筋収縮のメカニズムを正しく理解する
看護師国家試験 第105回 午前 第25問 / 必修問題 / 人体の構造と機能
国試問題にチャレンジ
筋収縮で正しいのはどれか。
- 1.筋収縮はミオシンの短縮である。
- 2.アクチンにATP分解酵素が存在する。
- 3.α運動ニューロンは筋紡錘を興奮させる。
- 4.筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。
対話形式の解説
博士
今日は筋肉がどうやって縮むのか、分子レベルで追ってみよう。
サクラ
アクチンとミオシンという言葉は聞きますが、正しく説明するのが苦手です。
博士
基本は滑走説。アクチンフィラメントとミオシンフィラメントがお互いに滑り込むことで、サルコメアが短くなり筋肉が収縮する。フィラメント自体が縮むわけではない点に注意しよう。
サクラ
選択肢1の「ミオシンの短縮」は誤りというわけですね。
博士
その通り。次にATP分解酵素、ATPaseの存在場所。これはミオシン頭部にある。ミオシンはATPをADPとリン酸に加水分解し、そのエネルギーで首振り運動をしてアクチンを引き寄せる。
サクラ
選択肢2のアクチンではなくミオシンなのですね。
博士
そう。そしてα運動ニューロンは通常の骨格筋線維、つまり錘外筋を支配して収縮させる。筋紡錘の中にある錘内筋を支配して感度を調節するのはγ運動ニューロンだ。
サクラ
αとγで役割が違うのですね。選択肢3も誤りですね。
博士
残る選択肢4、筋小胞体からカルシウムイオンが放出される、これが正解だ。運動神経から活動電位が伝わると、T管を通じて筋小胞体のリアノジン受容体が開き、Ca2+が細胞質に飛び出す。
サクラ
そのCa2+はどこに結合するのですか?
博士
アクチン上のトロポニンCに結合する。するとトロポミオシンの位置がずれ、ミオシン結合部位が露出してミオシン頭部がアクチンに結合できるようになる。
サクラ
収縮が始まった後はどうなるのでしょう?
博士
ATPが結合するとミオシン頭部はアクチンから離れ、再びADP+Pi状態で首振りして次の結合部位に移る。これを繰り返してサルコメアが短くなるんだ。
サクラ
筋肉を緩めるときは?
博士
Ca2+がSERCAというATP駆動ポンプで筋小胞体に再取り込みされ、トロポニンから離れることでトロポミオシンが元の位置に戻る。結果、ミオシンはアクチンから外れ筋肉は弛緩する。
サクラ
ATPは収縮にも弛緩にも必要なのですね。
博士
その通り。だから死後硬直ではATPが枯渇して筋が硬く保たれる。生命現象の裏にもATPありだよ。
サクラ
臨床で関連する疾患はありますか?
博士
悪性高熱症はリアノジン受容体の異常でCa2+が暴走し、高熱と筋硬直を来す。全身麻酔で発症することがあり、ダントロレンで治療するんだ。
サクラ
機序の理解が疾患にもつながるのですね。
博士
そう。興奮収縮連関を一本の流れで押さえれば、多くの応用問題にも対応できるよ。
POINT
骨格筋の収縮は、運動神経からの刺激で筋線維に活動電位が生じ、T管を介して筋小胞体からCa2+が放出されることで始まります。Ca2+はトロポニンCに結合してトロポミオシンを動かし、ミオシン頭部がアクチンに結合して滑り込むことでサルコメアが短縮します。ATPaseはミオシン頭部に存在し、α運動ニューロンは錘外筋を支配します。興奮収縮連関の流れを一貫して理解することが臨床応用の基盤となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:筋収縮で正しいのはどれか。
解説:正解は4です。骨格筋の収縮は、神経終末から放出されたアセチルコリンが終板に作用して筋線維に活動電位を生じさせ、この電気信号が横行小管(T管)を伝わって筋小胞体(サルコプラズマ細網)からカルシウムイオン(Ca2+)を細胞質内へ放出することで開始されます。Ca2+がアクチン上のトロポニンCに結合するとトロポミオシンの位置が変わり、ミオシン頭部がアクチンに結合して滑り込み(滑走説)、筋収縮が生じます。
選択肢考察
-
× 1. 筋収縮はミオシンの短縮である。
滑走説ではアクチン・ミオシンともにフィラメント自体は短縮せず、両者が互いに滑り込むことでサルコメアが短縮します。
-
× 2. アクチンにATP分解酵素が存在する。
ATPaseはミオシン頭部に存在し、ATPを加水分解してその化学エネルギーをアクチンへの滑り込み運動に変換します。
-
× 3. α運動ニューロンは筋紡錘を興奮させる。
α運動ニューロンは錘外筋線維(通常の骨格筋線維)を支配し収縮を起こします。筋紡錘内の錘内筋線維を支配しその感度を調節するのはγ運動ニューロンです。
-
○ 4. 筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。
活動電位がT管を介して伝わると筋小胞体からCa2+が細胞質へ放出され、トロポニンに結合して滑走を開始させます。
骨格筋の興奮収縮連関は、運動神経終末→アセチルコリン放出→終板電位→活動電位発生→T管伝導→ジヒドロピリジン受容体と連携するリアノジン受容体開口→筋小胞体からのCa2+放出→トロポニンC結合→トロポミオシン移動→アクチン・ミオシン結合→ATP加水分解による滑走、という流れで進みます。収縮終了時はCa2+がATP駆動ポンプ(SERCA)で筋小胞体に再取り込みされ弛緩します。悪性高熱症ではリアノジン受容体異常でCa2+が過剰放出され高体温と筋硬直を起こします。
骨格筋の興奮収縮連関におけるCa2+放出の役割と、アクチン・ミオシン・運動ニューロンに関する基本的な知識を問う問題です。
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