StudyNurse

国際保健とWHO

看護の統合と実践 / 国際看護・多文化看護

解説

今回は国際保健とWHOについて解説します。国際保健とは、国境を越えた人々の健康課題を扱う分野であり、感染症の流行、母子保健、栄養問題、健康格差など、一国だけでは解決できない問題に対して国際的な協力体制で取り組む領域です。看護師国家試験では、WHOをはじめとする国際機関の役割、健康の定義、プライマリヘルスケア、国際保健医療協力の基本姿勢などが繰り返し問われます。

WHOによる健康の定義

**世界保健機関(WHO:World Health Organization)**は、1948年4月7日に設立された国際連合の専門機関で、本部はスイスのジュネーブに置かれています。「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的としています。

1948年に発効したWHO憲章の前文では、健康について「健康とは、**完全な肉体的、精神的及び社会的に満たされた状態(well-being)**であり、単に疾病または病弱が存在しないということではない」と定義しています。健康を単に「病気でない状態」と捉えるのではなく、身体・精神・社会の三側面を包括する積極的な概念としてとらえる点が重要であり、看護の基本概念の出発点となっています。この定義は必修問題で頻出です。

WHOの主要な活動

WHOの主要な活動は、国際保健事業の指導と調整、各国保健事業の強化に対する技術協力、感染症その他の疾病の撲滅事業の推進、医学情報の総合調整、保健分野の研究促進、生物学的製剤や医薬品・食品の国際基準の策定などです。世界に6つの地域事務局(アフリカ、米州、東南アジア、欧州、東地中海、西太平洋)を持ち、日本は西太平洋地域事務局(WPRO)に属しています。

国連専門機関と役割分担

国際保健にはWHO以外にも多くの国連機関が関与しています。国試で問われやすい役割分担を整理しておきましょう。WHOは保健、国際連合児童基金(UNICEF)は児童の福祉と母子保健、ILOは労働、FAOは食料・農業、UNESCOは教育・科学・文化、UNHCRは難民、UNFPAは人口とリプロダクティブヘルス、WFPは食糧援助、UNDPは開発を担当します。UNICEFの報告では、5歳未満児死亡率が最も高い地域はサハラ以南のアフリカで、肺炎・下痢症・マラリア・麻疹など予防可能な感染症や周産期合併症が主な死因となっています。

プライマリヘルスケア

プライマリヘルスケア(PHC)は、1978年のアルマ・アタ宣言で提唱された国際保健の基本戦略です。「すべての人々に健康を」(Health for All)を理念とし、地域住民が主体となって自らの健康を守るための包括的なアプローチを示しました。

PHCの5原則

PHCの活動原則は、住民主体の参加、住民のニーズへの対応、地域資源の有効活用適正技術の使用、多分野との協調・統合の5つです。先進国の高度技術をそのまま持ち込むのではなく、現地で入手可能な資源と、現地の文化・経済水準に適した技術を用いることが重視されます。

PHCの8つの活動項目

具体的な活動項目は、保健教育、食料供給と適切な栄養、安全な水と基本的衛生、母子保健と家族計画、主要感染症の予防接種、地方流行病の予防と対策、日常的疾病の治療、必須医薬品の供給の8つです。これらは5歳未満児死亡率が高い地域で特に効果が大きいとされます。PHCは1986年のオタワ憲章で示されたヘルスプロモーション、2000年のMDGs、2015年のSDGs、2018年のアスタナ宣言を経て、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成の基盤として再確認されています。

国際保健医療協力における看護活動

看護師が国際保健医療協力で派遣される際にも、看護過程と同じくアセスメント(情報収集)→計画→実施→評価のサイクルが基本となります。対象が個人ではなく地域住民や集団となる点が国内看護との違いです。

紛争地域や開発途上国では、母子の栄養状態が地域の健康水準を反映する鋭敏な指標となります。乳幼児栄養のアセスメントでは、身長相応体重(急性栄養不良)、年齢相応身長(慢性栄養不良=stunting)、上腕周囲長(MUAC、6〜59か月児で115mm未満は重症急性栄養不良)などが国際標準で用いられます。派遣後にまず行うべきは介入ではなく現地の実態把握であり、これによって介入の優先順位と必要量を判断します。

OECDからみた日本の医療

国際比較の文脈で日本の特徴も押さえておきましょう。経済協力開発機構(OECD)の報告によると、日本は加盟国の中で高齢化率が最も高く、人口あたりの病床数も最多、平均在院日数も長い傾向にあります。一方で人口あたりの医師数はやや少なめで、平均寿命は世界トップクラス、MRIやCTの設置台数も世界一の水準です。「高齢化率・病床数・医療機器は多い、医師は少なめ、医療費はアメリカが世界最高」と方向性を整理して覚えると国試で混同しにくくなります。

まとめ

国際保健の中心機関であるWHOは1948年に設立され、健康を肉体的・精神的・社会的に満たされた状態と定義しました。プライマリヘルスケアは1978年のアルマ・アタ宣言で提唱され、住民参加・地域資源活用・適正技術・多分野協調・ニーズ対応の5原則のもと、すべての人々に健康を届ける基本戦略です。5歳未満児死亡率の最も高い地域はサハラ以南のアフリカで、UNICEFをはじめ国連専門機関が役割分担して支援を行っています。国際保健医療協力の現場でも看護過程は基本であり、最初に行うべきは介入ではなくアセスメント(情報収集)であることを押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    WHO憲章前文では、健康とは完全な肉体的、精神的及びに満たされた状態(well-being)であり、単に疾病または病弱が存在しないということではない、と定義されている。

  2. 2.

    1948年4月7日に設立され、国際保健事業の指導と調整を主要な活動とする国連の専門機関をという。

  3. 3.

    1978年に提唱され、「すべての人々に健康を」を理念とする国際保健の基本戦略を打ち出した宣言を宣言という。

  4. 4.

    アルマ・アタ宣言で提唱され、住民参加・地域資源の有効活用・適正技術の使用・多分野協調・ニーズ対応を5原則とする保健活動の理念をという。

  5. 5.

    UNICEFの報告によると、5歳未満児死亡率が世界で最も高い地域はである。

  6. 6.

    児童の福祉と母子保健を担当し、5歳未満児死亡率などの指標を報告する国連の機関をという。

  7. 7.

    OECD加盟国の中で、日本は65歳以上人口の割合であるが最も高い国に位置づけられている。

  8. 8.

    国際保健医療協力に派遣された看護師が現地で最初に行うべき業務は、介入ではなく対象集団のであり、特に乳幼児の栄養状態の把握が重要である。

国際保健とWHO」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。