患者の選択権を守る『インフォームド・コンセント』の本質
看護師国家試験 第111回 午前 第5問 / 必修問題 / 看護における倫理と法律
国試問題にチャレンジ
患者の選択権の行使を最も促進するのはどれか。
- 1.父権主義
- 2.医師の裁量権
- 3.コンプライアンス
- 4.インフォームド・コンセント
対話形式の解説
博士
今日は医療倫理の核となる概念、インフォームド・コンセントを掘り下げよう。日本語ではどう訳されることが多いかな?
サクラ
『説明と同意』と習いました。
博士
その通り。医療者が十分な説明を行い、患者が理解・納得して同意するプロセスを指す。正解はもちろん選択肢4だ。
サクラ
なぜ選択権を最も促進するといえるのでしょうか?
博士
患者が病状や複数の治療選択肢、リスク・ベネフィットを理解して初めて『自分で選ぶ』ことが可能になるからだ。情報なくして選択なし、ということだね。
サクラ
他の選択肢はそれぞれどういう意味ですか?
博士
父権主義はパターナリズム。父親が子を思うように、強者が弱者の利益を代弁して本人の意思を問わず決めてしまう考え方だ。
サクラ
医師が良かれと思って決めるイメージですね。
博士
そう。1970年代までは医療の主流だったが、現代は患者の自律を尊重する方向に転換している。
サクラ
医師の裁量権は?
博士
医師が医学的判断で治療を選ぶ権利だ。完全否定されるものではないが、選択権の主体は医師であり患者ではない。
サクラ
コンプライアンスはどうでしょう?
博士
医療における意味合いは『患者が医療者の指示を守る』こと。受動的で、患者が主体的に選ぶイメージとは対極にある。
サクラ
最近はアドヒアランスという言葉を聞きます。
博士
よく知っているね。アドヒアランスは患者が治療方針に納得して主体的に参加する概念で、コンプライアンスに代わる新しい考え方だ。
サクラ
ICを実施するとき、看護師はどんな役割を担いますか?
博士
医師の説明に同席し、患者の表情や理解度を確認する。不明点があれば補足説明を行い、必要なら医師に再説明を依頼する橋渡し役だ。
サクラ
患者の意思決定支援ですね。リスボン宣言との関係もあるんですか?
博士
1981年の世界医師会リスボン宣言が患者の権利を国際的に宣言し、ICの基盤となった。日本でも1997年の医療法改正で説明・理解の努力義務が明記されたよ。
サクラ
関連概念として他にもSDMやACPがありますよね。
博士
いい視点だ。シェアード・ディシジョン・メイキングは医療者と患者の協働的意思決定、ACPは人生の最終段階に向けた事前話し合い。いずれもIC理念の発展形だね。
POINT
インフォームド・コンセントは医療者の十分な説明のもと、患者が理解・納得して医療を選択・同意するプロセスで、患者の選択権の行使を最も促進する概念です。父権主義や医師の裁量権・コンプライアンスは医療者側主導の考え方であり対照的です。看護師はICにおける患者理解の確認と意思決定支援を担い、SDMやACPなどの発展概念も合わせて押さえましょう。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:患者の選択権の行使を最も促進するのはどれか。
解説:正解は 4 です。インフォームド・コンセント(informed consent;IC)とは、医療者が患者・家族に対し、病状・検査・治療・予後・代替案・予想される合併症などについて十分に説明し、患者がそれを理解・納得したうえで自らの意思で同意する一連のプロセスを指します。『知る権利』『自己決定権』『自律尊重原則』に基づいており、患者が複数の選択肢の中から自分に合った医療を選ぶ『選択権の行使』を最も促進する概念です。1981年のリスボン宣言で明文化され、日本では1997年の医療法改正で医療者の説明と理解の努力義務が規定されました。看護師はICの場に同席し、患者の理解度を確認・補足説明し、意思決定を支援する役割を担います。
選択肢考察
-
× 1. 父権主義
父権主義(パターナリズム)は強い立場の者が弱い立場の者の利益のためと称して本人の意思を問わずに介入する考え方で、選択権の行使を抑制します。
-
× 2. 医師の裁量権
医師の裁量権は医師が医学的判断に基づき治療を決定する権利で、患者の選択よりも医師の判断が優先されるため、選択権の促進にはつながりません。
-
× 3. コンプライアンス
医療でのコンプライアンスは患者が医療者の指示に従うことを意味し、選択権を行使するというより医療者に従属する関係を表します。
-
○ 4. インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントは患者が十分な情報提供を受けて自らの意思で医療を選択する権利を保障する概念であり、選択権の行使を最も促進します。
関連概念としてインフォームド・アセント(小児の発達に応じた同意)、インフォームド・チョイス(複数選択肢からの選択)、シェアード・ディシジョン・メイキング(協働的意思決定)、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)があります。最近はコンプライアンスに代わりアドヒアランス(患者主体的参加)が重視されます。
患者の『選択権』を保障する中核的概念がインフォームド・コンセントであることを理解しているかを問う、医療倫理の基本問題です。
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