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急性硬膜外血腫とヘルニアのサイン、患側瞳孔散大を見逃すな

看護師国家試験 第112午後95(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

112午後95

状況設定

Aさん(53歳、女性)は休日に公園を散歩中、階段から落ちて頭部を強打し、意識を消失した状態で病院に救急搬送された。病院到着時のAさんは開眼せず、声は発しているが理解不能である。痛み刺激には逃れようとする動作がみられる。

Aさんは右側の急性硬膜外血腫(acute epidural hematoma)と診断され、緊急開頭手術を受けることになった。術前のバイタルサインは、体温37.2℃、呼吸数14/分、脈拍74/分、整。血圧は、搬送時の134/84mmHgから174/66mmHgに上昇し、痛み刺激に対する反応が消失している。 このときのAさんの瞳孔の状態はどれか。

  1. 1.選択肢1画像
  2. 2.選択肢2画像
  3. 3.選択肢3画像
  4. 4.選択肢4画像

対話形式の解説

博士博士
今回はAさんが右側急性硬膜外血腫と診断され、緊急開頭手術の直前の瞳孔所見を問う画像問題じゃ。
サクラサクラ
血圧が134/84から174/66へ、脈圧が拡大して徐呼吸、反応消失…クッシング現象ですね。
博士博士
その通り。収縮期血圧上昇・徐脈・徐呼吸の3徴は頭蓋内圧亢進の晩期サインじゃ。脳が押し出されるヘルニアが迫っている。
サクラサクラ
硬膜外血腫ってどんな病態ですか?
博士博士
頭蓋骨と硬膜の間に動脈性出血が溜まる外傷性疾患じゃ。多くは側頭骨骨折に伴う中硬膜動脈損傷。CTでは凸レンズ型の高吸収域が特徴で、硬膜下血腫の三日月型と区別されるのじゃ。
サクラサクラ
意識清明期があるのが特徴でしたよね。
博士博士
うむ、lucid interval。受傷直後は話せるが数時間後に急激に意識が悪化する典型経過じゃ。Aさんもその経過を辿っておる。
サクラサクラ
瞳孔はどう変化しますか?
博士博士
血腫が増大してテント切痕ヘルニアが起きると、患側の動眼神経が圧迫される。副交感神経線維が表層を走るので、まず散瞳・対光反射消失が生じる。
サクラサクラ
右側の血腫なら右の瞳孔が大きくなるんですね。これが選択肢3の所見。
博士博士
その通り。だがこの問題は複数正解で、選択肢1の『両側正常』も正解扱いになった。
サクラサクラ
どうしてですか?
博士博士
血腫があっても、進行度によってはまだ瞳孔不同が出ていないこともあるからじゃ。臨床像の幅を考慮した結果、公式に複数正解とされたのじゃ。
サクラサクラ
選択肢2の両側縮瞳や選択肢4の対側散瞳はどうなりますか?
博士博士
両側縮瞳は橋出血や中心性ヘルニア、オピオイドで見られる。対側散瞳は稀だが、Kernohan切痕現象で対側の大脳脚が圧迫され患側麻痺と対側瞳孔散大が生じる場合がある。ただ典型ではない。
サクラサクラ
看護師は何を観察すればよいですか?
博士博士
GCSの経時推移、瞳孔径・対光反射・瞳孔不同、麻痺の左右差、バイタル(クッシング現象)、呼吸パターン(チェーンストークス・失調呼吸)じゃ。いずれも5〜15分おきに継続観察することが多い。
サクラサクラ
術後は頭蓋内圧亢進を防ぐためのケアも重要ですね。
博士博士
頭部30度挙上、頸部の屈曲を避ける、不必要な吸引を避ける、低酸素・高CO2を予防するなどが柱となる。

POINT

急性硬膜外血腫進行時の脳ヘルニアに伴う瞳孔所見、とくに患側瞳孔散大とクッシング現象との関連を理解しているかを問う画像問題。

解答・解説

正解は1です

問題文:Aさんは右側の急性硬膜外血腫(acute epidural hematoma)と診断され、緊急開頭手術を受けることになった。術前のバイタルサインは、体温37.2℃、呼吸数14/分、脈拍74/分、整。血圧は、搬送時の134/84mmHgから174/66mmHgに上昇し、痛み刺激に対する反応が消失している。 このときのAさんの瞳孔の状態はどれか。

解説:正解は 1 と 3 です。なお、本問は公式に2つが正解として採点除外・複数正解扱いとなった問題です。Aさんは右側急性硬膜外血腫で、収縮期血圧上昇と脈圧拡大(クッシング現象)、反応消失がみられ、脳ヘルニアが進行中の状態と考えられます。脳ヘルニアが進行すれば動眼神経圧迫により『患側(右)の瞳孔散大+対光反射消失』が生じるため、選択肢3が典型所見です。一方、血腫診断直後で瞳孔不同がまだ出現していない段階(選択肢1:両側正常)も臨床的にありうるため、両方が正解とされました。

選択肢考察

  1. 1.  

    両側の瞳孔が正常径で不同なしの所見。血腫が増大してヘルニアに至る前の段階では瞳孔は保たれるため、臨床上ありうる。公式採点でも正解扱いとなった。

  2. ×2.  

    両側縮瞳は橋出血や中心性ヘルニア、オピオイド過量などでみられる所見であり、急性硬膜外血腫の典型所見ではない。

  3. 3.  

    右眼散瞳(患側の瞳孔散大)で、右側の血腫による同側動眼神経の圧迫を示す典型的なテント切痕ヘルニア所見。クッシング現象を伴う本症例の病態と一致する。

  4. ×4.  

    左眼散瞳は右側病変なら対側散瞳となり、通常は患側散瞳が先行するため本症例では典型的でない。

急性硬膜外血腫は頭蓋骨と硬膜の間に動脈性(多くは中硬膜動脈)出血が貯留する外傷性疾患で、CTで凸レンズ(biconvex)状の高吸収域が特徴。受傷後に短い意識清明期(lucid interval)を挟んで急速に意識障害が進行することが多い。血腫増大→頭蓋内圧亢進→テント切痕ヘルニア→動眼神経麻痺(患側散瞳+対光反射消失)→クッシング現象(血圧上昇・徐脈・徐呼吸)→除脳硬直へ進行する。緊急開頭血腫除去術が救命の鍵となる。

急性硬膜外血腫進行時の脳ヘルニアに伴う瞳孔所見、とくに患側瞳孔散大とクッシング現象との関連を理解しているかを問う画像問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。