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抗凝固・抗血栓薬の管理

成人看護学 / 循環器系

解説

抗凝固・抗血栓薬とは、血液が固まりにくくなるように作用する薬剤の総称で、血栓塞栓症の予防や治療に用いられます。今回は、これらの薬剤の作用機序、モニタリング指標、周術期の休薬管理について解説します。

血液が固まるしくみと薬剤分類

血栓ができる過程には大きく二つの経路があります。一つは血小板が傷ついた血管壁に粘着・凝集して止血する一次止血、もう一つは凝固因子が連鎖的に活性化してフィブリン血栓を作る二次止血です。これに対応して、血小板の働きを抑える薬を抗血小板薬、凝固因子の働きを抑える薬を抗凝固薬と呼びます。両者を合わせて抗血栓薬といいます。

深部静脈血栓症(DVT)の危険因子

抗凝固薬の主要な適応である深部静脈血栓症(DVT)の発症には、古典的にVirchowの三徴と呼ばれる三つの要因が関与するとされています。すなわち血流停滞血管内皮障害凝固能亢進の三つで、これらが重なることで下肢深部静脈などに血栓が形成されやすくなります。臨床で特に頻度が高いのは長期臥床による血流停滞で、術後や脳卒中後、長時間の同一体位(エコノミークラス症候群)などはいずれも下肢静脈の血流うっ滞を介してDVTリスクを高めます。看護では弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置の使用、早期離床、こまめな下肢運動の促しが予防の基本となります。

Dダイマーと肺血栓塞栓症のスクリーニング

DVTから遊離した血栓が肺動脈に詰まると肺血栓塞栓症を引き起こします。血栓の存在を疑った際のスクリーニング・補助診断に用いられる血液検査がDダイマーです。Dダイマーは形成されたフィブリン血栓が線溶系によって分解される際に生じる産物(フィブリン分解産物の一種)で、体内に血栓が存在するときに上昇します。陰性であれば血栓塞栓症の可能性は低いと判断でき、特に肺血栓塞栓症やDVTの除外診断に有用です。一方、術後や悪性腫瘍、感染症などでも上昇するため、陽性のときは画像検査などと組み合わせて評価します。

抗血小板薬(アスピリン)

抗血小板薬の代表はアスピリン(アセチルサリチル酸)です。アスピリンはシクロオキシゲナーゼ(COX)を不可逆的に阻害し、血小板内でのトロンボキサンA2の産生を抑えることで血小板凝集を抑制します。低用量(81〜100mg程度)では抗血小板作用を示し、狭心症や脳梗塞の再発予防に用いられます。一方、高用量では抗炎症作用・解熱・鎮痛作用を発揮します。副作用としてアスピリン喘息や消化管出血があり、小児のウイルス感染時にはReye症候群のリスクから禁忌です。

抗凝固薬(ワルファリン)

経口抗凝固薬の代表はワルファリンです。ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の生成を肝臓で阻害することで、血液が固まりにくい状態を作り出します。心房細動や機械弁置換術後の血栓塞栓症予防に広く用いられます。

ワルファリンの効果判定には、プロトロンビン時間を国際標準化したPT-INRを用います。機械弁置換後の目標INRはおおむね2.0〜3.0です。効果が出すぎた場合の拮抗薬はビタミンKです。納豆や青汁などビタミンKを多く含む食品はワルファリンの効果を減弱させるため摂取を控える必要があります。血中半減期は約40時間と長いのが特徴です。

ヘパリンとブリッジング

ヘパリンは注射で投与する抗凝固薬で、アンチトロンビンⅢと結合してトロンビンや活性化第Ⅹ因子を阻害します。半減期が短いため、効果のオン・オフを調節しやすいのが特徴です。効果判定にはAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を用い、基準値の1.5〜2.5倍程度が目標です。過量投与時の拮抗薬はプロタミン硫酸塩です。

ワルファリン服用中の患者が手術を受ける際は、ワルファリンを中止すると効果消失までに数日かかり、その間に血栓塞栓のリスクが高まります。そこで半減期の短いヘパリンに切り替えるヘパリンブリッジング(ヘパリン化)が行われます。通常、ワルファリンは術前3〜5日に休薬し、ヘパリン持続静注に切り替え、ヘパリンは手術の4〜6時間前に中止します。

周術期の休薬管理

抗血栓薬を服用したまま手術を受けると、術中・術後に止血が困難となり出血量が増加します。そのため、出血リスクと血栓リスクを天秤にかけて休薬を検討します。抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)や抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)が休薬対象の代表です。DOACは半減期が短く24〜48時間の休薬で済みます。血栓リスクが高い患者ではヘパリンブリッジングを行います。

まとめ

抗血小板薬は血小板凝集を抑制し、抗凝固薬は凝固因子の働きを抑えます。DVTの背景にはVirchowの三徴(血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進)があり、長期臥床は血流停滞を介してリスクを高めます。Dダイマーは線溶により生じるフィブリン分解産物で、肺血栓塞栓症やDVTのスクリーニング・除外診断に有用です。アスピリンは低用量で抗血小板、高用量で抗炎症作用を示します。ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子を阻害しPT-INRでモニタリング、ヘパリンはAPTTでモニタリングします。周術期にはこれらの抗血栓薬の休薬と、必要に応じたヘパリンブリッジングが重要な看護管理ポイントです。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    アスピリンは(COX)を不可逆的に阻害し、低用量では血小板凝集を抑制する。

  2. 2.

    アスピリンは低用量で抗血小板作用、高用量で作用・解熱・鎮痛作用を示す。

  3. 3.

    ワルファリンは依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の生成を阻害する経口抗凝固薬である。

  4. 4.

    ワルファリンの効果判定にはを用い、機械弁置換後の目標値はおおむね2.0〜3.0である。

  5. 5.

    ワルファリン内服中の患者が手術を受ける際、半減期の短いヘパリンに切り替えることを(ヘパリン化)という。

  6. 6.

    ヘパリンの効果判定にはを用い、基準値の1.5〜2.5倍程度を目標とする。

  7. 7.

    ヘパリン過量投与時の拮抗薬はである。

  8. 8.

    出血傾向を考慮し、手術前に休薬を検討する代表的な抗血栓薬は抗凝固薬とである。

  9. 9.

    深部静脈血栓症(DVT)の発症に関わる血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進の三要因をまとめてという。

  10. 10.

    長期臥床はを介して深部静脈血栓症(DVT)のリスクを高める。

  11. 11.

    フィブリン血栓が線溶系により分解されて生じる産物で、血栓存在の指標として肺血栓塞栓症やDVTのスクリーニング・補助診断に用いられる血液検査項目はである。

抗凝固・抗血栓薬の管理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。