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在宅口腔ケアの自立支援

看護師国家試験 第105回 午後 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午後 第115問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament)と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。 ある日、Aさんに軽度の歯肉出血および歯肉の腫脹がみられるようになった。疼痛はない。訪問歯科診療を受け、口腔ケアを徹底するよう促された。リハビリテーション病院に入院していたときは、自助具を利用して口腔ケアの練習をしていた。退院後は妻が口腔ケアを介助していたが、最近は仕事の帰りが遅く、Aさんは妻を待てずに寝てしまうと言う。また、Aさんは育児で疲れている長女には頼めないと話す。 看護師のAさんへの提案で最も適切なのはどれか。

  1. 1.日中の口腔ケアを徹底する。
  2. 2.長女に口腔ケアを依頼する。
  3. 3.就寝時刻を遅くするよう提案する。
  4. 4.妻が夜に実施できる時間帯を検討する。
  5. 5.Aさんが自立してできる方法を検討する。

対話形式の解説

博士 博士

今度はAさんに軽度の歯肉出血と腫脹が出て、訪問歯科から口腔ケア徹底を指示された場面じゃ。妻は帰宅が遅くAさんは待てず就寝、長女は育児で頼めない。看護師の提案として最も適切なのはどれじゃろう?

サクラ サクラ

家族に介護者がいないとなると、誰がケアするかが問題ですね。

博士 博士

そこじゃ。在宅看護の基本原則を思い出してほしい。『本人のできる力を最大限活かす』自立支援と『介護者の負担軽減』の両立じゃ。

サクラ サクラ

Aさんは上肢にも痙性麻痺がありますが、口腔ケアを自分でできるんでしょうか?

博士 博士

ヒントが問題文にあるぞ。リハ病院で自助具を使った口腔ケアの練習をしておった。さらに食事もリハ用フォークで自力摂取できておる。つまり自助具があれば一定の手指動作は可能なんじゃ。

サクラ サクラ

具体的にどんな自助具があるんですか?

博士 博士

柄を太くしたグリップ付き歯ブラシ、バネ式で開閉動作が不要な電動歯ブラシ、手掌に固定するユニバーサルカフなどじゃ。作業療法士と連携して本人の手の動きに合わせて選ぶんじゃ。

サクラ サクラ

なぜ口腔ケアは就寝前が特に重要なんですか?

博士 博士

睡眠中は唾液分泌が激減し、細菌が繁殖しやすくなるんじゃ。歯周病の進行や誤嚥性肺炎予防の観点から就寝前の清掃が最重要とされておる。

サクラ サクラ

なるほど。では選択肢を見ていきます。選択肢1の『日中の口腔ケアを徹底』は?

博士 博士

日中だけでは就寝中の細菌繁殖に対処できん。歯肉炎も改善しにくい。不適切じゃ。

サクラ サクラ

選択肢2の『長女に口腔ケアを依頼』は?

博士 博士

長女は育児で疲弊しており、Aさん自身が『頼めない』と明言しておる。家族関係とAさんの心情を考えれば強要は不適切じゃ。

サクラ サクラ

選択肢3の『就寝時刻を遅くする』は?

博士 博士

Aさんは疲労で妻を待てずに寝てしまう。就寝時刻を遅らせれば本人の回復や生活リズムを壊す。逆効果じゃよ。

サクラ サクラ

選択肢4の『妻が夜に実施できる時間帯を検討』は?

