脳血管障害後の在宅看護
地域・在宅看護論 / 在宅慢性疾患ケア
解説
脳血管障害後の在宅看護とは、脳梗塞や脳出血などにより片麻痺や高次脳機能障害、嚥下障害などの後遺症を抱えた方が自宅で安全に生活を続けられるよう支援する看護です。今回は脳血管障害後の在宅看護について解説します。
在宅看護計画の基本的な考え方
在宅看護では、本人と家族の意向を尊重することが大原則です。たとえ介護負担が大きくても、本人や家族が在宅継続を希望する場合は、その希望を尊重したうえで負担軽減策を提案します。看護計画の優先度は、まず安全な生活環境の確保であり、住環境の評価と改修が最優先となります。具体的には玄関の段差、階段、浴室、トイレ、寝室の動線を評価し、手すりの設置や段差解消などの住宅改修を検討します。
ICF(国際生活機能分類)の枠組みでは、心身機能・身体構造、活動、参加の三側面から対象者を捉えます。麻痺などの機能障害だけでなく、日常生活動作という「活動」、地域社会との関わりという「参加」を含めて援助を計画することが大切です。
介護保険サービスの活用
介護保険サービスは大きく訪問系(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなど)、通所系(通所介護、通所リハビリテーション)、短期入所系(短期入所生活介護、短期入所療養介護)、施設系(介護老人福祉施設など)に分類されます。要介護2では、これらの居宅サービスを区分支給限度額の範囲内で組み合わせて利用できます。
介護者の負担軽減を図る場合でも、本人と家族が在宅継続を希望していれば、まず訪問介護などの訪問系サービスを提案します。施設入所をすぐに勧めるのではなく、在宅生活を支える方向で調整します。
被殻出血と症候性てんかん
脳出血のうち最も頻度が高いのが被殻出血で、出血と反対側の片麻痺、感覚障害、優位半球が障害されれば失語、視放線が障害されれば同名半盲をきたします。これらの後遺症が在宅生活の障壁となります。
脳卒中後数か月から数年経過してから発症するけいれん発作を症候性てんかん(脳卒中後てんかん)といいます。症状は全身性けいれん、流涎、視線が合わない、発作後の健忘などです。発作が5分以上続く場合はてんかん重積状態とよばれ、緊急対応が必要です。観察のポイントは、発作の開始時刻と持続時間、けいれんの部位と左右差、眼球の偏位、意識レベル、尿失禁の有無、発作後の意識回復までの経過です。
移乗介助と転倒予防
片麻痺患者の移乗介助では、車椅子を健側に設置し、介助者は患側を支えます。立ち上がりの際は本人を前傾姿勢にして重心を足部へ移動させると、健側下肢で支持しやすくなります。介助者はボディメカニクスの原則に従い、支持基底面を広くとり、重心を低くし、てこの原理を活用して腰部への負担を軽減します。
杖歩行の高齢者では、患側下肢を補完する健側の筋力評価が転倒予防に重要です。転倒のリスク要因には、筋力低下、平衡感覚障害、視力低下などの内的要因と、段差、滑りやすい床、不適切な履物などの外的要因があります。降圧薬は起立性低血圧を、抗血栓薬は転倒時の頭蓋内出血リスクを高めるため、服薬内容の把握も欠かせません。
排泄ケア
在宅高齢者の尿失禁のうち、トイレまでの移動に時間がかかり間に合わない状態を機能性尿失禁、急に強い尿意が起こり我慢できない状態を切迫性尿失禁といいます。本人の自立希望を尊重し、行動療法的アプローチを優先します。具体的には排尿日誌による排尿パターンの把握、決まった時間にトイレへ誘導する時間排尿、尿意を少しずつ我慢する膀胱訓練、骨盤底筋訓練などです。あわせて動線の確保、着脱しやすい衣服、夜間のセンサーライト設置といった環境調整を行います。
便秘への対応も、まず食物繊維と水分摂取、活動量の増加、規則的な排便習慣の確立といった生活習慣の見直しから開始します。便の性状評価にはブリストルスケールを用います。下剤や浣腸の使用は二次的な対応とし、安易に薬剤に頼らないことが大切です。
まとめ
脳血管障害後の在宅看護では、本人と家族の意向を尊重し、安全な住環境の整備を最優先としながら、介護保険サービスを適切に組み合わせて生活を支えます。片麻痺患者の移乗・歩行介助の基本、症候性てんかんの観察、排泄ケアにおける行動療法的アプローチは国試で頻出ですので、根拠とともに理解しておきましょう。
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- 1.
脳血管障害後の在宅看護計画では、まずの評価と改修を行い、安全な移動を確保することが最優先である。
- 2.
介護保険サービスは大きく訪問系、、短期入所系、施設系に分類される。
- 3.
脳卒中後数か月から数年経過してから発症するけいれん発作を(脳卒中後てんかん)という。
- 4.
てんかん発作が分以上持続するものをてんかん重積状態という。
- 5.
片麻痺患者の車椅子への移乗では、車椅子をに設置する。
- 6.
介助者がボディメカニクスを活用する際は、支持基底面を広くとり、重心をする。
- 7.
降圧薬の服用は転倒の原因となるを引き起こすことがある。
- 8.
在宅高齢者の尿失禁に対しては、排尿日誌、時間排尿、膀胱訓練、などの行動療法的アプローチを行う。
- 9.
便の性状評価にはを用いる。
- 10.
被殻出血では、出血と反対側の片麻痺、感覚障害、失語、などをきたす。
「脳血管障害後の在宅看護」の過去問演習
地域連携クリニカルパスとは?急性期から在宅までを一本の道でつなぐ仕組み
第115回 午前 第91問
在宅で感染性胃腸炎が起きたら?訪問看護師がまずやるべきこと
第115回 午前 第92問
失語症のAさんと家族をつなぐ言葉のかけ方 ―在宅で生かすコミュニケーション支援
第115回 午前 第93問
片麻痺の高齢者が転びそうになった—訪問看護師が真っ先に確かめるのは「健側の力」
第114回 午前 第91問
「排泄だけは自立したい」—自尊心を守る尿失禁ケアの第一歩
第114回 午前 第92問
退院3か月後の便秘—薬より先に整えるべきは「食卓」
第114回 午前 第93問
在宅継続と介護負担軽減を両立するサービス
第110回 午前 第115問
震え・流涎・眼球不動の正体は?
第110回 午前 第116問
片麻痺患者の安全な移乗介助
第110回 午前 第117問
脳卒中後の在宅ケア らせん階段と片麻痺の家で最優先は?
第106回 午前 第120問
