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死の三徴候と緩和ケア

成人看護学 / がん・緩和・終末期

解説

今回は死の三徴候と緩和ケアについて解説します。 人の死を医学的に判定する基準と、終末期に至るまでのケアの考え方は、看護の根幹に関わる重要なテーマです。死の判定基準(心臓死・脳死)の違い、臓器移植法の枠組み、そして患者と家族の苦痛を支える緩和ケアの基本を順に整理していきます。

死の判定の枠組み

医学的な死の判定には大きく分けて二つの考え方があります。一つは心臓死、もう一つは脳死です。日本では伝統的に心臓死をもって死亡と判定してきましたが、臓器移植法の制定により、脳死を「人の死」と認める枠組みも整備されました。 心臓死は循環・呼吸・脳幹反射の不可逆的な停止を確認する判定であり、一般の臨床現場で日常的に行われています。脳死は脳幹を含む全脳機能の不可逆的な停止を指し、臓器移植を前提とした厳格な手続きの中で判定されます。

死の三徴候

死の三徴候とは、心臓死を判定するための三つの所見のことです。具体的には、第一に心拍動の停止、第二に自発呼吸の停止、第三に瞳孔散大および対光反射の消失の三項目を指します。この三つがそろい、かつ不可逆的であることをもって医師が死亡を診断します。 確認は医師がペンライトと聴診器を用いて行います。ペンライトで瞳孔を照らして瞳孔径と対光反射を、聴診器で心音と呼吸音を確認するという流れです。看護師は医師による死亡確認に立ち会い、家族への配慮を行います。

死後変化との区別

死亡判定そのものに用いられる三徴候とは別に、死後の身体に起こる変化を死後変化と呼びます。代表的なものに死後硬直、死斑、角膜混濁、死体温の低下(死冷)、腐敗があります。これらは死亡を裏付ける所見ではあるものの、死の三徴候には含まれない別概念である点に注意が必要です。死後の処置(エンゼルケア)は死後硬直が始まる前に行うのが一般的です。

脳死と植物状態

脳死とは、大脳・小脳・脳幹を含む全脳機能の不可逆的な停止を指します。人工呼吸器によって心拍と循環は一時的に維持できますが、自発呼吸は失われ、やがて必ず心停止に至ります。 これと混同されやすいのが**遷延性意識障害(植物状態)**です。植物状態では大脳機能は重度に障害されていても脳幹機能が残っているため、自発呼吸が保たれ、睡眠と覚醒のリズムも見られます。脳死とは異なり回復の可能性も否定できず、人の死とは扱われません。

法的脳死判定

臓器移植を前提に行われる法的脳死判定は、以下の6項目を満たす必要があります。第一に深昏睡(JCS300、GCS3)、第二に両側瞳孔径4mm以上で固定、第三に脳幹反射の消失(対光・角膜・毛様脊髄・眼球頭・前庭・咽頭・咳反射)、第四に平坦脳波(30分以上の連続記録)、第五に自発呼吸の消失無呼吸テストで確認)、第六に6時間以上(6歳未満は24時間以上)経過後に同じ検査を繰り返すことです。 判定は臓器移植に関与しない医師2人以上が独立して行います。

前提条件

脳死判定を行う前提として、器質性脳障害により原疾患が確実に診断されていて不可逆であること、直腸温が32℃以上であること(低体温を除外)、代謝・内分泌障害や薬物中毒が除外されていること、生後12週未満でないことが求められます。

臓器移植法

臓器移植法は1997年に施行され、脳死下での臓器提供の枠組みが整備されました。さらに2010年の改正により、本人の意思が不明であっても家族の承諾があれば脳死下臓器提供が可能となり、15歳未満の小児からの提供も認められるようになりました。これにより小児の臓器移植医療が大きく前進しました。

緩和ケア

緩和ケアとは、WHOの定義によれば、生命を脅かす疾患に直面する患者とその家族に対し、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛早期から評価・予防・緩和することでQOLを向上させるアプローチのことです。

緩和ケアの3原則

第一に、対象は患者本人だけでなく家族も含む点が特徴です。死別後の遺族に対するグリーフケアも緩和ケアの一部です。第二に、終末期になってから始めるのではなく、診断時から治療と並行して開始することが推奨されます(early palliative care)。第三に、療養場所は限定されず、入院・外来・在宅を問わず提供されます。

ACPと対象疾患の広がり

がんの診断時から症状マネジメントを行うと同時に、**ACP(アドバンス・ケア・プランニング)**による意思決定支援を進めることが重要です。ACPとは、患者本人と家族、医療者が、今後の治療やケアの方針について繰り返し話し合い、本人の価値観や意向を共有していくプロセスを指します。 また、緩和ケアの対象はがんに限られません。慢性心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、神経難病など、生命を脅かす非がん疾患にも対象が広がっています。

まとめ

心臓死は心拍動停止・自発呼吸停止・瞳孔散大と対光反射消失の死の三徴候で判定し、死後硬直や死斑などの死後変化とは区別されます。脳死は全脳機能の不可逆的停止で、自発呼吸が残る植物状態とは異なります。法的脳死判定は6項目を満たす必要があり、臓器移植法は2010年改正で家族承諾による提供と15歳未満からの提供を可能にしました。緩和ケアは患者と家族を対象に、診断時から場所を問わず、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛を和らげQOLを高めるアプローチであり、ACPによる意思決定支援を含みます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    死の三徴候とは、心拍動の停止、自発呼吸の停止、そしての三項目を指す。

  2. 2.

    脳幹を含むすべての脳機能が不可逆的に停止した状態をという。

  3. 3.

    脳幹機能が残存し自発呼吸が保たれている状態で、脳死とは区別されるものをという。

  4. 4.

    法的脳死判定では、両側瞳孔径がで固定していることが項目の一つとして求められる。

  5. 5.

    法的脳死判定で自発呼吸の消失を確認するために行う検査をという。

  6. 6.

    法的脳死判定では、判定後(6歳未満は24時間以上)経過した時点で同じ検査を繰り返す必要がある。

  7. 7.

    臓器移植法は2010年の改正により、本人の意思が不明でもがあれば脳死下臓器提供が可能となった。

  8. 8.

    WHOの定義によれば、緩和ケアの対象は患者本人とであり、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛を早期から和らげQOLを向上させるアプローチである。

  9. 9.

    緩和ケアは終末期からではなく、から治療と並行して開始することが推奨される。

  10. 10.

    今後の治療やケアの方針について患者・家族・医療者が繰り返し話し合い、本人の意向を共有していくプロセスをという。

死の三徴候と緩和ケア」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。