注射の種類と刺入角度
基礎看護学 / 注射・与薬・輸液・輸血
解説
今回は注射の種類と刺入角度について解説します。注射は薬液を皮膚の下にある組織へ直接届ける医療行為で、看護師が日常的に行う基本技術のひとつです。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織と層をなし、その下に筋層、さらに深部に血管が走行しています。薬液をどの層に届けたいかによって、針を刺し込む角度(刺入角度)、針の太さ、注入できる薬液量がそれぞれ異なります。看護師国家試験では、注射法ごとの刺入角度の数値、針の太さ、適応薬剤、刺入部位の選択など、技術の細部までが繰り返し問われます。本記事では皮内注射・皮下注射・筋肉内注射・静脈内注射(静脈血採血を含む)の4つを軸に整理していきます。
皮膚の構造と注射の関係
注射の刺入角度を理解するには、まず皮膚の層構造を押さえることが大切です。皮膚の最外層は表皮で厚さ約0.1〜0.2mm、その下に真皮が約1〜3mm、さらにその下に皮下組織(皮下脂肪を多く含む層)が数mmから数cmにわたって広がります。皮下組織の下に筋層があり、筋層の中や周囲を血管や神経が走行します。皮静脈は皮下組織の浅い部分を通り、動脈や太い静脈は筋層よりも深い部位を走ります。針を浅く刺せば真皮や皮下組織へ、深く刺せば筋層や血管へ薬液を届けることができるという原理を基本に、注射の種類ごとに角度が決まっています。
皮内注射
皮内注射とは、表皮と真皮の間(真皮内)に薬液を注入する方法です。刺入角度はほぼ皮膚と平行に近い0〜15度で、針はごく浅く刺します。針の太さは26〜27Gと細く、注入量は0.1mL前後とごく少量です。代表的な適応はツベルクリン反応検査やアレルギー検査で、薬液が真皮内にとどまることで局所反応を観察できる点が特徴です。皮内注射では針先が真皮内に正しく入っていれば、注入時に皮膚が膨らんで蒼白の小さな膨疹ができます。膨疹ができない場合は針が深く入りすぎている可能性があり、やり直しが必要です。
皮下注射
皮下注射とは、真皮よりも深く、筋層よりは浅い皮下組織内に薬液を注入する方法です。刺入角度は10〜30度で、皮膚をつまみ上げて皮下組織の厚みをつくり、その盛り上がりに対して斜めに針を刺し込みます。針の太さは23〜27Gと比較的細く、注入量は1mL以下が目安です。代表的な適応はインスリン自己注射、多くの予防接種ワクチン、ヘパリンなどです。皮下組織は血流が筋層より乏しいため吸収はゆるやかで、効果がやや持続的に現れます。
刺入部位はインスリンであれば腹部・大腿・上腕外側・殿部などをローテーションして用い、同じ場所への反復投与による皮下脂肪の硬結(リポハイパートロフィー)を予防します。吸収速度は腹部が最も速く、上腕、大腿、殿部の順に遅くなる点も知っておきましょう。皮下脂肪が5mm以上ある部位を選び、皮膚をつまみ上げて刺入するのが原則です。
筋肉内注射
筋肉内注射とは、皮下組織の下にある筋層に薬液を注入する方法です。刺入角度は45〜90度と深く、痩せた人では45度、標準体格以上では90度が用いられます。針の太さは21〜23Gで皮下注射よりやや太く、注入量は1〜5mL程度まで可能です。筋層は血流が豊富なため、薬液の吸収は皮下注射より速く、静脈内注射より遅いという中間的な速度になります。
刺入部位の代表は三角筋と中殿筋です。三角筋では肩峰から3横指(約3〜5cm)下を目安に刺します。殿部では中殿筋を選び、クラークの点(上前腸骨棘と上後腸骨棘または尾骨を結ぶ線の外側1/3)やホッホシュテッターの部位を用います。これは坐骨神経や上殿動脈などの主要な神経・血管損傷を避けるための安全な領域です。乳児では大腿外側部(大腿四頭筋外側広筋)が選択されます。
