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義肢と共に歩む―退院後のリハビリ計画

看護師国家試験 第106回 午前 第96問 / 成人看護学 / 感覚器・運動器系

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第96問

Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折( left tibial fracture )に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。 下肢は長下肢ギプスから膝蓋腱支持ギプスに変更され、左上肢は義肢が装着されて自宅へ退院することになった。 Aさんに対する退院指導で適切なのはどれか。

  1. 1.外出を控えるように指導する。
  2. 2.左前腕部に意識を集中しないように説明する。
  3. 3.義肢を装着して動作訓練を計画的に進めるよう指導する。
  4. 4.受傷前と同じ日常生活動作〈ADL〉ができることを目標に指導する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは義肢装着とPTBギプスで退院することになったぞ。退院指導のポイントを考える問題じゃ。

アユム アユム

PTBギプスって何ですか?

博士 博士

patellar tendon bearingの略、膝蓋腱支持ギプスじゃ。下腿骨折のときに使うタイプで、膝蓋腱で体重を支えることで歩行しながら骨癒合を促せる。

アユム アユム

動きながら治すギプスなんですね、すごい。

博士 博士

うむ、いまや機能的ギプスは整形外科領域で重要な選択肢じゃよ。

アユム アユム

義肢はつけたらすぐ使えるものなんですか?

博士 博士

そこが大事なところじゃ。義肢は装着しただけでは使えず、訓練を重ねて初めて自分の体の延長として機能する。

アユム アユム

1の外出を控えるはどうですか?

博士 博士

これは明らかに誤り。閉じこもれば筋力は落ち、精神的にも落ち込む。社会参加こそがリハビリの目標じゃ。

アユム アユム

2の左前腕部に意識を集中しないようにというのは?

博士 博士

最初こそ意識して丁寧に動作を習得するのが義肢操作のコツなんじゃ。意識しないようにと指導するのは逆効果。

アユム アユム

4の受傷前と同じADLを目標にするのは?

博士 博士

これは一見前向きに思えるが、過剰な目標は達成できなかったときの挫折感を招き、抑うつの原因になる。現実的かつ段階的な目標設定が重要じゃ。

アユム アユム

じゃあ3の計画的に動作訓練を進めるが正解ですね。

博士 博士

その通り。義肢のリハは段階があるんじゃよ。装着時間を延ばす、簡単な握り動作を練習、食事や着替えなどのADLへ応用、最終的に就労や趣味活動へ…とステップを踏む。

アユム アユム

退院後もリハビリを続けるんですね。

博士 博士

そう。中断すると筋力低下、関節拘縮、義肢不適合につながる。外来リハや地域リハビリを活用するのが望ましい。

アユム アユム

心のケアも大事ですよね?

博士 博士

もちろんじゃ。身体の一部を失った喪失感、若年者なら将来への不安、就労や対人関係の変化…心理的サポートは欠かせない。

アユム アユム

社会資源も紹介するんですか?

博士 博士

身体障害者手帳、補装具費支給制度、障害者就労支援、ピアサポートグループなど。看護師はこうした情報を提供して地域生活への橋渡しをするのじゃ。

アユム アユム

身体だけでなく生活全体を見ることが退院指導なんですね。

POINT

切断・義肢装着後の退院指導は、身体機能の回復だけでなく心理的・社会的側面を含めた生活再構築の支援である。義肢は装着すれば即使用できるものではなく、段階的・計画的なリハビリによって機能的自立を目指す。外出制限や非現実的な目標設定は抑うつやQOL低下を招くため避け、残存機能の活用と現実的な目標達成を促すことが大切。看護師は身体障害者手帳・補装具費支給などの社会資源を紹介し、外来リハや地域リソースへつなぐ役割も担う。義肢と共に生きる生活を患者自身が主体的に築けるよう伴走するのが退院支援の本質である。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折( left tibial fracture )に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。 下肢は長下肢ギプスから膝蓋腱支持ギプスに変更され、左上肢は義肢が装着されて自宅へ退院することになった。 Aさんに対する退院指導で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。Aさんは左前腕切断後に義肢(義手)を装着し、左下肢は膝蓋腱支持ギプス(PTB:patellar tendon bearing、体重を膝蓋腱で支える荷重可能なギプス)に変更されて退院となった。義肢は装着すればすぐに使えるものではなく、義肢と残存肢の協調運動、残存筋の再教育、環境への適応が必要で、計画的・段階的な動作訓練(リハビリテーション)が不可欠である。リハビリ中断は筋力低下・関節拘縮・義肢適応不全を招くため、退院後も継続する必要があることを伝えることが適切な退院指導となる。

選択肢考察

  1. × 1.  外出を控えるように指導する。

    外出の制限はむしろADL拡大やQOL向上を妨げ、社会参加や気分転換の機会を奪う。社会復帰を促すためにも、安全に配慮しつつ外出を勧めるのが望ましい。

  2. × 2.  左前腕部に意識を集中しないように説明する。

    義肢を自分の身体の一部として使いこなすには、最初は意識を集中して動作を習得することが必要。徐々に自然な動作となるが、訓練初期に「意識しないで」という指導は誤り。

  3. 3.  義肢を装着して動作訓練を計画的に進めるよう指導する。

    義肢操作は段階的訓練により習得する。装着時間の延長、簡単な動作から複雑な動作へ、日常生活動作への応用と計画的に進めることで、適応性と機能的自立が高まる。

  4. × 4.  受傷前と同じ日常生活動作〈ADL〉ができることを目標に指導する。

    切断と義肢装着という状況で受傷前と完全に同じADLを目標とするのは非現実的で、達成できなければ意欲低下や抑うつを招く。現実的・段階的な目標設定が望ましい。

膝蓋腱支持ギプス(PTBギプス)は下腿骨折後に用いられる機能的ギプスで、体重を膝蓋腱で支持することで患肢に荷重をかけつつ骨癒合を促進する。義肢(義手・義足)のリハビリは①装着練習、②断端管理、③基本動作訓練、④ADL応用、⑤社会復帰へと段階的に進む。退院後は義肢適合状態のフォロー、断端皮膚トラブル予防、筋力維持、心理支援が必要。地域のリハビリ資源、身体障害者手帳取得、障害者就労支援、補装具費支給制度などの社会資源情報も提供する。

切断・義肢装着後の退院指導として、計画的な動作訓練の必要性を理解しているかを問う問題。社会復帰を視野に入れた段階的目標設定と継続的リハビリが鍵。