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体液・酸塩基平衡の調節

人体の構造・機能 / 腎泌尿器・体液恒常性

解説

今回は体液・酸塩基平衡の調節について解説します。人体は約60%が水分で構成されており、その水分量・電解質濃度・pHが一定範囲に保たれることで、細胞が正常に働くことができます。この一定の内部環境を維持するしくみをホメオスタシス(恒常性)といい、看護師は脱水・嘔吐・下痢・呼吸不全などさまざまな場面でこの調節機構を理解しておく必要があります。

ホメオスタシスとそのセンサー

ホメオスタシスは、体内の変化を感知するセンサー(受容器)、その情報を統合する中枢、そして実際に調節を行う効果器によって成り立っています。出力は自律神経系と内分泌系を介し、負のフィードバックによって基準値からのずれを打ち消す方向に働きます。

看護国試で問われる代表的なセンサーは、視床下部の浸透圧受容器と延髄の中枢化学受容体です。視床下部の浸透圧受容器は血漿浸透圧の上昇を感知して抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を促し、水の再吸収と口渇感を生じさせて水・ナトリウム平衡を保ちます。延髄の中枢化学受容体は脳脊髄液中のCO2分圧とpHを感知し、換気量を調節して動脈血のCO2濃度を一定に保ちます。そのほか、頸動脈小体や大動脈小体にある末梢化学受容器は主に動脈血のO2低下を感知し、頸動脈洞や大動脈弓の圧受容器は血圧変化を感知して循環調節に関与します。視床下部には体温を感知する温度受容器もあります。

血液pHと酸塩基平衡の三段階調節

動脈血のpHの基準値は7.35〜7.45と、わずか0.1の幅で厳密に保たれています。この範囲を下回るとアシドーシス、上回るとアルカローシスとなり、意識障害や不整脈、けいれんなど重篤な症状を引き起こします。

酸塩基平衡は三段階で調節されます。第一段階は化学的緩衝作用で、血液中の炭酸‐重炭酸系などが秒単位で働きます。第二段階はによる呼吸性調節で、換気によってCO2の排出量を変化させ、数分から数時間で作用します。CO2が貯留すれば過換気でこれを吐き出し、CO2が不足すれば換気を抑制します。第三段階は腎臓による代謝性調節で、HCO3-(重炭酸イオン)の再吸収・産生とH+の尿中排泄によって、数時間から数日かけてpHを微調整します。

つまり、血液のpH調節に関わる主要な臓器は肺と腎臓であり、肺は呼吸性、腎臓は代謝性に働くと整理して覚えましょう。

動脈血液ガス分析の見かた

動脈血液ガス分析では、pH・PaCO2・HCO3-の3つを並べてアセスメントします。基準値はpH 7.35〜7.45、PaCO2 35〜45mmHg、HCO3- 22〜26mEq/Lです。

呼吸性異常では原因がCO2の異常、代償がHCO3-の変動として現れます。代謝性異常ではその逆で、原因がHCO3-、代償がCO2となります。たとえばCOPDなどで慢性的にCO2が貯留する慢性呼吸性アシドーシスでは、腎臓が数日かけてHCO3-の再吸収・産生を増やし、血漿中HCO3-濃度が基準値より高くなります。これは「腎代償」と呼ばれ、pHを基準値に近づけようとする生体反応です。逆に代謝性アシドーシスでは、肺が過換気でCO2を吐き出して代償します。

嘔吐と下痢で起こる体液・電解質異常

臨床で頻繁に出合うのが嘔吐と下痢による体液異常です。両者はいずれも脱水と低カリウム血症を起こしますが、酸塩基平衡の方向が正反対なので必ず区別して覚えてください。

頻回の嘔吐では水分と胃液が大量に失われるため、まず脱水が起こります。胃液は塩酸を含む強酸であり、これを大量に失うと血液中の酸が相対的に減って代謝性アルカローシスに傾きます。同時にクロール(Cl-)も失われて低クロール血症となり、嘔吐時の体液喪失と腎での代償によりカリウムも低下して低カリウム血症を併発します。治療は経口補水液(ORS)が基本ですが、重度の場合は輸液による水分補給と、低カリウム・代謝性アルカローシスの是正を行います。

一方、下痢では腸液が失われます。腸液はカリウムを豊富に含み、また膵液や腸液には重炭酸イオン(HCO3-)が多く含まれます。そのため下痢では低カリウム血症と、HCO3-喪失による代謝性アシドーシス、そして脱水がセットで生じます。嘔吐がアルカローシス、下痢がアシドーシスと、酸塩基の方向が逆になる点が国試頻出ポイントです。治療では等張輸液による水・電解質補正に加え、カリウム補充を行います。

以上、ホメオスタシスのセンサー、肺と腎臓による酸塩基平衡調節、嘔吐・下痢に伴う電解質異常まで、一連の流れで理解しておきましょう。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    血液のpHの基準値はである。

  2. 2.

    血液のpH調節に関わる主要な臓器は肺とである。

  3. 3.

    延髄に存在し、CO2やpHを感知して換気量を調節するセンサーは中枢である。

  4. 4.

    視床下部に存在し、血漿浸透圧の変化を感知するセンサーはである。

  5. 5.

    慢性呼吸性アシドーシスでは、腎代償により血漿中の濃度が基準値より高くなる。

  6. 6.

    頻回の嘔吐では胃酸の喪失により代謝性を生じやすい。

  7. 7.

    下痢で生じやすい電解質異常は低血症である。

  8. 8.

    下痢では腸液中のHCO3-喪失により代謝性を合併しやすい。

  9. 9.

    ホメオスタシスの維持は、基準値からのずれを打ち消す機構による。

体液・酸塩基平衡の調節」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。