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小さな靴ずれが大きな壊疽に――糖尿病フットケアの基本を家族と共有する

看護師国家試験 第109回 午後 第116問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第116問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、男性)は、妻( 70 歳)と 2 人暮らし。2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )の治療中で、2 年前から 1 日 2 回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。その後、糖尿病性網膜症( diabetic retinopathy )による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。 インスリン治療開始後 3 年、Aさんは妻の付き添いで散歩を取り入れ運動療法にも取り組んでいたが、靴ずれが悪化し右第 5 趾に潰瘍ができた。そこで要介護 1 の認定を受けて訪問看護が週 2 回導入され、フットケアの指導が行われることになった。 訪問看護師が行う妻への指導内容で適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 1.絆創膏は足趾全体を覆うように貼る。
  2. 2.浸出液の臭いの変化に注意する。
  3. 3.泡立てた石けんで足を洗う。
  4. 4.足浴には 42 ℃の湯を使う。
  5. 5.大きいサイズの靴を履く。

対話形式の解説

博士 博士

今日はAさんの続きの事例じゃ。散歩での靴ずれが悪化して右第5趾に潰瘍ができ、要介護1で訪問看護が週2回入るようになった。

アユム アユム

視力障害があるからAさん自身での観察は難しいですよね。だから奥様への指導が重要になると。

博士 博士

その通り。糖尿病患者の足になぜ問題が起きやすいか、整理できるかな。

アユム アユム

高血糖が続くと末梢神経障害が起きて痛みや熱感を感じにくくなり、末梢血管障害で血流が悪くなるので、傷が治りにくく感染もしやすい状態になります。

博士 博士

よく整理できておる。では選択肢を見ていこう。1の絆創膏を足趾全体に貼るのはどうか。

アユム アユム

全体を覆うと蒸れて浸軟してしまうし、絆創膏の範囲が広すぎると別のかぶれも起きそうです。潰瘍部を保護する最小範囲で貼るのが正しいですね。

博士 博士

その通り。2の浸出液の臭いの変化に注意、は重要じゃ。悪臭は何を示唆するかわかるかな。

アユム アユム

嫌気性菌感染や混合感染ですよね。色と臭いをセットで観察するのがフットケアの基本。

博士 博士

うむ。3の泡立てた石けんで洗うのも正解じゃ。擦らず優しく洗い、指間までていねいに、そして水気をしっかり拭くのが大事。

アユム アユム

糖尿病の足は摩擦にも弱いから、タオルも押し当てるように使うんですよね。

博士 博士

その通り。4の42℃の足浴はどうじゃ。

アユム アユム

熱すぎますね。神経障害があると熱さを感じにくいから熱傷のリスクが高い。37〜40℃が適切です。

博士 博士

では5の大きいサイズの靴は?

