大動脈弁狭窄症の聴診トレーニング!カルシウムが弁を固める恐怖
看護師国家試験 第114回 午後 第84問 / 成人看護学 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
後天性の大動脈弁狭窄症(aortic stenosis)について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.二尖弁が多い。
- 2.弁尖の石灰化による。
- 3.左室壁は徐々に薄くなる。
- 4.収縮期に心雑音を聴取する。
- 5.心筋の酸素消費量は減少する。
対話形式の解説
博士
今回は後天性の大動脈弁狭窄症じゃ。高齢化で患者数がどんどん増えておる重要疾患じゃよ。
アユム
大動脈弁って心臓のどこにある弁でしたっけ?
博士
左室から大動脈への出口にある弁じゃ。ここが狭くなると、心臓は全身に血液を送るのに苦労する。
アユム
狭くなる原因は何ですか?
博士
後天性で最も多いのが弁尖の石灰化じゃ。加齢や動脈硬化、生活習慣病などでカルシウムが弁にこびりついて硬くなる。
アユム
二尖弁という選択肢もありましたが、これは違うんですか?
博士
二尖弁は生まれつき弁が3枚ではなく2枚しかない先天性の異常じゃ。若年〜中年でASを起こす代表的原因じゃが、設問は「後天性」じゃから当てはまらん。
アユム
狭窄があると、左室の壁はどうなるんですか?
博士
ここがポイント。狭い出口に血液を押し出すため、左室は強い圧負荷を受ける。心筋は肥厚して壁が厚くなる「求心性肥大」が起こるのじゃ。薄くなるのは逆じゃな。
アユム
なるほど、頑張る筋肉が太くなるイメージですね。聴診ではどう聞こえますか?
博士
収縮期に駆出性雑音、いわゆるハーシュ・マーマーが聞こえる。胸骨右縁第2肋間が最強点で、頸部に放散することが多い。
アユム
収縮期雑音…拡張期じゃないんですね。
博士
その通り。収縮期に左室から大動脈へ血液が流れ出るとき、狭い弁を通るので雑音が出る。覚え方は「血液が出る時に出る雑音」じゃ。
アユム
心筋の酸素消費は減るんですか、それとも増えるんですか?
博士
壁が厚くなり収縮力も増すから、酸素需要は確実に増える。だから狭心痛が出ることもある。
アユム
狭心症以外にも症状はあるんですか?
博士
ASの三大症状は「狭心症」「失神」「心不全」じゃ。これらが出ると予後が一気に悪くなるので外科的治療を考える。
アユム
最近はTAVIという治療も聞きます。
博士
経カテーテル大動脈弁置換術じゃな。開胸せず、太ももの動脈などからカテーテルで人工弁を留置する方法じゃ。高齢者にも適応が広がっておる。
アユム
聴診で粗い収縮期雑音を聞いたら、ASを疑うことが看護師の早期発見につながりますね。
POINT
後天性の大動脈弁狭窄症は、加齢や動脈硬化に伴う弁尖の石灰化を主因として発症します。弁口が狭くなることで収縮期に左室から大動脈へ駆出される血液が高速で通過し、胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を生じます。圧負荷を受けた左室は代償的に求心性肥大を起こして壁が厚くなり、心筋酸素需要も増加するため、進行すると狭心症・失神・心不全という三大症状を呈します。これらの症候が出現すれば外科的弁置換術やTAVIが検討されるため、聴診による早期発見と症状の観察は看護師にとって重要な役割となります。
解答・解説
正解は 2 ・ 4 です
問題文:後天性の大動脈弁狭窄症(aortic stenosis)について正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 の「弁尖の石灰化による。」と 4 の「収縮期に心雑音を聴取する。」です。後天性の大動脈弁狭窄症は、加齢に伴う動脈硬化や石灰化沈着により大動脈弁尖が硬化・肥厚し、左室から大動脈への駆出が妨げられる弁膜症です。弁口面積が狭くなった弁を血液が高速で通過するため、収縮期に駆出性心雑音(ハーシュ・マーマー)を聴取します。胸骨右縁第2肋間が最強点で、頸部に放散することが多いです。圧負荷を受けた左室は代償的に求心性肥大(壁が厚くなる)を起こし、心筋酸素需要は増加します。
選択肢考察
-
× 1. 二尖弁が多い。
大動脈二尖弁は先天性の大動脈弁奇形で、若年〜中年での大動脈弁狭窄症の代表的原因。設問は「後天性」なので、加齢性の石灰化が主因となり二尖弁は当てはまらない。
-
○ 2. 弁尖の石灰化による。
後天性大動脈弁狭窄症の最大の原因は、加齢や動脈硬化に伴う弁尖へのカルシウム沈着・石灰化である。弁が硬く厚くなり開放制限を生じる。
-
× 3. 左室壁は徐々に薄くなる。
狭窄により左室は強い圧負荷を受け、心筋が肥厚して求心性肥大を起こす。すなわち左室壁は薄くなるのではなく厚くなる。
-
○ 4. 収縮期に心雑音を聴取する。
狭くなった弁を血液が収縮期に高速で通過することで、胸骨右縁第2肋間を最強点とする駆出性収縮期雑音(ハーシュ・マーマー)が聴取される。頸部への放散も特徴的。
-
× 5. 心筋の酸素消費量は減少する。
圧負荷による左室肥大と収縮力増大により心筋酸素需要は増加する。冠血流の予備能は低下するため、狭心症・失神・心不全の3徴を呈しやすい。
大動脈弁狭窄症の三大症状は「狭心症(angina)」「失神(syncope)」「心不全(heart failure)」で、頭文字をとってASS(またはASH)と覚える。これらが出現すると平均余命が大きく短縮するため、症候性となれば外科的治療(弁置換術)や経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)の適応が検討される。高齢化社会の進展とともに後天性ASの患者は増加しており、聴診で粗い収縮期駆出性雑音を捉えることはスクリーニングとしても重要である。
後天性の大動脈弁狭窄症の原因(弁尖の石灰化)と特徴的な聴診所見(収縮期駆出性雑音)を理解しているかを問う問題。先天性の二尖弁との区別がポイント。
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