血管外漏出と中心静脈栄養
基礎看護学 / 注射・与薬・輸液・輸血
解説
今回は血管外漏出と中心静脈栄養について解説します。点滴静脈内注射の安全管理は看護師の基本業務であり、合併症の早期発見と適切な初期対応が患者の予後を大きく左右します。
血管外漏出の基礎
血管外漏出(extravasation)とは、点滴静脈内注射の際に何らかの原因で薬液が血管外の皮下組織へ漏れ出してしまう状態をいいます。薬液による組織への直接的な刺激や圧迫が起こり、組織障害を引き起こします。
症状は段階的に進行し、初期にはまず疼痛が生じ、続いて発赤、腫脹が観察されます。さらに漏出が進行すると、水疱形成、潰瘍化、最終的には皮膚壊死へと重症化します。したがって、点滴中は刺入部の観察と滴下状況の確認を頻回に行い、患者からの痛みの訴えを見逃さないことが組織障害の進展防止に直結します。漏出を疑う他の徴候として、滴下速度の低下や逆血の消失も重要です。
血管外漏出への対応
血管外漏出を疑った場合に最初に行うのは、注入の中止です。被害の拡大を止めることが何よりも優先されます。とくに抗がん剤、カルシウム製剤、高浸透圧輸液などの起壊死性薬剤(vesicant)が漏出した場合は、組織壊死、難治性潰瘍、関節拘縮といった重篤な後遺症を残す危険があるため、迅速な中止が不可欠です。
中止後の流れは、残存薬液をシリンジで吸引してから抜針し、薬剤の性質に応じて冷罨法(多くの場合)または温罨法(ビンカアルカロイドなど)を行い、漏出範囲をマーキングして記録、医師へ報告し、必要に応じて解毒薬の投与を検討します。
中心静脈栄養法(TPN)の基礎
中心静脈栄養法(TPN:total parenteral nutrition)は、経口・経腸栄養が困難な患者に対し、上大静脈などの中心静脈にカテーテルを留置して高カロリー輸液を投与する栄養療法です。高カロリー輸液は浸透圧が血漿の約6倍以上、ブドウ糖濃度が17〜25%と高く、末梢静脈に投与すると血管内皮を損傷して静脈炎を起こすため、大量の血流で急速に希釈される中心静脈からの投与が必須となります。末梢静脈から投与できるのは浸透圧比3以下、糖濃度12%以下が目安です。
カテーテルの挿入経路には鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈の3つがあり、先端は上大静脈と右心房の境界付近に留置します。
TPNの合併症
カテーテル挿入に関連する合併症として、鎖骨下静脈穿刺では胸膜に近接しているため気胸が起こりやすく、内頸静脈では動脈誤穿刺・血腫、大腿静脈では感染・深部静脈血栓症のリスクが相対的に高くなります。挿入後は胸部X線で気胸の有無とカテーテル先端位置を必ず確認します。
代謝性合併症では、ブドウ糖濃度が高いことから高血糖が最も起こりやすく、定期的な血糖モニタリングとインスリン調整が必要です。また、長期栄養障害の患者に急に高カロリー輸液を開始すると、低リン血症・低カリウム血症・低マグネシウム血症を主徴とするリフィーディング症候群を引き起こし致死的となるため、低エネルギーから漸増することが原則です。
さらに、**カテーテル関連血流感染(CRBSI)**は重大な合併症であり、挿入時のマキシマルバリアプリコーション、クロルヘキシジンによる皮膚消毒、不要なカテーテルの早期抜去が予防の基本となります。日常の看護ではカテーテル固定位置の毎日の確認、清潔操作、感染兆候のモニタリングが重要です。
まとめ
血管外漏出では初期症状である疼痛を早期に捉え、疑ったらまず注入を中止することが原則です。中心静脈栄養法は高浸透圧の高カロリー輸液を安全に投与するために必須の方法であり、鎖骨下穿刺時の気胸、高血糖、リフィーディング症候群、CRBSIなどの合併症を理解し、予防と早期発見に努めることが看護師の重要な役割となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
点滴静脈内注射において、何らかの原因で薬液が血管外の皮下組織へ漏出することをという。
- 2.
血管外漏出の初期症状として最初に現れるのはであり、続いて発赤・腫脹がみられる。
- 3.
点滴中に刺入部の腫脹を確認した際、最初に実施すべき対応はことである。
- 4.
中心静脈栄養法の略語はである。
- 5.
高カロリー輸液は浸透圧が高いため、末梢静脈ではなくから投与しなければならない。
- 6.
鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルを挿入する際に起こりやすい合併症はである。
- 7.
TPNで高カロリー輸液を用いる際、ブドウ糖濃度が高いことから起こりやすい代謝性合併症はである。
- 8.
長期栄養障害患者に急に高カロリー輸液を開始すると、低リン・低カリウム・低マグネシウム血症をきたすを起こすことがある。
- 9.
中心静脈カテーテル留置に伴う重大な感染性合併症を(カテーテル関連血流感染)という。
