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膵癌術前の糖尿病患者への説明

看護師国家試験 第105回 午前 第43問 / 成人看護学 / 周術期看護

国試問題にチャレンジ

105回 午前 第43問

Aさん(59歳、男性)は、糖尿病(diabetes mellitus)で内服治療中、血糖コントロールの悪化を契機に膵癌(pancreatic cancer)と診断され手術予定である。HbA1c7.0%のため、手術の7日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。 Aさんに対する説明で適切なのはどれか。

  1. 1.「手術によって糖尿病(diabetes mellitus)は軽快します」
  2. 2.「術後はインスリンを使用しません」
  3. 3.「少量であれば間食をしても大丈夫です」
  4. 4.「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」

対話形式の解説

博士 博士

今回は事例問題じゃ。Aさんは59歳男性、糖尿病既往のある膵癌の術前患者で、HbA1cは7.0%。空腹感とインスリン注射への不安で怒りっぽくなっておる。

サクラ サクラ

患者さんの感情が揺れている中で、どんな説明が適切かを問うているんですね。

博士 博士

そうじゃ。選択肢を一つずつ見ていこう。1番「手術で糖尿病が軽快する」はどうじゃ?

サクラ サクラ

膵臓を切除するとインスリン分泌がむしろ低下するので、軽快するとは言えないですよね。

博士 博士

その通り。膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除の後は、糖尿病が悪化したり新規発症することも多いんじゃ。2番「術後はインスリンを使用しません」は?

サクラ サクラ

術後は侵襲による血糖上昇もあるし、膵切除でさらに必要になるので、やめられるとは断言できません。

博士 博士

よく分かっておるな。3番「少量の間食」は一見優しく聞こえるが、術前の厳格な血糖管理を崩す行為じゃ。手術延期や合併症のリスクを高めるので認められない。

サクラ サクラ

残る4番「血糖コントロールは術後合併症予防のために必要です」が正解ですね。

博士 博士

正解じゃ。高血糖状態では白血球の貪食能が落ち、コラーゲン合成も障害されるから、創感染・縫合不全・治癒遅延が起きやすい。こうした根拠を添えて説明することが大切じゃ。

サクラ サクラ

Aさんの「怒りやすい」状態にはどう対応したらいいですか?

博士 博士

まず傾聴と受容が基本じゃ。空腹感やインスリンへの不安という感情を言語化してもらい、共感を示したうえで科学的根拠に基づいた説明をする。一方的に正論を伝えるだけでは逆効果になる。

サクラ サクラ

なるほど、感情を受け止めてから説明するんですね。

博士 博士

加えて、空腹感には食事の分割や低カロリー食品の工夫、インスリン手技への不安には一緒に練習するなど、具体的な支援を組み合わせると良いぞ。

サクラ サクラ

周術期の糖尿病患者は、身体管理だけでなく心理社会的支援も重要なんですね。

POINT

糖尿病を合併する膵癌患者では、高血糖が術後の創感染・縫合不全・治癒遅延を招くため術前からの血糖コントロールが不可欠です。膵切除後はインスリン分泌が低下するため術後もインスリン治療が継続されることが多く、間食や「軽快する」といった説明は誤りです。患者の不安や怒りに共感しながら、コントロールの根拠を具体的に伝える姿勢が求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん(59歳、男性)は、糖尿病(diabetes mellitus)で内服治療中、血糖コントロールの悪化を契機に膵癌(pancreatic cancer)と診断され手術予定である。HbA1c7.0%のため、手術の7日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。 Aさんに対する説明で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。Aさんは糖尿病既往があり、膵癌手術を控えています。高血糖状態は白血球の貪食能低下、コラーゲン合成障害、微小循環障害を介して創感染や縫合不全、創治癒遅延を招くため、周術期の血糖コントロールは極めて重要です。一般に術前は空腹時血糖100〜140mg/dL、HbA1c 7%未満を目標とし、インスリン皮下注射で厳格に管理します。Aさんの不安や怒りを受け止めつつ、血糖管理の意義を具体的に伝える4番の説明が最も適切です。

選択肢考察

  1. × 1.  「手術によって糖尿病(diabetes mellitus)は軽快します」

    膵癌手術では膵体尾部切除や膵頭十二指腸切除で膵組織を失うため、インスリン分泌能がむしろ低下し糖尿病は悪化する可能性が高いです。軽快するという説明は誤りです。

  2. × 2.  「術後はインスリンを使用しません」

    術後は手術侵襲によるカテコラミンやコルチゾール分泌で血糖が上昇し、さらに膵切除でインスリン分泌が低下するためインスリン投与を継続する必要があります。使用しないと断言することはできません。

  3. × 3.  「少量であれば間食をしても大丈夫です」

    術前は厳格なエネルギー制限食とインスリン量の微調整で血糖を整えています。間食は血糖変動を招き手術延期や合併症リスクを高めるため認められません。空腹感には別の対応(食事内容の工夫、精神的支援)が必要です。

  4. 4.  「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」

    高血糖は創感染、縫合不全、創治癒遅延、肺炎などを誘発します。コントロールの意義を具体的に伝えることで、Aさんの不安を和らげながら治療への理解と協力を得やすくなります。

周術期の血糖目標は施設差がありますが、空腹時血糖100〜140mg/dL、随時血糖200mg/dL未満を目安とします。経口血糖降下薬は手術前日または当日に中止し、スライディングスケールや持続インスリン静注に切り替えるのが一般的です。患者の不安に対しては、感情を受容したうえで根拠を示した説明を行い、意思決定を支える姿勢が重要です。

周術期の糖尿病患者への説明において、血糖コントロールの目的を患者の不安に寄り添いながら適切に伝える力を問う問題です。