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在宅で感染性胃腸炎が起きたら?訪問看護師がまずやるべきこと

看護師国家試験 第115午前92(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前92

状況設定

Aさん(80歳、男性、要介護2)は1人で暮らしている。脳出血を発症し、急性期病院で地域連携クリニカルパスに沿って治療が行われた。軽度の右不全麻痺と失語があるため、回復期リハビリテーション病院に転院した。Aさんは自宅退院を希望している。退院後はかかりつけの診療所へ通院し、訪問看護と訪問介護を利用する予定である。

退院1か月後、隣町に住んでいる長男がAさん宅を訪ねると、Aさんは嘔吐と下痢をしていた。長男が付き添ってかかりつけの診療所を受診したところ、Aさんは感染性胃腸炎と診断された。Aさんの長男から依頼を受け、訪問看護師はAさんの体調確認のために臨時で訪問した。 このときの訪問看護師の対応で正しいのはどれか。

  1. 1.保健所に感染性胃腸炎の発生届を提出する。
  2. 2.Aさんが石鹸と流水で手洗いできているか確認する。
  3. 3.介護支援専門員に訪問介護を中止するよう連絡する。
  4. 4.長男に吐物で汚染した衣類は洗濯して室内に干すよう伝える。

対話形式の解説

博士博士
今回は115回の状況設定問題じゃ。80歳・要介護2で独居のAさんが嘔吐と下痢をして、感染性胃腸炎と診断されたぞ。臨時で訪問した看護師はまず何をすべきかな?
サクラサクラ
えーと、感染症だから保健所に届け出ですか?
博士博士
ふむ、そこに引っかかる学生は多いのう。だが感染性胃腸炎は原因菌によって届出の扱いが変わるし、そもそも届出は診断した医師の役割じゃ。訪問看護師が発生届を出すわけではないぞ。
サクラサクラ
なるほど…じゃあ訪問介護を止めるのはどうですか?感染を広げないために。
博士博士
それも気持ちはわかるが、Aさんは独居で要介護2じゃ。サービスを一律に止めたら食事も清潔ケアも止まり、脱水や転倒のリスクが跳ね上がる。感染対策をしながらサービスを継続するのが在宅ケアの基本じゃ。
サクラサクラ
じゃあ正解は…手洗いの確認ですか?
博士博士
その通り!感染性胃腸炎の多くはノロウイルスやロタウイルス、細菌では病原性大腸菌などで、いずれも糞口感染が中心なんじゃ。だから石鹸と流水での手洗いが一番大事になる。
サクラサクラ
アルコール消毒じゃダメなんですか?病院ではよく使いますよね。
博士博士
鋭いところを突いてきたな。ノロウイルスはエンベロープを持たない裸のウイルスで、アルコールに比較的強い。だから流水+石鹸で物理的に洗い流すのが効くんじゃ。これは国試頻出ポイントじゃぞ。
サクラサクラ
Aさんは右不全麻痺と失語もありますよね。手洗いがちゃんとできているか不安ですね。
博士博士
まさにそこじゃ。麻痺で利き手機能が落ちていたり、失語で指導が伝わりにくかったりする。だから訪問看護師が実際に動作を見て、洗い残しを補ったり、家族にも協力を依頼するんじゃよ。
サクラサクラ
選択肢4の「吐物で汚染した衣類は室内に干す」はどうですか?
博士博士
これは大きな落とし穴じゃ。嘔吐物のウイルスは乾燥すると舞い上がってエアロゾル化し、空気中から接触感染を広げる。汚染リネンは85℃以上の熱水で1分以上、または次亜塩素酸ナトリウムで処理し、できれば屋外で乾かすのが望ましい。
サクラサクラ
次亜塩素酸ナトリウムの濃度ってどれくらいでしたっけ?
博士博士
覚えておくと得じゃ。嘔吐物・便の処理は0.1%(1,000ppm)、環境清拭は0.02%(200ppm)が目安じゃ。アルコールではなく次亜塩素酸ナトリウムというのがミソじゃな。
サクラサクラ
在宅だと使い捨て手袋やマスクも必要ですよね?
博士博士
もちろんじゃ。手袋、マスク、使い捨てエプロンの三点セットを使い、外側から内側へ拭き取り、終わったらビニール袋で密閉して廃棄する。換気も忘れずに。
サクラサクラ
独居高齢者だと脱水も心配ですね。
博士博士
そこに気づけるのは素晴らしい!嘔吐と下痢で水分・電解質が失われやすく、Aさんのように高齢で要介護だと自覚的に補水できないことも多い。経口補水液の導入や、悪化時はかかりつけ医・訪問介護・ケアマネと情報共有して受診や輸液の必要性を判断するんじゃ。
サクラサクラ
訪問看護師って、本当に多職種をつなぐハブなんですね。
博士博士
その通りじゃ。在宅では「感染対策をしながら、必要なケアを継続する」というバランス感覚が問われる。今日の問題はその縮図じゃな。

