胆汁は酵素じゃない 脂肪を乳化する縁の下の力持ち
看護師国家試験 第114回 午後 第12問 / 必修問題 / 人体の構造と機能
国試問題にチャレンジ
胆汁の作用はどれか。
- 1.脂肪の乳化
- 2.蛋白質の分解
- 3.胃酸分泌の促進
- 4.炭水化物の分解
対話形式の解説
博士
今日は胆汁の働きについて学ぶぞ。胆汁ってどこで作られるか知っておるか?
アユム
肝臓ですよね。胆嚢で作られると思っていた時期もありましたが…。
博士
よくある誤解じゃな。作られるのは肝臓、貯めて濃縮するのが胆嚢、これが正しい。胆嚢は胆汁を5〜10倍に濃縮する貯蔵庫なのじゃ。
アユム
どんなときに胆嚢から胆汁が出るんですか?
博士
脂肪を含む食事が十二指腸に入ると、十二指腸の粘膜からコレシストキニン(CCK)というホルモンが分泌される。これが胆嚢を収縮させ、オッディ括約筋を弛緩させて胆汁を十二指腸に流すのじゃ。
アユム
なるほど。それで胆汁は何をするんですか?酵素として脂肪を分解するんでしょうか?
博士
ここがよく間違うところじゃ。胆汁には消化酵素は含まれておらん。胆汁が行うのは「乳化」じゃ。
アユム
乳化って、料理でマヨネーズを作るときに油と酢を混ぜるあれですか?
博士
まさにその通り!胆汁酸は分子の片方が水になじみ、もう片方が油になじむ「両親媒性」をもっておる。これで大きな油滴を小さな粒に分散させるのじゃ。
アユム
じゃあ実際に脂肪を分解するのは何なんですか?
博士
それは膵液に含まれるリパーゼじゃ。乳化されて表面積が広がった脂肪粒子に、リパーゼが働きやすくなる。胆汁とリパーゼはタッグを組んでいるのじゃ。
アユム
他の選択肢の蛋白質や炭水化物はどうですか?
博士
蛋白質は胃のペプシンと膵液のトリプシンなど、炭水化物は唾液と膵液のアミラーゼがそれぞれ担当しておる。胆汁はノータッチじゃ。
アユム
胃酸の分泌はどうコントロールされているんですか?
博士
ガストリンというホルモンや迷走神経刺激じゃな。胆汁は十二指腸で働くから、胃酸の調節とも無関係じゃ。
アユム
胆汁にはビリルビンも含まれてますよね?
博士
鋭いのう。古くなった赤血球が壊れてできるヘモグロビン由来の老廃物がビリルビンで、胆汁を介して便に排泄される。便が茶色いのはビリルビン由来の色なのじゃ。
アユム
だから胆道が詰まると便が白くなるって聞いたことがあります。
博士
その通り、灰白色便と黄疸はセットで覚えておくと臨床で役立つぞ。
POINT
胆汁は肝臓で1日約500〜1000mL作られ胆嚢で濃縮された後、脂肪を含む食物が十二指腸に入るとコレシストキニンの刺激で排出される消化補助液です。胆汁酸塩は両親媒性の構造をもち、大きな脂肪滴を細かなミセルに分散させる「乳化作用」によって膵リパーゼによる脂肪分解を効率化します。胆汁自体に消化酵素は含まれず、蛋白質や糖質の分解には関与しないこと、ビリルビン排泄や腸肝循環など消化以外の重要な役割を担うことが学習のポイントです。看護師は胆道疾患患者で見られる黄疸・灰白色便・脂肪便などの症状を、こうした生理機能の理解とつなげてアセスメントする必要があります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:胆汁の作用はどれか。
解説:正解は 1 の脂肪の乳化です。胆汁は肝臓で1日約500〜1000mL産生され、胆嚢で濃縮・貯蔵された後、食物(特に脂肪)が十二指腸に到達するとコレシストキニンの作用で胆嚢が収縮し、総胆管を経てファーター乳頭から十二指腸へ排出されます。胆汁中の胆汁酸塩は水に溶けやすい部分と脂質に親和性のある部分の両方をもつ両親媒性の物質で、大きな脂肪滴を細かい微粒子に分散させる「乳化作用」をもちます。乳化により脂肪と消化酵素(膵リパーゼ)の接触面積が拡大し、消化吸収が効率よく進みます。胆汁自体には消化酵素は含まれていない点に注意が必要です。
選択肢考察
-
○ 1. 脂肪の乳化
胆汁酸塩がもつ界面活性作用により、大きな脂肪粒子を微細なミセルに分散させる。これによって膵リパーゼによる脂肪分解が促進される。
-
× 2. 蛋白質の分解
蛋白質はまず胃液中のペプシン、続いて膵液中のトリプシン・キモトリプシンなどの蛋白分解酵素により分解される。胆汁は蛋白質の分解には関与しない。
-
× 3. 胃酸分泌の促進
胃酸分泌は胃幽門部のG細胞から分泌されるガストリン、迷走神経刺激、ヒスタミンなどによって促進される。胆汁は十二指腸で作用する物質であり、胃酸分泌の制御は行わない。
-
× 4. 炭水化物の分解
炭水化物は唾液および膵液に含まれるアミラーゼによってデキストリンや麦芽糖まで分解され、最終的に小腸刷子縁の二糖類分解酵素によって単糖となる。胆汁は炭水化物の分解には関与しない。
胆汁の主成分は胆汁酸(コール酸・ケノデオキシコール酸など)、ビリルビン、コレステロール、リン脂質である。胆汁酸は小腸末端の回腸で約95%が再吸収され門脈を経て肝臓に戻る「腸肝循環」を行う。ビリルビンは赤血球が破壊されて生じるヘモグロビン由来の代謝物で、胆汁を介して便中に排泄される。便の褐色は胆汁色素由来であり、胆道閉塞では灰白色便(無胆汁便)と黄疸が同時に出現することを臨床所見として押さえておくとよい。
胆汁の機能を正確に理解する問題。胆汁は消化酵素を含まないが、脂肪を乳化することで脂肪消化を補助するという点が核心。
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