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術後免荷期の運動と松葉杖指導

看護師国家試験 第108回 午前 第92問 / 成人看護学 / 感覚器・運動器系

国試問題にチャレンジ

108回 午前 第92問

次の文を読み問いに答えよ。 Aさん20歳、男性、大学生は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。 受診時のバイタルサインは、体温37.0°C、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度SpO 2 98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb16.0g/dL、Ht55%、白血球8,900/μL、CRP0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(−)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。 医師による診察の結果、退院は中止になり、入院後5日に膝関節鏡を用いた手術を受けた。手術後1週の診察で退院が決まり、医師から「取り外し可能なギプスを装着し、次の受診まで松葉杖を使い左足には負荷をかけないで生活をしてください」と説明された。 看護師がAさんに行う退院指導で、正しいのはどれか。

  1. 1.「負荷をかけない」とは痛くない程度に体重をかけることである。
  2. 2.患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動をしてよい。
  3. 3.患側下肢の等尺性運動を実施する。
  4. 4.松葉杖は腋窩に密着させる。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは膝関節鏡手術後、取り外し可能ギプスと松葉杖で生活することになったのじゃ。

アユム アユム

『負荷をかけない』というのは、どのくらいの意味なんですか?

博士 博士

これは完全免荷、つまり体重を一切かけない状態じゃ。選択肢1のように『痛くない程度なら荷重OK』と解釈するのは誤りじゃよ。

アユム アユム

なるほど。でも全く動かさないと筋力が落ちませんか?

博士 博士

そこで登場するのが等尺性運動じゃ。正解は選択肢3じゃよ。

アユム アユム

等尺性運動とは具体的にどういうものですか?

博士 博士

関節を動かさずに筋肉を収縮させる運動のことじゃ。例えば大腿四頭筋セッティングは、膝窩の下にタオルを置いて膝裏で押し付ける動作じゃ。関節角度は変わらんが、筋肉はしっかり収縮しておる。

アユム アユム

関節に負担をかけずに筋萎縮を予防できるんですね。

博士 博士

その通り。等張性運動は関節を動かす運動、等運動性運動は機器で速度を一定にする運動で、この3種を区別して覚えておくとよいぞ。

アユム アユム

選択肢2の屈曲伸展の繰り返しはなぜダメですか?

博士 博士

半月板縫合部や滑膜組織に繰り返し負担がかかるからじゃ。可動域訓練は医師の指示に沿って段階的に進める必要があるのう。

アユム アユム

選択肢4の松葉杖を腋窩に密着させるのはどうですか?

博士 博士

これも典型的な誤りじゃ。腋窩には腕神経叢や腋窩神経が走っておるから、直接体重をかけると神経麻痺(松葉杖麻痺・橈骨神経麻痺)を起こす危険がある。

アユム アユム

では正しい松葉杖の使い方は?

博士 博士

杖当ては腋窩から指2〜3本下、約3cm離した位置に置き、体重は手掌で受けるのが原則じゃ。歩行は杖・患側・健側の順の3動作歩行が基本じゃよ。

アユム アユム

指導内容がしっかりイメージできました。

博士 博士

術後管理は『動かすべきところ』と『動かさないところ』を明確に分けるのがコツじゃ。

POINT

膝関節鏡術後の完全免荷期では、関節を動かさずに筋収縮を行う等尺性運動が筋萎縮予防に有効です。『負荷をかけない』とは体重を一切かけない意味であり、屈曲伸展運動は禁忌です。松葉杖は腋窩から2〜3横指下に杖当てを置き、手掌で体重を受けることで松葉杖麻痺を防ぎます。運動療法の種類と松葉杖の正しい使い方は退院指導の基本として必ず押さえましょう。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん20歳、男性、大学生は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。 受診時のバイタルサインは、体温37.0°C、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度SpO 2 98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb16.0g/dL、Ht55%、白血球8,900/μL、CRP0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(−)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。 医師による診察の結果、退院は中止になり、入院後5日に膝関節鏡を用いた手術を受けた。手術後1週の診察で退院が決まり、医師から「取り外し可能なギプスを装着し、次の受診まで松葉杖を使い左足には負荷をかけないで生活をしてください」と説明された。 看護師がAさんに行う退院指導で、正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。膝関節鏡術後で『左足に負荷をかけない』生活を指示された状況では、関節を動かさずに筋肉を収縮させる等尺性運動(アイソメトリック運動)が推奨されます。これにより免荷を守りつつ大腿四頭筋などの廃用性筋萎縮を予防できます。一方で体重負荷や関節の屈伸運動は術部に負担をかけ、治癒を遅らせたり再損傷を招く可能性があります。

選択肢考察

  1. × 1.  「負荷をかけない」とは痛くない程度に体重をかけることである。

    『負荷をかけない』は完全免荷、すなわち体重を一切かけない状態を意味します。痛くない程度でも荷重は術後組織に刺激を与えるため禁忌です。

  2. × 2.  患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動をしてよい。

    関節を繰り返し屈曲伸展させると縫合した半月板や滑膜組織に負担がかかります。可動域訓練は医師の指示に基づき段階的に行う必要があります。

  3. 3.  患側下肢の等尺性運動を実施する。

    等尺性運動は筋の長さを変えずに収縮させる運動で、関節運動を伴わないため術部への負担が最小限です。大腿四頭筋セッティングなどで筋萎縮を予防できます。

  4. × 4.  松葉杖は腋窩に密着させる。

    松葉杖の杖当ては腋窩から2〜3横指(約3cm)下に置き、荷重は手掌で受けます。腋窩に密着させて体重をかけると腋窩神経や腕神経叢を圧迫し、橈骨神経麻痺(松葉杖麻痺)を起こす危険があります。

等尺性運動(isometric exercise)の代表例は大腿四頭筋セッティングで、膝窩の下にタオルを置き、膝裏でタオルを押し付けるように力を入れます。これに対し等張性運動は関節を動かす運動、等運動性運動は機器で一定速度下に行う運動です。松葉杖歩行では杖・患側・健側の順で出す3動作歩行や、杖と患側を同時に出す2動作歩行があります。

術後の完全免荷期間中における筋力維持方法として、関節負荷をかけない等尺性運動の意義と、松葉杖の安全な使用方法が問われています。