POINT

感染性胃腸炎は接触(糞口)感染が主体であり、在宅における感染拡大予防の基本は石鹸と流水による手洗い。麻痺や失語のある独居高齢者では手洗い手技を実地で確認し、家族・介護職と連携して感染対策を講じる視点が問われている。

解答・解説

正解は2です

問題文:退院1か月後、隣町に住んでいる長男がAさん宅を訪ねると、Aさんは嘔吐と下痢をしていた。長男が付き添ってかかりつけの診療所を受診したところ、Aさんは感染性胃腸炎と診断された。Aさんの長男から依頼を受け、訪問看護師はAさんの体調確認のために臨時で訪問した。 このときの訪問看護師の対応で正しいのはどれか。

解説:正解は 2 です。Aさんは80歳・要介護2で軽度右不全麻痺と失語を抱えながら独居しており、退院後は訪問看護と訪問介護で在宅生活を支えている状況です。今回は感染性胃腸炎を発症しましたが、感染性胃腸炎の多くはノロウイルスやロタウイルス、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌などが原因で、いずれも糞口感染(接触感染)が主たる伝播経路となります。したがって感染拡大を防ぐ最も基本かつ有効な対策は「石鹸と流水による手洗い」であり、特にアルコール消毒では失活しにくいノロウイルスでは流水手洗いの徹底が決定的に重要です。Aさんは右不全麻痺で利き手機能が低下していたり、失語の影響で十分な指導が伝わりにくい可能性もあるため、訪問看護師が実際に手洗い動作を確認し、不足部分を補う指導を行うことが在宅での感染拡大予防につながります。

選択肢考察

  1. ×1.  保健所に感染性胃腸炎の発生届を提出する。

    感染症法上、すべての感染性胃腸炎が届出対象になるわけではない。集団発生やコレラ・腸管出血性大腸菌感染症など特定の原因菌が判明した場合は届出が必要となるが、診断は医師が行い、届出も医師の責務である。また個人宅での発症一例で訪問看護師が発生届を出す立場ではない。

  2. 2.  Aさんが石鹸と流水で手洗いできているか確認する。

    感染性胃腸炎の感染拡大予防の最大の柱は手指衛生である。ノロウイルスなどアルコール抵抗性の病原体も多いため、石鹸と流水による手洗いが第一選択。Aさんは右不全麻痺と失語があり手洗い動作が不十分になりやすいので、訪問看護師が直接確認・指導することは在宅ケアの重要な役割といえる。

  3. ×3.  介護支援専門員に訪問介護を中止するよう連絡する。

    Aさんは独居で要介護2であり、訪問介護を一律に中止すれば食事・清潔・服薬などの生活支援が途絶え、脱水や転倒など別のリスクが高まる。感染対策(手指衛生、手袋・ガウン・マスクなどの個人防護具、嘔吐物の適切処理)を講じた上で必要なサービスを継続するのが原則であり、調整はケアマネジャーと多職種で行う。

  4. ×4.  長男に吐物で汚染した衣類は洗濯して室内に干すよう伝える。

    嘔吐物に含まれるウイルスは乾燥するとエアロゾル化して空気中に舞い上がり、接触・飛沫感染の原因となる。汚染衣類は他のものと分けて85℃以上で1分以上の熱水洗濯、または次亜塩素酸ナトリウムでの消毒を行い、できるだけ屋外で乾燥させるのが望ましい。室内干しは家庭内伝播のリスクを高め不適切である。

感染性胃腸炎、特にノロウイルスへの対応では、(1)手指衛生は石鹸と流水で30秒以上、(2)嘔吐物・便の処理は使い捨て手袋・マスク・エプロンを着け、ペーパータオル等で外側から内側へ拭き取り、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで消毒、(3)汚染リネンは85℃以上の熱水で1分以上の処理または0.02%次亜塩素酸ナトリウムに浸漬、(4)空気が滞らないよう換気、が基本となる。アルコールはノロウイルスに効きにくいことを必ず押さえておく。在宅ケアでは独居高齢者の脱水・低栄養も同時に評価し、経口補水・医療連携の必要性も判断する。

感染性胃腸炎は接触(糞口)感染が主体であり、在宅における感染拡大予防の基本は石鹸と流水による手洗い。麻痺や失語のある独居高齢者では手洗い手技を実地で確認し、家族・介護職と連携して感染対策を講じる視点が問われている。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。