StudyNurse

中心静脈カテーテル挿入後の遅発性合併症

看護師国家試験 第104回 午後 第52問 / 成人看護学 / 呼吸器系

国試問題にチャレンジ

104回 午後 第52問

Aさん(48歳、女性)は、卵巣癌(ovarian cancer)の腹膜播種性転移で亜イレウス状態になった。栄養療法のために、右鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルの挿入が行われたが、鎖骨下動脈を穿刺したため中止された。処置直後の胸部エックス線撮影で異常はなかったが、4時間後、Aさんは胸痛と軽い呼吸困難を訴えた。最も考えられるのはどれか。

  1. 1.血胸(hemothorax)
  2. 2.肺炎(pneumonia)
  3. 3.肺転移
  4. 4.胸膜炎(pleuritis)

対話形式の解説

博士 博士

今日はAさん、48歳の女性じゃ。卵巣癌の腹膜播種で亜イレウスになり、栄養療法のためにCVカテーテルを入れようとしたが鎖骨下動脈を誤穿刺してしまった

アユム アユム

それで処置は中止されたのですね。直後のレントゲンでは異常がなかったとあります

博士 博士

ところが4時間後に胸痛と軽い呼吸困難が出てきた。さて何を疑うかな

アユム アユム

動脈を傷つけた直後ではなく時間が経ってからというのが気になります

博士 博士

鋭いぞ。動脈に針が刺さった部位は一時的に止血しても、後から再び出血が始まることがある

アユム アユム

つまり遅れて胸腔に血液が溜まり始めたと

博士 博士

そう、それが血胸じゃ。鎖骨下動脈は太い血管なので、出血量が多くなれば肺を圧迫して呼吸困難が出現する

アユム アユム

肺炎ではないのですか

博士 博士

細菌が感染して肺炎症状が出るには通常数日かかる。処置から4時間で起きるのは無理があるんじゃ

アユム アユム

肺転移はどうですか。卵巣癌の進行例ですし

博士 博士

転移は数週間から数ヵ月単位でゆっくり進行する病態じゃ。急性の胸痛を起こすメカニズムにはならんぞ

アユム アユム

胸膜炎も4時間では炎症が成立しないということですね

博士 博士

その通り。だから処置直後のX線が正常でも安心はできず、繰り返し撮影や呼吸観察が欠かせない

アユム アユム

空気塞栓や気胸も遅発するのですか

博士 博士

気胸も同様に遅発し得る。SpO2低下や呼吸音の左右差、ショック徴候を見逃さないことじゃ

アユム アユム

看護師として血圧、脈拍、SpO2、胸郭の動き、呼吸音を経時的に観察するのが重要なんですね

博士 博士

さらに胸痛の性状や冷汗、顔色も合わせて報告できれば早期対応につながるぞ

POINT

中心静脈カテーテル挿入では気胸や血胸、動脈穿刺などの合併症があり、本症例は鎖骨下動脈穿刺後に遅発した血胸と考えられます。直後のX線が正常でも安心はできず、数時間後の再出血を想定して呼吸状態とバイタルを継続観察する必要があります。肺炎、肺転移、胸膜炎は時間経過と病態生理から考えにくい選択肢です。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん(48歳、女性)は、卵巣癌(ovarian cancer)の腹膜播種性転移で亜イレウス状態になった。栄養療法のために、右鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルの挿入が行われたが、鎖骨下動脈を穿刺したため中止された。処置直後の胸部エックス線撮影で異常はなかったが、4時間後、Aさんは胸痛と軽い呼吸困難を訴えた。最も考えられるのはどれか。

解説:正解は1の血胸(hemothorax)です。鎖骨下動脈を誤穿刺した経緯があり、処置直後のX線では異常がなかったものの、4時間後に胸痛と呼吸困難が出現しています。動脈穿刺部位からの遅発性出血により胸腔内に血液が貯留したと考えるのが最も妥当です。

選択肢考察

  1. 1.  血胸(hemothorax)

    鎖骨下動脈を誤穿刺した直後は止血されていても、数時間経過してから損傷部位の出血が再開し胸腔内に血液が貯留することがあります。胸腔内の血液が肺を圧迫して胸痛と呼吸困難を生じるため、本症例で最も合致します。

  2. × 2.  肺炎(pneumonia)

    細菌性肺炎は通常、感染から症状出現まで数日を要します。処置からわずか4時間で発症することは病態生理的に考えにくく、本症例の経過とも一致しません。

  3. × 3.  肺転移

    卵巣癌は肺転移を起こし得ますが、転移は数週間から数ヵ月かけて進行する慢性的な病態であり、カテーテル挿入処置から4時間後に急性の胸痛と呼吸困難を引き起こす原因にはなりません。

  4. × 4.  胸膜炎(pleuritis)

    胸膜炎は感染や腫瘍、自己免疫疾患などを背景に炎症が成立するまで時間を要し、4時間で急速に発症することはまれです。処置直後のX線で異常がなかった点も合いません。

鎖骨下静脈穿刺の合併症には気胸、血胸、動脈穿刺、空気塞栓、不整脈などがあり、特に血胸と気胸は遅発性に出現することがあります。穿刺後は当日のうちに繰り返しX線でカテーテル位置と胸腔内の異常を確認し、呼吸状態、胸痛、SpO2、血圧の変動を継続的に観察することが重要です。

中心静脈カテーテル挿入時の合併症のなかでも、動脈穿刺後に遅れて出現する症状から血胸を想起できるかを問う問題です。