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ムーアの4相を極める〜術後の体に起きる劇的変化

看護師国家試験 第112回 午前 第44問 / 成人看護学 / 周術期看護

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第44問

ムーア, F. D.(Moore, F. D.)が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。

  1. 1.傷害期では尿量が増加する。
  2. 2.転換期では循環血液量が増加する。
  3. 3.筋力回復期では蛋白の分解が進む。
  4. 4.脂肪蓄積期では活動性が低下する。

対話形式の解説

博士 博士

今日はムーアの分類について学ぶぞ。周術期看護の超重要概念じゃ。

アユム アユム

ムーアって人の名前ですよね。なんの分類なんですか?

博士 博士

F.D.ムーアはアメリカの外科医で、手術という侵襲を受けた人体がどう回復していくかを時間経過で4つの相に分類したのじゃ。

アユム アユム

4つの相ですか。

博士 博士

そう、第I相『傷害期(異化期)』、第II相『転換期』、第III相『筋力回復期(同化期)』、第IV相『脂肪蓄積期』の4つじゃ。

アユム アユム

まず傷害期はどんな時期ですか?

博士 博士

術後0〜3日頃で、体が非常事態モードに入る時期じゃ。コルチゾールやカテコラミン、ADH、アルドステロンなどのストレスホルモンが大量に出て、水とナトリウムを体内に溜め込む。

アユム アユム

だから尿量が減るんですね。

博士 博士

その通り。しかも水分は血管内ではなくサードスペース、つまり組織間に溜まってしまうから、見た目は浮腫んでも循環血液量は減少するのじゃ。

アユム アユム

ややこしいですね…。蛋白の分解も進むんですか?

博士 博士

そうじゃ、エネルギー動員のために筋蛋白が分解される。だから異化期とも呼ばれる。

アユム アユム

では転換期は?

博士 博士

術後3〜7日頃で、これが今回の正解じゃ。サードスペースに溜まっていた水分が血管内に戻ってくるのじゃ。これを『リフィリング現象』と呼ぶ。

アユム アユム

血管内に戻るから循環血液量が増えて、尿も出るようになるんですね。

博士 博士

その通り!ただし心機能が弱っている患者ではこの時期に心不全を起こすリスクがあるから、尿量と呼吸状態の観察が重要じゃ。

アユム アユム

筋力回復期と脂肪蓄積期は?

博士 博士

第III相の筋力回復期は術後1週〜数週で、蛋白合成が進んで筋肉量が戻ってくる。同化期とも呼ばれる。第IV相の脂肪蓄積期は数週〜数か月で、脂肪がつき体重が戻り、女性では月経も再開する。

アユム アユム

きれいに回復の物語になっていますね。『異化→リフィリング→同化→蓄積』と覚えます。

博士 博士

素晴らしい!覚え方としては、第I相で失ったものが第III相と第IV相で順番に戻ってくる、とイメージすると良いぞ。

アユム アユム

看護のポイントが時期ごとに変わることも理解できました。

POINT

ムーア(F.D.Moore)は外科的侵襲後の生体反応を第I相傷害期、第II相転換期、第III相筋力回復期、第IV相脂肪蓄積期の4つに分類しました。傷害期はストレスホルモン分泌により水・Na貯留、蛋白異化、尿量減少が起こり、転換期ではサードスペースの水分が血管内へ戻るリフィリング現象により循環血液量と尿量が増加します。筋力回復期には蛋白合成が進み、脂肪蓄積期には脂肪と体重が回復して日常生活に復帰します。看護師は各相の特徴を理解し、特に傷害期の脱水対策と転換期の心不全リスクに注意した観察と援助を行う必要があります。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:ムーア, F. D.(Moore, F. D.)が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。

解説:正解は2の『転換期では循環血液量が増加する。』です。ムーア(F.D.Moore)は外科的侵襲後の生体反応を時間経過に沿って第I相(傷害期・異化期)、第II相(転換期)、第III相(筋力回復期・同化期)、第IV相(脂肪蓄積期)の4相に分類しました。第II相の転換期(術後3〜7日頃)では、第I相にサードスペースへ貯留していた水分が血管内に戻る『リフィリング現象』が起こり、循環血液量が増加し尿量も増加します。

選択肢考察

  1. × 1.  傷害期では尿量が増加する。

    傷害期(術後0〜3日)はADHやアルドステロン分泌増加により水・Naが貯留し、尿量は減少する。サードスペースへの水分移動も生じて循環血液量は減少する。

  2. 2.  転換期では循環血液量が増加する。

    転換期(術後3〜7日)では貯留していた水分が血管内へ戻り循環血液量が増加、尿量も増加する(リフィリング)。心機能が低下していると心不全のリスクとなるため観察が重要。

  3. × 3.  筋力回復期では蛋白の分解が進む。

    蛋白の異化(分解)亢進は傷害期の特徴。筋力回復期(同化期、術後1週〜数週)は逆に蛋白合成が進み、失われた筋肉量や活動性が回復していく時期である。

  4. × 4.  脂肪蓄積期では活動性が低下する。

    脂肪蓄積期(術後数週〜数か月)は脂肪合成が進み体重が増加し、女性では月経も再開する。日常生活に復帰する時期であり活動性は低下しない。

ムーアの4相を押さえるコツは『異化→リフィリング→同化→蓄積』の流れで理解すること。第I相は生存のための非常事態モードで、コルチゾール・カテコラミン・ADH・アルドステロンが分泌されエネルギー動員と水分貯留が起こる。第II相は危機を脱し血行動態が正常化する転換点。第III相は筋肉量の回復、第IV相は脂肪の回復と続く。術後管理では特にI相の脱水とII相のリフィリング性心不全への注意が臨床上重要である。

術後の生体反応をムーアの4相で時系列に捉え、各相の代謝・循環動態の特徴を正しく区別できるかを問う問題。