博士 博士

妻は帰宅が遅いことが前提で、Aさんも起きていられん。介護者負担を増すだけで現実的でない。

サクラ サクラ

そして選択肢5の『Aさんが自立してできる方法を検討』が正解ですね。

博士 博士

そのとおり。自助具の練習歴があり、自分のタイミングで就寝前に実施でき、家族負担ゼロで自己効力感も高まる。まさに在宅看護の原則にかなう提案じゃ。

サクラ サクラ

自立支援は本人のQOLにも関わりますね。自分でできることが増えると前向きになれそうです。

博士 博士

そうじゃ。OTと連携した道具選び、介助なしでも安全に行える姿勢調整、鏡を使った視覚確認など環境整備も看護師の腕の見せどころじゃよ。歯周病予防は誤嚥性肺炎予防にも直結する大事な援助じゃ。

POINT

在宅療養では本人のセルフケア自立と介護者負担軽減の両立が基本です。Aさんは自助具での口腔ケアの練習歴があり、食事も自力でとれるため、柄の太い歯ブラシや電動歯ブラシなど本人が自立してできる方法を検討することが最適です。就寝前の口腔ケアは歯周病と誤嚥性肺炎予防の観点で最重要であり、本人のタイミングで実施できる利点もあります。

解答・解説

正解は 5 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament)と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。 ある日、Aさんに軽度の歯肉出血および歯肉の腫脹がみられるようになった。疼痛はない。訪問歯科診療を受け、口腔ケアを徹底するよう促された。リハビリテーション病院に入院していたときは、自助具を利用して口腔ケアの練習をしていた。退院後は妻が口腔ケアを介助していたが、最近は仕事の帰りが遅く、Aさんは妻を待てずに寝てしまうと言う。また、Aさんは育児で疲れている長女には頼めないと話す。 看護師のAさんへの提案で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 5 です。在宅療養では本人の『できる力』を最大限に引き出すセルフケア自立支援が基本であり、同時に介護者の負担軽減も重要な視点です。Aさんはリハ病院で自助具を使った口腔ケアを練習した経験があり、上肢には麻痺があるものの食事は自助具フォークで自力摂取できる程度の機能を保っています。妻は帰宅が遅く、長女は育児中で家族への依頼は難しいため、本人が自立して実施できる方法(柄の太い歯ブラシ、電動歯ブラシ、ユニバーサルカフなど)を検討することが最も適切です。

選択肢考察

  1. × 1.  日中の口腔ケアを徹底する。

    口腔ケアで最も重要なのは就寝前の清掃です。睡眠中は唾液分泌が減り細菌が繁殖するため、日中だけの徹底では歯肉炎・誤嚥性肺炎予防に不十分です。

  2. × 2.  長女に口腔ケアを依頼する。

    長女は生後5か月の育児で疲労しており、Aさん自身が『頼めない』と明言しています。家族関係やAさんの心情に配慮すれば依頼強要は不適切です。

  3. × 3.  就寝時刻を遅くするよう提案する。

    Aさんは妻を待てずに寝てしまう状態で、生活リズムを崩してまで就寝時刻を遅らせるのは心身の負担となり、回復・健康維持にも逆効果です。

  4. × 4.  妻が夜に実施できる時間帯を検討する。

    妻は仕事で帰宅が遅く、Aさんが起きていられない状況が前提で、妻の夜の時間確保は現実的でなく介護者負担を増すだけです。

  5. 5.  Aさんが自立してできる方法を検討する。

    自助具を用いた練習歴があり、食事動作も自力でできることから口腔ケアの自立も目指せます。就寝前の自分のタイミングで行え、家族負担も減り自己効力感の向上にもつながるため最も適切です。

口腔ケアは歯周病・齲歯予防だけでなく、高齢者・神経疾患患者では誤嚥性肺炎予防の要です。頸髄症で巧緻運動障害がある場合の自助具には、柄を太くしたカフ付き歯ブラシ、バネで開閉する電動歯ブラシ、歯ブラシを固定するユニバーサルカフなどがあります。作業療法士(OT)と連携して本人の残存機能に合った用具を選ぶことが成功の鍵です。在宅介護の原則である『自立支援』と『介護者支援』の両立視点を常に意識することが大切です。

在宅療養における自立支援と介護者負担軽減の両立、そして自助具活用の視点で最適な提案を選択できるかを問う問題です。