こたつで朝まで眠る高齢者 低温熱傷と褥瘡に要注意
看護師国家試験 第106回 午前 第119問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(89歳、女性)は、認知症( dementia )と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男(66歳、未婚)との2人暮らし。 Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。 ある冬の訪問時、長男が「母がここ数日寒さを訴え、居間にある電気こたつの温度を最も高くして、肩までもぐり込んでそのまま朝まで眠ってしまう」と話した。 長男の話を受けて、看護師が最初に観察する項目で最も優先度が高いのはどれか。
- 1.筋力低下の有無
- 2.感染徴候の有無
- 3.認知機能のレベル
- 4.全身の皮膚の状態
対話形式の解説
博士
89歳のAさんが「こたつに肩までもぐり込んで朝まで眠ってしまう」と長男が話しておる。看護師としてまず何を見る?
サクラ
寒がっているから、感染で悪寒があるのかも?
博士
その可能性もゼロではないが、発熱などの情報はない。もっとこたつ就寝という状況から予測できる危険があるのじゃ。
サクラ
あ、もしかして低温熱傷ですか?
博士
その通り!よく気づいたのう。低温熱傷は高齢者ケアでは必ず押さえておくべき合併症じゃ。
サクラ
低温熱傷って、ぬるいお湯やカイロで起こるやつですよね?
博士
そうじゃ。44〜50℃程度の温度でも長時間接触すると深部熱傷になる。44℃で3〜4時間、46℃で30分〜1時間、50℃で数分で起こりうるのじゃ。
サクラ
熱くないから気づかないんですね。
博士
高齢者は皮膚が菲薄で、皮下脂肪も減り、痛覚も鈍い。だから自覚した時には既にⅡ度〜Ⅲ度の深い熱傷になっていることが多いのじゃ。
サクラ
こたつだけじゃなくて、湯たんぽや電気毛布、カイロも危ないですか?
博士
すべて低温熱傷の原因になるのじゃ。特に麻痺や糖尿病神経障害のある患者では要注意じゃ。
サクラ
こたつにもぐり込んで寝ているとすると、もう一つリスクがありそうですね。同じ姿勢で長時間…。
博士
素晴らしい着眼点じゃ。褥瘡じゃな。狭い空間で体位変換できず、同一姿勢で朝までいれば仙骨部や踵、大転子部に圧迫が集中する。
サクラ
高齢者は皮膚もろいから、短時間でも褥瘡ができやすいですよね。
博士
そうじゃ。低栄養や脱水があればなおさら。こたつは寒さ対策としては有効じゃが、就寝には極めて危険な環境なのじゃ。
サクラ
だから「全身の皮膚の状態」が最優先の観察項目になるんですね。
博士
その通り。下肢の前面、背面、大腿、仙骨部、踵部など全身を確認。発赤、水疱、硬結、熱感、びらんなどを見るのじゃ。
サクラ
予防としてはどう指導すればいいんですか?
博士
就寝時はこたつから出る、温度を下げる、電気敷き毛布のような直接接触暖房も避ける、布団をかける、室温自体を上げる、といった工夫じゃ。
サクラ
筋力低下や認知機能も大事ですが、この状況ではあくまで二次的ですね。
博士
そう、問題の「最優先」は状況文脈で決まるのじゃ。国試の問題文は一字一句がヒントじゃから、背景を丁寧に読むことじゃよ。
POINT
高齢者がこたつに長時間もぐり込んで就寝する状況では、低温熱傷と褥瘡のリスクが最も高くなります。低温熱傷は44〜50℃程度でも長時間の接触で深い熱傷となり、高齢者は皮膚の菲薄化や知覚鈍麻により気づかぬうちに進行することが特徴です。また狭い空間での同一体位での臥床は仙骨部や踵部の褥瘡を招くため、全身の皮膚状態の観察が最優先となります。筋力低下・感染徴候・認知機能の観察も重要ですが、この場面では二次的であり、状況から最大リスクを読み取る力が問われる問題でした。在宅看護では冬季の暖房器具と皮膚トラブルのリスク評価・指導が不可欠です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(89歳、女性)は、認知症( dementia )と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男(66歳、未婚)との2人暮らし。 Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。 ある冬の訪問時、長男が「母がここ数日寒さを訴え、居間にある電気こたつの温度を最も高くして、肩までもぐり込んでそのまま朝まで眠ってしまう」と話した。 長男の話を受けて、看護師が最初に観察する項目で最も優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。89歳の高齢者は皮膚が菲薄で感覚が鈍くなっており、こたつに長時間もぐり込む生活では低温熱傷と褥瘡のリスクが非常に高い。低温熱傷は44〜50℃程度の温度に長時間(数時間)接触することで生じ、高温熱傷より深くⅡ度〜Ⅲ度に及ぶことが多いが、発症時は痛みが弱く本人が気づきにくい。加えて、狭い空間で同じ姿勢のまま寝てしまえば仙骨部や踵部の褥瘡も発生しやすい。したがって全身の皮膚状態(発赤、水疱、硬結、熱感など)の観察が最優先となる。
選択肢考察
-
× 1. 筋力低下の有無
長期臥床による廃用症候群は高齢者の懸念事項だが、「この設問」で直近に生じうる最優先リスクは低温熱傷と褥瘡であり、筋力低下の観察はその後でよい。
-
× 2. 感染徴候の有無
「寒さを訴える」ことから発熱の可能性もゼロではないが、体温などの具体的情報はなく、こたつに長時間もぐる生活という特殊な状況から優先すべきは皮膚の問題である。
-
× 3. 認知機能のレベル
認知症は基礎疾患として存在するが、認知機能の急激な変化を示唆する情報はなく、現時点での最優先観察項目ではない。
-
○ 4. 全身の皮膚の状態
こたつに長時間接触しての就寝は低温熱傷の典型的な発生状況。さらに狭い空間で同一体位のまま朝まで過ごすため褥瘡のリスクも加わる。高齢者の皮膚は脆弱で痛覚も鈍く、気づかぬうちに深部熱傷になることがあるため、全身の皮膚状態の観察が最優先。
低温熱傷は44℃で約3〜4時間、46℃で約30分〜1時間、50℃で数分の接触により発症しうる。初期は紅斑のみだが、深達性のⅡ度〜Ⅲ度熱傷に進行することが多く、治癒に時間を要する。予防には、カイロ・湯たんぽ・電気毛布・こたつなどの直接接触の回避、温度設定の確認、就寝時の離床が重要。褥瘡予防では体圧分散、体位変換、栄養管理、皮膚の清潔・保湿が基本。高齢者は皮膚の菲薄化、皮下脂肪減少、知覚低下により熱傷・褥瘡とも発症リスクが高い。
在宅高齢者のこたつでの長時間就寝というリスク状況から、低温熱傷と褥瘡を念頭に皮膚の観察を最優先とすることを問う問題。
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