夫婦でお出かけ外食――インスリン自己注射と上手に付き合うコツ
看護師国家試験 第109回 午後 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、男性)は、妻( 70 歳)と 2 人暮らし。2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )の治療中で、2 年前から 1 日 2 回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。その後、糖尿病性網膜症( diabetic retinopathy )による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。 外来受診時にAさんの妻から外来看護師に「 2 人で協力してインスリン注射することには慣れてきました。たまには夜に夫とゆっくり和食を食べに行きたいのですが、外出時の注射で気を付けることを教えてほしい」と相談があった。 Aさんと妻への外来看護師の指導内容で適切なのはどれか。
- 1.「お店に着いたらすぐに注射を打ちましょう」
- 2.「インスリンを常温で持ち運ぶことはできません」
- 3.「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
- 4.「普段よりもインスリン量を増やす必要があります」
対話形式の解説
博士
今回は75歳男性Aさんと奥様の事例じゃ。2型糖尿病で混合型インスリンを朝夕2回、自己注射しておる。糖尿病性網膜症で視力障害があり、奥様と協力して実施しておる。
サクラ
奥様から「夜にゆっくり和食を食べに行きたい」と相談があったんですよね。嬉しい相談ですが、外出時のインスリン注射で気を付けることは何かなあ。
博士
選択肢を吟味していこう。まずインスリンを打つタイミングはどうじゃ?
サクラ
混合型インスリンは速効型または超速効型と中間型を混ぜた製剤ですよね。食事の30分前が基本で、超速効型混合型なら食直前です。
博士
その通り。だから「お店に着いたらすぐに」打つのは危険じゃ。配膳まで時間がかかったら低血糖を起こしかねない。
サクラ
選択肢1は不適切ですね。配膳目安時間を確認してから打つのが基本。
博士
選択肢2の「常温で持ち運べない」はどうじゃ?
サクラ
未開封のインスリンは冷蔵保存ですが、開封済みは常温で4週間程度は保管できますよね。直射日光と高温を避ければ持ち歩けます。
博士
正解。夏場は保冷バッグを使うと安心、というのも覚えておこう。選択肢4の「量を増やす」はどうか。
サクラ
外食で食事量が増えるからといって勝手に単位数を変えると、低血糖や高血糖の原因になりますね。医師の指示を守るのが原則。
博士
よろしい。そして残った選択肢3じゃ。お店の人に注射ができる場所を確認する。これが正解になる。
サクラ
落ち着いて清潔な場所で打てるのは、他のお客さんへの配慮にもなるし、衛生面でも大事ですね。
博士
その通り。さらにAさんは視力障害があるから、明るい場所で妻と単位確認しながら打つ必要がある。テーブルで無理に打つよりも個室や多目的トイレ、更衣室を貸してもらうほうが安全じゃ。
サクラ
外食時に持っていくべきものって他にもありますか。
博士
インスリンと注射針のほかに、低血糖時のブドウ糖10g相当やあめ、糖尿病連携手帳、保険証、緊急連絡先。低血糖時の対処を妻とも共有しておくとよい。
サクラ
視力障害がある高齢者のインスリン自己注射支援の工夫ってありますか。
博士
音声付きインスリンペン、プレフィルド製剤、単位表示の見やすい機器、介護者によるダブルチェック、訪問看護との連携など色々ある。Aさんの場合は奥様と協働できるのが大きな強みじゃな。
サクラ
外食は生活の楽しみでもあるから、リスクを理解して安全に楽しめるよう支援するのが大切なんですね。
POINT
混合型インスリンは速効型または超速効型と中間型を混合した製剤で、食事30分前または食直前に注射する必要があります。外食時は配膳時間が読みにくく、早すぎる注射は低血糖の危険を伴うため、料理提供の目安時間を店員に確認し、衛生的で落ち着いて注射できる場所(個室や多目的トイレなど)を事前に確保することが重要です。開封済みインスリンは常温(直射日光と高温を避ける)で携行可能であり、自己判断による単位変更は避け、医師指示を厳守します。Aさんは視力障害があり妻と協働して注射するため、明るく落ち着いた環境の確保はより重要となり、低血糖対策としてブドウ糖携行や対処方法の共有も欠かせません。