ペースメーカーと電磁干渉の日常注意
看護師国家試験 第110回 午後 第93問 / 成人看護学 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
Aさん( 64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症( hypertension )と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >98%( room air )。 その後、Aさんにはペースメーカー植込み術が行われ、看護師は退院後の電磁干渉について説明を行った。Aさんからは「生活の中でどのようなことに注意をすれば良いですか」と質問があった。 Aさんが最も注意する必要がある状況はどれか。
- 1.新幹線への乗車
- 2.パーソナルコンピュータの使用
- 3.電動アシスト付き自転車での移動
- 4.電子商品監視装置<Electronic Article Surveillance:EAS>の通過
対話形式の解説
博士
Aさんはペースメーカー植込み後の生活指導を受けるところじゃ。
サクラ
電磁波の影響が気になりますね。
博士
うむ、まずは影響がないものから整理しよう。新幹線や家電はどうじゃ?
サクラ
新幹線やパソコン、テレビ、電子レンジは基本的に問題ないと学びました。
博士
その通り。電動アシスト自転車も距離が保たれるので大丈夫じゃ。
サクラ
では注意が必要なのは何ですか。
博士
店舗入口にあるEAS、いわゆる盗難防止ゲートじゃな。
サクラ
ゲートの中で立ち止まらなければよいのですか。
博士
その通り、中央をスッと通過するのが鉄則じゃ。近寄って長時間いるとペーシングが抑制される恐れがある。
サクラ
他に気をつけるものはありますか。
博士
空港の金属探知機やMRIも要注意じゃ。手帳を提示して別の方法で検査してもらうとよい。
サクラ
海外旅行が趣味のAさんには大事な情報ですね。
博士
そうじゃ、身分証明書代わりにペースメーカー手帳を常に携帯するよう伝えるのじゃ。
サクラ
携帯電話は胸ポケットに入れない方がよいのですよね。
博士
うむ、15cm以上離すのが目安じゃ。
POINT
ペースメーカー装着者が最も注意すべき日常環境は、強い磁界を発するEASや金属探知機です。通常の新幹線やパソコン、家電、電動アシスト自転車は影響がほぼないため日常生活に支障はありません。EASはゲート中央を立ち止まらず通過すること、手帳を常時携帯することを指導します。迷ったら距離をとるという原則が安全確保の基本となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症( hypertension )と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >98%( room air )。 その後、Aさんにはペースメーカー植込み術が行われ、看護師は退院後の電磁干渉について説明を行った。Aさんからは「生活の中でどのようなことに注意をすれば良いですか」と質問があった。 Aさんが最も注意する必要がある状況はどれか。
解説:正解は4です。電子商品監視装置(EAS)は店舗出入口に設置された盗難防止ゲートで、強い磁界を発生します。ペースメーカーが誤作動を起こす可能性があるため、近づかずゲート中央を立ち止まらず速やかに通過することが指導されます。
選択肢考察
-
× 1. 新幹線への乗車
新幹線の磁界は国際的な基準を満たしており、ペースメーカー装着者でも乗車可能です。通常の移動には支障ありません。
-
× 2. パーソナルコンピュータの使用
家庭用パソコンやテレビ、電子レンジ、ラジオなど一般家電はペースメーカーに影響を与えないとされており、通常の使用で問題ありません。
-
× 3. 電動アシスト付き自転車での移動
電動アシスト自転車のモーターとペースメーカーとの距離は十分に保たれ、通常使用で影響は及ばないとされています。
-
○ 4. 電子商品監視装置<Electronic Article Surveillance:EAS>の通過
EASは強い磁界や電磁波を用いているため、近接するとペーシング機能が一時的に抑制される危険があります。立ち止まらず中央を速やかに通過するよう指導します。
ペースメーカー装着者が注意すべき環境としてEASのほか、金属探知機(空港ゲートなど)、強い磁場を使うMRI(条件付きMRI対応機種を除く)、高周波治療器、ジアテルミーなどがあります。携帯電話は心臓から15cm以上離して使用するのが目安です。身分証として手帳を常時携帯し、迷ったら離れるという原則を指導します。
ペースメーカー植込み後の日常生活における電磁干渉リスクの知識を問う問題です。
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