アユム アユム

大きすぎると足が靴の中で動いて摩擦が起きちゃいます。つま先に1cmくらい余裕があって、足の形に合うものが良いですよね。

博士 博士

正解じゃ。だから正解は2と3の組み合わせ。ところで、糖尿病神経障害のスクリーニングにはどんな検査を使うか知っておるかな。

アユム アユム

モノフィラメントの10g検査、音叉、アキレス腱反射などですよね。末梢血流ならABIや足背動脈の触知。

博士 博士

よく覚えておる。それから生活指導として、深爪・たこの自己処理・湯たんぽや電気毛布による熱傷・はだし歩行は避ける、というのもセットで覚えておこう。

アユム アユム

視力障害があるAさんの場合、奥様と訪問看護師が一緒に観察できる体制を整えるのが大事なんですね。

博士 博士

そうじゃ。家族を巻き込んだ観察体制は在宅療養の生命線じゃ。

POINT

糖尿病患者は末梢神経障害と末梢血管障害により、足の小さな傷が潰瘍・壊疽へと進展しやすい状態です。フットケアの家族指導では、浸出液の色調や臭気の変化を観察して感染徴候を早期把握することと、よく泡立てた石けんで指間まで優しく洗浄し水気をていねいに拭き取ることが二大ポイントとなります。足浴は37〜40℃、絆創膏は患部を保護する最小範囲で、靴はサイズの合ったものを選び、深爪や湯たんぽによる熱傷、はだし歩行は避けます。視力障害のある高齢患者では家族と訪問看護師による観察体制の構築が生命線であり、モノフィラメント検査やABIなどでのスクリーニングも並行して行うことで、潰瘍・切断のリスクを最小化できます。家族に観察の視点を具体的に伝えることは、在宅療養支援の核心的なスキルです。

解答・解説

正解は 2 3 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、男性)は、妻( 70 歳)と 2 人暮らし。2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )の治療中で、2 年前から 1 日 2 回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。その後、糖尿病性網膜症( diabetic retinopathy )による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。 インスリン治療開始後 3 年、Aさんは妻の付き添いで散歩を取り入れ運動療法にも取り組んでいたが、靴ずれが悪化し右第 5 趾に潰瘍ができた。そこで要介護 1 の認定を受けて訪問看護が週 2 回導入され、フットケアの指導が行われることになった。 訪問看護師が行う妻への指導内容で適切なのはどれか。2 つ選べ。

解説:正解は 2 の浸出液の臭いの変化に注意する、と 3 の泡立てた石けんで足を洗う、の2つです。糖尿病患者は末梢神経障害で痛みに気づきにくく、末梢血管障害で創傷治癒が遅延するため、軽微な靴ずれでも容易に潰瘍・壊疽に進展します。感染徴候を早期にキャッチするには、浸出液の色調や臭気の変化(悪臭は嫌気性菌感染を示唆)の観察が極めて重要で、家族にも観察視点を共有します。足の洗浄はよく泡立てた石けんで刺激を与えず、指の間まで丁寧に洗浄し、擦らず水気を拭き取ることが基本です。足浴の温度は37〜40℃、サイズの合った靴の使用、絆創膏は潰瘍部を保護できる適切な大きさで貼付することもセットで押さえておきます。

選択肢考察

  1. × 1.  絆創膏は足趾全体を覆うように貼る。

    足趾全体を覆うと湿潤環境による浸軟や別部位の皮膚トラブルを招く。創部を保護できる最小範囲で貼るのが適切。

  2. 2.  浸出液の臭いの変化に注意する。

    悪臭は嫌気性菌や混合感染のサインであり、早期発見・受診につなげる重要な観察項目。色調の変化と併せて家族も観察できるよう指導する。

  3. 3.  泡立てた石けんで足を洗う。

    よく泡立てた石けんで機械的刺激を最小限にしながら指間までていねいに洗浄し、乾いたタオルで押さえるように水分を拭う。糖尿病フットケアの基本手技。

  4. × 4.  足浴には 42 ℃の湯を使う。

    糖尿病神経障害では熱感を感じにくく熱傷のリスクが高い。足浴は37〜40℃の湯温が適切。

  5. × 5.  大きいサイズの靴を履く。

    大きすぎる靴は足が靴内で滑って摩擦や圧迫が生じ、新たな靴ずれの原因となる。足の形に合い、つま先に1cm程度の余裕があり縫い目の当たらない靴を選ぶ。

糖尿病フットケアの原則は『毎日観察・清潔・保護・適切な靴・専門受診』。神経障害の評価にはモノフィラメント(10g)や音叉、末梢血流評価にはABIや足背動脈触知が用いられる。深爪・たこの自己処理・湯たんぽや電気毛布での熱傷・はだし歩行は避ける。家族を巻き込んだ観察体制の構築が、視力障害のある高齢患者では特に重要となる。

糖尿病フットケアの基本手技と観察ポイントを問う設問。感染徴候の観察と適切な洗浄方法を選べるかがカギ。