生活の楽しみを支えながら安全に治療を継続するための具体的指導ができることは、慢性疾患看護の基本姿勢です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、男性)は、妻( 70 歳)と 2 人暮らし。2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )の治療中で、2 年前から 1 日 2 回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。その後、糖尿病性網膜症( diabetic retinopathy )による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。 外来受診時にAさんの妻から外来看護師に「 2 人で協力してインスリン注射することには慣れてきました。たまには夜に夫とゆっくり和食を食べに行きたいのですが、外出時の注射で気を付けることを教えてほしい」と相談があった。 Aさんと妻への外来看護師の指導内容で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 の「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」です。混合型インスリンは速効型(または超速効型)と中間型を一定比率で混合した製剤で、食事30分前を目安に注射する必要があります(製剤により食直前のものもある)。外食時には配膳までの時間が読みにくく、注射後に配膳が大幅に遅れると低血糖を来す恐れがあります。そのため、店員に料理の提供時間を確認したうえで、落ち着いて注射できる清潔な場所(個室・更衣室・多目的トイレ等)を事前に確保しておくことが、安全かつ他の利用客への配慮にもなる大切な準備です。Aさんは視力障害があり妻と協働して注射している点も踏まえ、明るく落ち着いた環境を選ぶ意義は大きいといえます。
選択肢考察
-
× 1. 「お店に着いたらすぐに注射を打ちましょう」
注射から配膳までの時間が長引くと低血糖を起こす危険がある。料理提供の目安時間を確認してから注射するのが正しい。
-
× 2. 「インスリンを常温で持ち運ぶことはできません」
開封済みインスリンは室温(製剤により25〜30℃以下)で4週間程度保管可能。高温・直射日光を避ければ常温で携行できる。
-
○ 3. 「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
衛生と羞恥心、配膳時間への配慮を踏まえて、落ち着いて注射できる場所をあらかじめ確保することは安全管理上適切な助言である。
-
× 4. 「普段よりもインスリン量を増やす必要があります」
外食で食事量が増えたとしても、自己判断で単位数を変更するのは低血糖・高血糖を招く危険がある。医師の指示に従うのが原則。
混合型インスリンの注射タイミングは製剤によって異なる。ノボラピッド®30ミックスなど超速効型+中間型は食直前、ヒューマリン®3/7など速効型+中間型は食事30分前が目安。外食時は低血糖対策としてブドウ糖やあめを携帯し、低血糖時の対処(ブドウ糖10g相当を摂取)を本人・家族で確認しておく。視力障害のある高齢者では、音声付きインスリンペンやプレフィルド製剤、介護者による単位数ダブルチェックが有効。
混合型インスリン使用者が外食する際の指導内容を問う設問。注射のタイミング・保管・場所の配慮を総合的に判断できるかがポイント。
「状況設定問題」の関連記事
-
片麻痺の高齢者が転びそうになった—訪問看護師が真っ先に確かめるのは「健側の力」
片麻痺で杖歩行する高齢者の在宅転倒予防において、最初に評価すべき身体機能を問う問題。健側の筋力が転倒回避の要…
114回
-
食べていない日こそ大切―在宅看取り期の口腔ケアという生命線
在宅で介護負担が大きい高齢夫婦に対し、誤嚥性肺炎予防の視点で「経口摂取がなくても口腔ケアは継続する」ことを家…
114回
-
「排泄だけは自立したい」—自尊心を守る尿失禁ケアの第一歩
自立心の強い在宅高齢者の尿失禁に対し、自立を維持できる行動療法的アプローチを選ぶ問題。本人の希望を尊重した支…
114回
-
在宅看取りという選択を支える―訪問看護師が家族に最初に伝えるべきこと
在宅看取りの意思決定支援において、訪問看護師が最初に提供すべき情報は「家族が安心して在宅看取りを選択できる支…
114回
-
退院3か月後の便秘—薬より先に整えるべきは「食卓」
在宅高齢者の便秘に対する初期対応として、薬剤や浣腸ではなく生活習慣の見直しを優先するという原則を問う問題。
114回