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頸椎後縦靱帯骨化症と膀胱直腸障害の観察

看護師国家試験 第105回 午後 第113問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午後 第113問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament)と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。 Aさんへの訪問看護における身体状態の観察で、疾患に関連して最も重要なのはどれか。

  1. 1.排尿状態
  2. 2.上肢の筋力
  3. 3.嚥下の状態
  4. 4.外傷の有無
  5. 5.下肢のしびれ

対話形式の解説

博士 博士

今回は58歳男性Aさんじゃ。頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)で椎弓形成術を受けた後、リハ病院を経て自宅療養中。膀胱直腸障害を含む症状がある中、訪問看護で疾患に関連して最も重要な観察項目を選ぶ問題じゃよ。

サクラ サクラ

後縦靱帯骨化症ってどんな病気でしたっけ?

博士 博士

脊柱管の後ろ側を通る後縦靱帯が骨化して肥厚し、脊髄を前から圧迫する病気じゃ。頸椎に多く、中年男性に好発する指定難病じゃよ。圧迫が進むと四肢の運動・感覚障害に加え、膀胱直腸障害が出てくるんじゃ。

サクラ サクラ

椎弓形成術をしたのにまだ症状が残っているんですね。

博士 博士

そうじゃ。除圧術で進行は止まるが、すでに変性した脊髄は完全には回復せん。Aさんは下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺、そして膀胱直腸障害が残っておる。

サクラ サクラ

膀胱直腸障害があるとどういう問題が起こるんですか?

博士 博士

排尿筋や尿道括約筋の協調が崩れ、尿閉、残尿、尿失禁などが起こる。残尿が多いと尿路感染を起こしやすく、さらに膀胱内圧が高いと尿管への逆流が生じて水腎症や腎機能障害につながるんじゃ。放置は腎不全へまっしぐらじゃ。

サクラ サクラ

それは命に関わりますね。では選択肢を見ていきます。選択肢1の排尿状態が正解なんですね。

博士 博士

そのとおりじゃ。尿量・排尿回数・残尿感・尿の性状・発熱の有無を観察し、必要なら自己導尿導入や留置カテーテル管理を検討する。訪問看護で最も見逃してはいけない項目じゃ。

サクラ サクラ

選択肢2の上肢の筋力はどうですか?痙性麻痺があるんですよね。

博士 博士

確かに麻痺はあるが、リハ用フォークを使って自力で食事がとれておる。つまり現状の筋力で生活動作は成立しておる。観察は必要じゃが優先度は下がるんじゃ。

サクラ サクラ

選択肢3の嚥下の状態は?

博士 博士

問題文に嚥下障害の記載はない。頸髄症で嚥下障害が前面に出ることは少なく、これも最優先ではない。

サクラ サクラ

選択肢4の外傷の有無はどうでしょう。知覚鈍麻があると気づかず怪我をしそうですが。

博士 博士

鋭い視点じゃ。知覚鈍麻による褥瘡や打撲の観察は確かに必要じゃが、疾患そのものの合併症ではなく、膀胱直腸障害が腎機能に及ぼす影響より優先度は低いんじゃ。

サクラ サクラ

選択肢5の下肢のしびれは既存症状ですね。

博士 博士

そう、しびれは残存症状じゃが悪化や日常生活への新たな支障の記載はない。生命予後への寄与は排尿状態に比べて小さいんじゃ。

サクラ サクラ

よくわかりました。残尿があると感染から腎不全に進む怖さがあるので排尿状態が最優先なんですね。

博士 博士

そのとおり。訪問看護では水分摂取指導や尿路感染兆候(発熱・混濁尿・悪臭・側腹部痛)の早期発見、必要時は泌尿器科との連携や清潔間欠自己導尿の導入判断まで視野に入れる必要があるんじゃ。

POINT

頸椎後縦靱帯骨化症に伴う膀胱直腸障害は、尿閉や残尿から尿路感染・水腎症・腎機能障害へ進行する重大なリスクがあります。Aさんのように実際に膀胱直腸障害を呈している患者では、排尿回数・量・性状・残尿感・発熱の有無の観察が訪問看護で最優先となります。上肢筋力や嚥下・外傷・下肢しびれは現時点で生活を脅かしておらず、優先度は相対的に低くなります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament)と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。 Aさんへの訪問看護における身体状態の観察で、疾患に関連して最も重要なのはどれか。

解説:正解は 1 です。頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)は脊柱管内の後縦靱帯が肥厚・骨化して脊髄を圧迫する疾患で、四肢麻痺・感覚障害とともに膀胱直腸障害が生じます。膀胱直腸障害では尿意の低下、排尿困難、残尿、尿閉が起こり、放置すれば尿路感染、膀胱尿管逆流、水腎症、腎機能障害へと進行する危険があります。Aさんには実際に膀胱直腸障害の症状があるため、疾患に直結する観察項目として排尿状態(尿量・排尿回数・残尿感・尿性状・発熱の有無など)が最も重要です。

選択肢考察

  1. 1.  排尿状態

    膀胱直腸障害を有するAさんでは、尿閉や残尿による尿路感染、水腎症、腎機能低下のリスクが高いため、排尿回数・量・性状・残尿感・発熱の有無の観察は疾患管理上最優先です。自己導尿や留置カテーテル管理の必要性判断にもつながります。

  2. × 2.  上肢の筋力

    上肢にも痙性麻痺はあるものの、自助具を用いて自力で食事摂取できており現時点で生活動作は確立しています。観察は必要ですが膀胱直腸障害ほど生命・予後に直結しません。

  3. × 3.  嚥下の状態

    問題文に嚥下障害の記載はなく、座位で自力摂取できています。頸髄症で嚥下障害が前面に出ることは少なく、優先度は低いです。

  4. × 4.  外傷の有無

    車椅子移動や知覚鈍麻による褥瘡・打撲の観察は必要ですが、疾患そのものに直結する合併症ではなく、膀胱直腸障害の観察より優先度は劣ります。

  5. × 5.  下肢のしびれ

    下肢のしびれは既存症状として残存しているものの、悪化や生活への新たな影響の記載はありません。生命予後への影響は排尿状態の方が大きいです。

後縦靱帯骨化症は国の指定難病で、中年男性に多く頸椎に好発します。椎弓形成術は脊柱管を広げる除圧術ですが、すでに障害された脊髄機能は完全には回復しません。神経因性膀胱では尿流動態検査で病型(排尿筋過活動型/低活動型)を評価し、抗コリン薬、α遮断薬、清潔間欠自己導尿(CIC)などが選択されます。訪問看護では尿路感染兆候(発熱・混濁尿・悪臭・側腹部痛)の早期発見と水分摂取指導が鍵です。

頸椎後縦靱帯骨化症の膀胱直腸障害が尿路感染・腎機能障害へ進展するリスクを理解し、訪問看護での最優先観察項目が排尿状態であることを判断できるかを問う問題です。