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SLEの検査値、どこに注目する?ループス腎炎を見抜く

看護師国家試験 第106回 午後 第117問 / 成人看護学 / 血液・免疫系

国試問題にチャレンジ

106回 午後 第117問

Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス〈SLE( systemic lupus erythematosus )〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。 入院時のアセスメントで正しいのはどれか。

  1. 1.貧血
  2. 2.出血傾向
  3. 3.易感染状態
  4. 4.腎機能低下

対話形式の解説

博士 博士

32歳女性のAさん、1か月前から発熱・倦怠感・関節痛・顔面紅斑が出て、SLEと診断された。営業で外出が多いのがちょっとヒントじゃな。

サクラ サクラ

蝶形紅斑って日光で悪化しますよね?

博士 博士

その通り。光線過敏はSLEの分類基準の一つじゃ。しかし今回は検査値からアセスメントする問題じゃ。一つずつ見ていこう。

サクラ サクラ

白血球4,400/μL…基準値は3,300〜8,600だから範囲内ですね。

博士 博士

そう。選択肢3の易感染状態は現時点では否定できる。ただしステロイド治療が始まると易感染状態になるから、今後の注意は必要じゃな。

サクラ サクラ

血小板17.5万/μLは?

博士 博士

基準15〜35万で範囲内。選択肢2の出血傾向も否定。SLEでは免疫性血小板減少を合併しうるから今後も経過観察。

サクラ サクラ

Hb12.5g/dLは女性の基準値…

博士 博士

11.6〜14.8g/dLだから範囲内。貧血ではない。SLEでは自己免疫性溶血性貧血を合併しうるが、現時点では問題なし。選択肢1も否定。

サクラ サクラ

残るはクレアチニン2.5mg/dL…これ、すごく高くないですか?

博士 博士

その通り!女性のクレアチニン基準は0.46〜0.79mg/dLじゃから、2.5は基準の3倍以上。明らかな腎機能低下じゃ。

サクラ サクラ

SLEで腎臓が悪くなるって聞いたことがあります。ループス腎炎ですね。

博士 博士

よく知っとるな。SLEでは約50%にループス腎炎を合併する。DNAと抗DNA抗体の免疫複合体が糸球体に沈着して炎症を起こすのが機序じゃ。

サクラ サクラ

放置するとどうなるんですか?

博士 博士

ネフローゼ症候群や腎不全に進行し、透析が必要になることもある。SLEの予後を大きく左右する合併症の一つじゃよ。

サクラ サクラ

治療はどうするんですか?

博士 博士

腎生検でClassⅠ〜Ⅵに分類し、活動性の高いClass Ⅲ・Ⅳでは高用量ステロイドパルス+免疫抑制薬(シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムスなど)で治療する。

サクラ サクラ

SLEの診断には抗核抗体以外にどんな検査がありますか?

博士 博士

抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体、補体低下(C3、C4、CH50)、赤沈亢進などじゃ。分類基準は2019年にEULAR/ACRが新しくしたぞ。

サクラ サクラ

分類基準って何を見るんですか?

博士 博士

抗核抗体陽性を必須項目とし、症状(蝶形紅斑、関節炎、漿膜炎など)、血液検査(血球減少、自己抗体)、腎障害、神経障害などの項目ごとに点数をつけて合計10点以上でSLEと分類する。

サクラ サクラ

なるほど、症状と検査を総合的に見るんですね。

博士 博士

そう。SLEは多彩な症状を呈する疾患じゃから、全身管理が重要じゃ。特に腎・神経・血液系の合併症は致死的になりうるから、入院時アセスメントで見逃してはならん。

サクラ サクラ

クレアチニン2.5は明らかに異常だけど、白血球や血小板の『正常範囲』も惑わされずにしっかり数値で確認する姿勢が大事ですね。

POINT

SLEは抗核抗体・抗ds-DNA抗体などの自己抗体が出現する全身性自己免疫疾患で、約半数にループス腎炎を合併します。入院時の検査値評価では各項目を基準値と照合し、異常所見を正確に拾うことが重要です。本症例ではクレアチニン2.5mg/dLが女性基準の約3倍と著明高値で、ループス腎炎による腎機能低下が最重要所見です。白血球・血小板・Hbは基準値内ですが、ステロイド・免疫抑制薬治療後は易感染状態や血球減少の出現に注意が必要です。検査値を数値で読む習慣と、疾患の合併症パターンを押さえておくことが臨床判断の基礎となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス〈SLE( systemic lupus erythematosus )〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。 入院時のアセスメントで正しいのはどれか。

解説:正解は4です。Aさんの検査値を基準値と比較すると、白血球4,400/μL(基準3,300〜8,600)・血小板17.5万/μL(基準15〜35万)・Hb12.5g/dL(女性基準11.6〜14.8)はいずれも正常範囲内です。一方、クレアチニン2.5mg/dL(女性基準0.46〜0.79)は基準の3倍以上と著明高値で、腎機能低下を示します。SLEでは約半数にループス腎炎を合併し、放置すればネフローゼ症候群・腎不全に進行するため、入院時アセスメントとして『腎機能低下』が最も重要です。

選択肢考察

  1. × 1.  貧血

    Hb12.5g/dLは女性の基準値内。SLEでは自己免疫性溶血性貧血などを合併しうるが、この時点では貧血は認めない。

  2. × 2.  出血傾向

    血小板17.5万/μLは基準値内。SLEでは免疫性血小板減少を合併しうるが、現時点では出血傾向は認めない。

  3. × 3.  易感染状態

    白血球4,400/μLは基準値内。ただし今後のステロイド・免疫抑制薬治療で易感染状態になりうるため、治療開始後は注意が必要。

  4. 4.  腎機能低下

    クレアチニン2.5mg/dLは女性基準の約3倍で、腎機能が著しく低下している。SLEでは約半数にループス腎炎を合併し、早期発見と治療介入が予後を左右する重要な指標。

SLEは全身性の自己免疫疾患で、抗核抗体(ANA)・抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体などの自己抗体が出現する。分類基準(1997年ACR改訂、2019年EULAR/ACR)には、蝶形紅斑・円板状皮疹・光線過敏・口腔潰瘍・関節炎・漿膜炎・腎障害・神経障害・血液異常・免疫異常・抗核抗体などがある。ループス腎炎は約50%で合併し、腎生検でClassⅠ〜Ⅵに分類される。Class Ⅲ・Ⅳ(活動性の高いびまん性/巣状ループス腎炎)では高用量ステロイド+免疫抑制薬(シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムスなど)で治療される。

SLEで入院した患者の検査値を正確に読み取り、合併しやすいループス腎炎に気づけるかを問う問題。各検査値の基準値との比較が鍵。