技の正確さに加え、患者の自立支援と安全・安楽の視点をあわせ持つことが国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
寝衣交換において、脱ぐときは健側から、着るときは患側から行う原則をという。
- 2.
脱健着患では、脱衣時はから、着衣時は患側から袖を通す。
- 3.
右片麻痺の患者では、健側は左、患側はであり、着衣は右から行う。
- 4.
点滴静脈内注射中の患者では、点滴が刺入されている側がとして扱われる。
- 5.
点滴中の患者に新しい寝衣を着せる際は、患者の腕を通す前にまずを袖の内側から外に通す。
- 6.
意識障害のある患者の寝衣は、急変時の処置や観察が容易なのものを選択する。
- 7.
脱健着患の根拠は、患側が関節可動域の制限や痛みを伴うため、衣類にゆとりがある状態で患側から袖を通すことで関節へのを最小化できる点にある。
- 8.
片麻痺患者の寝衣交換では、すべてを介助するのではなく残存機能を活用したの視点も重要である。
