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揺れる家族の気持ちに寄り添う!終末期のACP

看護師国家試験 第105回 午前 第119問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午前 第119問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(50歳、女性)は、子宮頸癌(cancer of the uterine cervix)の終末期で入院し緩和ケア治療を行っている。倦怠感は強いが食事は摂れている。麻薬を使用し疼痛のコントロールはできており、ふらつきはあるがトイレ歩行はできる。医師からは余命2か月と告知されており、退院して自宅で最期を迎えたいと希望している。主な介護者となる夫は58歳で、5年前の脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で不全麻痺がある。経済的には安定している。子どもはいない。 退院後1か月。訪問看護ステーションの看護師が訪問した際、夫から「妻は痛みで苦しんでいる様子はない。トイレと食事以外は眠っていることが多く、このまま死んでしまうのでしょうか。家で看取ることができるか不安です」と相談を受けた。 夫への支援で最も適切なのはどれか。

  1. 1.夫に頑張るよう励ます。
  2. 2.病院に入院するよう提案する。
  3. 3.麻薬の量を増やすことを提案する。
  4. 4.Aさんが希望する看取りの場について再度話し合う。

対話形式の解説

博士 博士

退院後1か月、夫は『このまま死んでしまうのでしょうか。家で看取れるか不安です』と訴えておる。この言葉にはどんな気持ちが込められているかの?

サクラ サクラ

病状の進行への恐れと、自分の介護への自信のなさ、両方が混ざっていそうです。

博士 博士

そのとおり。介護者の気持ちは終末期を通じて揺れ動くものじゃ。正解は4のAさんが希望する看取りの場について再度話し合うじゃな。

サクラ サクラ

アドバンスケアプランニング、ACPの考え方ですね。

博士 博士

そう、ACPは本人と家族、医療者が繰り返し話し合いながら意思決定を支えるプロセスじゃ。一度決めたら終わりではなく、状況が変わるたびに再確認する。

サクラ サクラ

1の『頑張って』と励ますのはどうしてダメなんですか?

博士 博士

不安を抱える介護者に『頑張って』と言うと『もう十分頑張っているのに』と感じてさらに孤立させる。傾聴と感情受容が共感的関わりの基本じゃ。

サクラ サクラ

2の入院提案は?

博士 博士

Aさんは自宅で看取りを希望しておる。一方的な入院提案は本人の意思決定権を侵害するぞい。選択肢として示す場合も、まず意向確認と不安整理が先じゃ。

サクラ サクラ

3の麻薬増量は?

博士 博士

Aさんは痛みで苦しんでいる様子はなく疼痛コントロールは良好じゃ。根拠なき増量は過鎮静や呼吸抑制を招き倫理的にも不適切じゃな。

サクラ サクラ

終末期の傾眠傾向は自然な経過なんですよね。

博士 博士

そうじゃ。意識レベル低下は臨終期の前駆症状として現れる。食欲低下、傾眠、下顎呼吸、チェーンストークス呼吸、死前喘鳴などの変化を予告しておくと家族の不安が和らぐぞい。

サクラ サクラ

看取りのパンフレットってあるんですね。

博士 博士

『これからの過ごし方について』『看取りのしおり』など多くの施設で作成されておる。予期される変化を知ることで家族の『いま起きていることは異常ではない』という安心感につながるんじゃ。

サクラ サクラ

在宅継続が難しくなった場合はどうするんですか?

博士 博士

レスパイト入院や緩和ケア病棟転院も選択肢じゃ。『いつでも方針変更できる』と伝えることが在宅継続への心理的支えになる。逃げ道を確保するのが実は継続の秘訣じゃぞい。

サクラ サクラ

夫の気持ちに寄り添う姿勢が大切ですね。

博士 博士

グリーフケアも意識しつつ、介護者自身のセルフケアを促すのも看護師の役割じゃ。『頑張らなくていい』と伝える勇気も必要じゃな。

サクラ サクラ

家族もケアの対象なんですね。

POINT

終末期では病状進行に伴い家族の気持ちが揺れ動くため、看取りの場について本人・家族と繰り返し話し合うACPが最も重要で正解は4です。励まし・入院提案・麻薬増量は共感や意思尊重、医療的根拠の観点から不適切です。看取りのパンフレットで変化を予告し、レスパイト入院など選択肢を提示して家族の心理的負担を軽減することが在宅看取りを支えます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(50歳、女性)は、子宮頸癌(cancer of the uterine cervix)の終末期で入院し緩和ケア治療を行っている。倦怠感は強いが食事は摂れている。麻薬を使用し疼痛のコントロールはできており、ふらつきはあるがトイレ歩行はできる。医師からは余命2か月と告知されており、退院して自宅で最期を迎えたいと希望している。主な介護者となる夫は58歳で、5年前の脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で不全麻痺がある。経済的には安定している。子どもはいない。 退院後1か月。訪問看護ステーションの看護師が訪問した際、夫から「妻は痛みで苦しんでいる様子はない。トイレと食事以外は眠っていることが多く、このまま死んでしまうのでしょうか。家で看取ることができるか不安です」と相談を受けた。 夫への支援で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。終末期では病状の進行とともに介護者の気持ちも揺れ動くため、看取りの場について本人・家族と繰り返し話し合う『アドバンスケアプランニング(ACP)』の視点が重要です。夫の不安を受け止めつつ、Aさん自身の意思を再確認し、必要に応じて療養場所の選択肢(在宅継続、レスパイト入院、緩和ケア病棟など)を一緒に検討することが最も適切な対応となります。

選択肢考察

  1. × 1.  夫に頑張るよう励ます。

    『頑張って』という励ましは不安を抱える介護者の心理的負担をさらに増し、共感的関わりとも逆行します。介護者支援では傾聴と感情の受容、具体的情報提供が基本です。

  2. × 2.  病院に入院するよう提案する。

    Aさんは自宅での看取りを希望しており、一方的な入院提案は本人の意思決定権を侵害します。選択肢として提示するにしても、まず意向確認と不安の整理が先です。

  3. × 3.  麻薬の量を増やすことを提案する。

    Aさんは痛みで苦しんでいる様子はなく、現状の疼痛コントロールは良好です。根拠なく麻薬を増量すれば過鎮静や呼吸抑制を招き倫理的にも不適切です。

  4. 4.  Aさんが希望する看取りの場について再度話し合う。

    病状進行に伴い家族の気持ちは揺れるため、本人の意思と家族の状況を繰り返し共有するACPが重要です。夫の不安を受け止めつつ選択肢を共に検討することが最も適切な支援となります。

終末期の傾眠傾向は病状進行による自然な経過で、意識レベル低下や臨終期の前駆症状として現れます。家族には『看取りのパンフレット』などを用いて今後起こりうる変化(食欲低下、傾眠、下顎呼吸、チェーンストークス呼吸、死前喘鳴など)を予告することで不安を軽減できます。在宅継続が難しい場合はレスパイト入院や緩和ケア病棟への転院も選択肢となり、いつでも方針変更できることを伝えるのが重要です。

終末期の家族支援におけるアドバンスケアプランニングと意思決定の再確認、共感的関わりの重要性を問う問題です。