筋肉内注射では針を深く刺すため、血管内に誤って針が入っていないかを確認する逆血確認を行います。注射器の内筒を軽く引いて血液の逆流がないことを確認したのち、薬液をゆっくり注入します。筋肉注射では皮下注射と異なり、皮膚はつまみ上げず伸展させて刺入します。
静脈内注射と静脈血採血
静脈内注射とは、薬液を直接静脈内に注入する方法で、刺入角度は10〜20度(おおむね15〜20度)の浅い角度が標準です。皮静脈は皮下組織の浅い部分を走行するため、深く刺すと血管後壁を貫通し、血腫や薬液漏れの原因となります。針の太さは21〜23Gが一般的で、注入できる薬液量に制限はなく、効果発現は最も速いという特徴があります。
静脈血採血や末梢静脈留置針の挿入も静脈内注射と同じ原理で行われ、刺入角度は15〜20度が基本です。針の刃面(ベベル)を上に向け、血管の走行に沿って刺入し、血液の逆流(フラッシュバック)を確認したら角度をさらに寝かせて固定します。留置針では逆血確認後に角度を寝かせ、外筒(カテーテル)のみを血管内に進めて内針を抜去します。
穿刺部位の第一選択は肘正中皮静脈で、表在性で太く、近傍の動脈や神経との距離も比較的安全です。駆血帯は穿刺部位より7〜10cm中枢側に巻き、駆血時間は阻血を避けるため1分以内にとどめます。長時間の駆血は溶血や検査値異常の原因となるため注意が必要です。
動脈血採血
動脈は皮下深くを走行するため、動脈血採血では針をほぼ垂直に近い**90度(皮膚に対して直角)**で刺入します。橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈などが用いられ、止血を確実に行うために穿刺後は5分以上の圧迫止血が必要です。血液ガス分析で動脈血が必要となる場合に行われます。
まとめ
注射の刺入角度は、薬液をどの組織層に届けるかによって決まります。皮内注射は0〜15度でほぼ皮膚と平行、皮下注射は10〜30度、静脈内注射・静脈血採血は15〜20度の浅い角度、筋肉内注射は45〜90度の深い角度、動脈血採血はほぼ90度の垂直という対応関係をしっかり覚えましょう。あわせて、針の太さ(皮内26〜27G、皮下23〜27G、筋肉21〜23G)、注入量(皮内0.1mL、皮下1mL以下、筋肉1〜5mL)、皮膚の扱い(皮下はつまみ上げる、筋肉は伸展させる)、刺入部位(筋注は三角筋・中殿筋クラークの点、静脈採血は肘正中皮静脈)といった関連知識もセットで整理することで、必修問題で確実に得点できる力が身につきます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
皮内注射の刺入角度は皮膚にほぼ平行で度であり、ツベルクリン反応検査などに用いられる。
- 2.
皮下注射の刺入角度は度であり、インスリンやワクチン投与に用いられる。
- 3.
筋肉内注射の刺入角度は度であり、皮下組織の下の筋層に薬液を注入する。
- 4.
静脈血採血の穿刺時の皮膚に対する針の適切な刺入角度は度である。
- 5.
成人の前腕に静脈留置針を穿刺するときは、皮膚に対して度の浅い角度で刺入し、逆血を確認したら角度を寝かせて外筒を進める。
- 6.
筋肉内注射で殿部に穿刺する際、上前腸骨棘と尾骨を結ぶ線の外側1/3に位置する安全な部位をという。
- 7.
皮下注射では皮膚を刺入するのに対し、筋肉内注射では皮膚を伸展させて刺入する。
- 8.
静脈血採血で第一選択となる穿刺部位はであり、駆血時間は分以内にとどめる。
