ALS人工呼吸器装着者と療養通所介護
看護師国家試験 第108回 午後 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)<ALS>と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全(chronic renal failure)のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。 Aさんが利用する在宅サービスで最も優先度が高いのはどれか。
- 1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 2.通所リハビリテーション
- 3.短期入所生活介護
- 4.療養通所介護
対話形式の解説
博士
今回は気管切開下人工呼吸と胃瘻のALS患者Aさんと、週3回透析を受ける妻の事例じゃ。
サクラ
妻が6時間外出する間、Aさんを誰がみるかが問題ですね。
博士
その通り。しかも人工呼吸器装着と胃瘻管理という高度な医療的ケアが必要じゃ。
サクラ
正解は何ですか?
博士
4番の療養通所介護じゃ。難病や重度要介護者を対象に、看護師が常駐して医療的ケアを行う通所サービスなんじゃよ。
サクラ
初めて聞きました。普通のデイサービスとは違うんですか?
博士
違うんじゃ。療養通所介護は定員が1日18人以下と小規模で、管理者は看護師、訪問看護ステーションと密接に連携しておる。人工呼吸器、気管吸引、胃瘻注入などを行いながら通所できるんじゃ。
サクラ
妻が透析に行く6時間、Aさんを預けられるんですね。
博士
そうじゃ。家族のレスパイト(介護休息)にも役立つ重要なサービスじゃよ。
サクラ
1番の定期巡回・随時対応型訪問介護看護は?
博士
これは短時間の訪問を1日複数回行うサービスで、24時間対応もするが、6時間ずっと付き添うわけではない。Aさんの見守りには不十分なんじゃ。
サクラ
2番の通所リハビリテーションは?
博士
通称デイケアで、医師指示下でリハビリを提供する。ただ気管切開下人工呼吸と胃瘻管理は一般のデイケアでは対応が難しいことが多い。
サクラ
3番の短期入所生活介護は?
博士
ショートステイのことじゃ。特養などに短期入所するが、生活介護中心で高度医療には対応しづらい。週3回の頻回利用には向かんのじゃよ。
サクラ
療養通所介護はALS以外にも使えますか?
博士
もちろんじゃ。がん末期、筋ジストロフィー、脊髄損傷後の人工呼吸器装着者など、医療依存度の高い在宅療養者と家族を支える貴重なサービスじゃ。
サクラ
介護保険の複雑さがよくわかりました。
博士
そう、利用者の医療依存度と家族の介護力を合わせて最適なサービスを組み合わせるのが在宅ケアの腕の見せどころじゃよ。
POINT
療養通所介護は難病や重度要介護者を対象に看護師常駐で医療的ケアを継続できる通所サービスです。ALS患者など人工呼吸器や胃瘻を有する在宅療養者の介護を、訪問看護ステーションと連携しながら提供し、家族のレスパイトにも寄与します。定期巡回訪問介護看護、通所リハビリ、短期入所生活介護では高度医療ケアと長時間預かりを両立しづらく、本事例では療養通所介護が最適です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)<ALS>と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全(chronic renal failure)のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。 Aさんが利用する在宅サービスで最も優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。療養通所介護は、常に看護師の観察が必要な難病・重度要介護者を対象とした通所サービスで、気管切開下人工呼吸や胃瘻管理などの医療的ケアを継続しながら預かることができます。妻が透析で6時間不在となる間のAさんの安全を確保する選択肢として最適です。
選択肢考察
-
× 1. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
短時間の訪問を定期的に行うサービスで、6時間連続でAさんのそばにいることはできず、人工呼吸器装着者の見守りとしては不十分です。
-
× 2. 通所リハビリテーション
医師の指示下でリハビリを提供する施設ですが、気管切開下人工呼吸・胃瘻の重度医療依存状態のAさんへの対応は一般的に困難です。
-
× 3. 短期入所生活介護
特別養護老人ホームなどに短期入所するサービスですが、生活介護が中心で高度医療ケアには対応しづらく、週3回の頻回利用も適しません。
-
○ 4. 療養通所介護
難病・重度要介護者を対象に看護師常駐で医療的ケアを行う通所サービスで、透析中の妻の代替介護者としてAさんを安全に預かれます。
療養通所介護は2006年に創設された介護保険サービスで、定員は1日概ね18人以下、管理者は看護師と規定されています。訪問看護ステーションとの連携が密で、人工呼吸器、気管切開、胃瘻、喀痰吸引などの医療処置を受けながら通所できます。ALS患者やがん末期患者など、重度医療依存状態の在宅療養者とその家族(レスパイト目的含む)の支援に重要な役割を果たします。
ALS・人工呼吸器装着者の在宅介護において、医療的ケアを継続できる通所サービスの選択を問う問題です。
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