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頭部外傷と頭蓋内圧管理

成人看護学 / 脳・神経

解説

頭部外傷は交通事故や転倒・転落などにより頭部に強い外力が加わって生じる外傷で、頭蓋骨骨折、脳挫傷、頭蓋内出血などを引き起こします。頭蓋骨という閉鎖された硬い容器の中で出血や浮腫が生じると、行き場のない圧が脳実質を圧迫し、生命に直結する頭蓋内圧亢進を招きます。看護師は意識レベル、瞳孔所見、バイタルサインを継続的に観察し、わずかな変化から脳ヘルニアの徴候を見抜く役割を担います。本稿では国家試験で問われる頭部外傷の病態と頭蓋内圧管理の要点を整理します。

頭蓋内圧亢進の基本

頭蓋内は脳実質・血液・髄液という3つの内容物で満たされており、頭蓋という硬い容器のなかでこの3要素の容積の合計が一定に保たれているという考え方をモンロー・ケリーの法則といいます。出血や浮腫などでいずれかの容積が増えると、初めは髄液や静脈血が頭蓋外へ押し出されて圧は保たれますが、代償能力を超えると急激に圧が上昇します。正常な頭蓋内圧は側臥位で60〜180mmH2Oとされ、これを大きく超えた状態が頭蓋内圧亢進です。

頭蓋内圧亢進の代表的症状は頭痛・嘔吐・うっ血乳頭の3徴です。頭痛は朝方に増強し、嘔吐は前駆症状を伴わない噴出性嘔吐であることが特徴です。うっ血乳頭は視神経乳頭の浮腫を眼底で確認できる所見で、視神経はくも膜下腔と連続しているため、頭蓋内圧の上昇がそのまま視神経周囲の圧上昇となり、軸索流が停滞して乳頭が腫脹します。

クッシング現象と脳ヘルニア

頭蓋内圧がさらに上昇すると、脳血流を維持するために代償的に血圧が上昇し、同時に圧受容器反射で脈拍が低下します。この血圧上昇・徐脈・呼吸異常の3つを合わせてクッシング現象といい、脳ヘルニア切迫の危険サインです。テント切痕ヘルニアでは動眼神経が圧迫され、患側の瞳孔散大と対光反射消失が出現します。これらが認められたら一刻も早い減圧処置が必要です。

頭部外傷による頭蓋内出血

外傷性頭蓋内出血のうち国試で頻出するのが急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫です。急性硬膜外血腫は頭蓋骨と硬膜の間に動脈性出血(多くは中硬膜動脈)が貯留するもので、側頭骨骨折に合併しやすく、CTでは頭蓋骨内板に沿った凸レンズ状(biconvex)の高吸収域として描出されます。受傷直後にいったん意識が回復する**意識清明期(lucid interval)**を挟み、その後急激に意識障害が進行するのが典型経過です。緊急の開頭血腫除去術が救命の鍵となります。

一方、急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に静脈性(架橋静脈損傷)の出血が貯留し、CTでは三日月型の高吸収域を示し、縫合線を越えて広がります。高齢者や抗凝固療法中の患者に多く認められます。

意識レベル評価と異常肢位

意識障害の評価には**グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)**が国際標準として用いられます。開眼E(1〜4点)、最良言語反応V(1〜5点)、最良運動反応M(1〜6点)の3項目の合計で評価し、合計13〜15点が軽症、9〜12点が中等症、8点以下が重症で気管挿管を考慮します。挿管中はV評価不能のためVTと記録します。日本ではJCS(ジャパン・コーマ・スケール)も併用されます。

運動反応のM3に相当する異常肢位が除皮質硬直で、大脳皮質から内包にかけての障害により上肢屈曲・内転、下肢伸展の姿勢を示します。M2に相当する除脳硬直は中脳から橋上部の障害で上下肢ともに伸展し、より深部の脳幹障害を意味します。覚え方は「皮質がやられたら上肢が曲がる、脳幹までいくと全部伸びる」です。

頭蓋内圧管理の看護

頭蓋内圧亢進を助長する因子として、怒責、咳嗽、低酸素、頭部低位、頸部の屈曲・回旋による静脈還流障害、高炭酸ガス血症があります。便秘予防のため緩下剤を活用し排便時の怒責を避けること、頭部を15〜30度挙上して静脈還流を促すこと、頸部は正中位を保つこと、過度な気管吸引を控えPaCO2を正常域に維持することが基本となります。

開頭術後は硬膜外ドレーンが留置されることが多く、ドレーンの屈曲・抜去予防、排液の色調・量・性状の観察が重要です。術後合併症として細菌性髄膜炎が重要で、発熱、頭痛、嘔気・嘔吐、項部硬直、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状を継続的に観察します。電解質異常としてSIADHや尿崩症にも注意が必要です。

まとめ

頭部外傷の看護では、頭蓋内圧亢進の3徴である頭痛・嘔吐・うっ血乳頭、そしてクッシング現象である血圧上昇・徐脈・呼吸異常を見逃さないことが最も重要です。意識レベルはGCSやJCSで客観的に評価し、瞳孔不同や異常肢位の出現は脳ヘルニア切迫のサインとして直ちに医師へ報告します。急性硬膜外血腫の意識清明期に油断せず、CTでの凸レンズ状高吸収域を把握しておくこと、術後は頭部30度挙上を基本に怒責や頸部屈曲を避け、ドレーン管理と髄膜炎徴候の観察を継続することが、看護師に求められる実践力です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    頭蓋内圧亢進の3徴は頭痛・・うっ血乳頭である。

  2. 2.

    血圧上昇・徐脈・呼吸異常を3徴とする頭蓋内圧亢進時の危険サインをという。

  3. 3.

    急性硬膜外血腫のCT画像では頭蓋骨内板に沿って状の高吸収域がみられる。

  4. 4.

    急性硬膜外血腫で受傷直後に一時的に意識が回復する時期をという。

  5. 5.

    上肢屈曲・下肢伸展を示す異常肢位をという。

  6. 6.

    上下肢ともに伸展を示す異常肢位をといい、中脳から橋上部の障害を示す。

  7. 7.

    意識レベルを開眼・言語反応・運動反応の3項目で評価する国際標準のスケールを(GCS)という。

  8. 8.

    頭蓋内圧亢進患者では静脈還流を促すため頭部を度挙上する。

  9. 9.

    開頭術後の重要な合併症として髄膜刺激症状を呈するがある。

  10. 10.

    頭蓋内圧亢進時にテント切痕ヘルニアが進行すると、動眼神経圧迫により患側のと対光反射消失が出現する。

頭部外傷と頭蓋内圧管理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。