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胎児循環の秘密、なぜ静脈に一番酸素が多いのか

看護師国家試験 第114回 午前 第7問 / 必修問題 / 人体の構造と機能

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第7問

胎児循環で酸素を最も多く含む血液が流れているのはどれか。

  1. 1.臍静脈
  2. 2.臍動脈
  3. 3.肺静脈
  4. 4.肺動脈

対話形式の解説

博士 博士

今回は胎児循環じゃ。解剖生理の中でも特に難しいテーマで、成人の循環とは逆転する部分があるから、しっかり整理するぞ。

サクラ サクラ

胎児は自分では呼吸していないから、お母さんから酸素をもらうんですよね?

博士 博士

その通り。胎児は肺呼吸も消化管での吸収もしておらぬ。胎盤でガス交換と栄養摂取が行われ、その血液を胎児に運ぶのが臍帯じゃ。

サクラ サクラ

臍帯の中には血管が何本あるんですか?

博士 博士

臍静脈が1本(太い)、臍動脈が2本(細い)、合計3本じゃ。覚え方は『1V2A』(1 vein 2 arteries)じゃな。

サクラ サクラ

臍静脈は胎盤から胎児へ、臍動脈は胎児から胎盤へ…でしたっけ?

博士 博士

完璧じゃ。つまり酸素豊富な血液(動脈血相当)が臍『静脈』を流れ、老廃物を含む低酸素血液(静脈血相当)が臍『動脈』を流れる。ここが成人と逆転するポイントじゃ。

サクラ サクラ

動脈・静脈の名前って、酸素の有無じゃなくて心臓からの方向で決まるんでしたね。

博士 博士

その通り。解剖学的には『心臓から出る血管=動脈、戻る血管=静脈』で分類する。だから中身が低酸素でも動脈と呼び、高酸素でも静脈と呼ぶ場合がある。

サクラ サクラ

ということは、問題の『最も酸素を多く含む血液』は臍静脈ですね。

博士 博士

うむ、それが正解じゃ。胎児循環で最も酸素飽和度が高いのは臍静脈。ここに胎盤からの新鮮な血液が流れ込む。

サクラ サクラ

臍静脈から先はどう流れるんですか?

博士 博士

臍静脈は肝臓に入るが、多くは静脈管(アランチウス管)を通って下大静脈へショートカット。そこから右心房に入り、卵円孔を経て左心房→左心室→大動脈→脳・心臓 へと、酸素を最優先で脳へ送る構造になっておる。

サクラ サクラ

卵円孔というのは、心房中隔にある穴ですね。

博士 博士

そう。胎児特有のシャントで、出生後に肺呼吸が始まると機能的に閉じる。もう一つ重要なのが動脈管(ボタロー管)で、肺動脈と大動脈をつなぐバイパスじゃ。

サクラ サクラ

3つもシャントがあるんですね。

博士 博士

①静脈管、②卵円孔、③動脈管。この3つが胎児循環の基本セットで、出生後にすべて閉鎖することで成人型循環に切り替わる。

サクラ サクラ

閉鎖が遅れると病気になるんですか?

博士 博士

うむ、動脈管開存症(PDA)、卵円孔開存(PFO)などの先天性心疾患になる。特に早産児ではPDAが多いぞ。

サクラ サクラ

出生後にこれらが閉じるきっかけは?

博士 博士

第一呼吸で肺胞が膨らみ肺血管抵抗が急低下する。これにより肺への血流が増え、動脈管の血流方向が変化し、血中酸素分圧の上昇でプロスタグランジン濃度が下がり動脈管が収縮していく。左房圧が上昇して卵円孔も閉じる、という連鎖じゃ。

サクラ サクラ

出産の瞬間に循環が劇的に切り替わるんですね。すごい…

博士 博士

そう、新生児看護では『呼吸循環の移行期』と呼ばれる重要な時期じゃ。呼吸・皮膚色・心音をよく観察することが看護師の基本じゃよ。

POINT

胎児循環で最も酸素を多く含む血液が流れているのは臍静脈で、胎盤で酸素化された血液を胎児へ運ぶ1本の太い血管です。胎児は肺呼吸をしておらず、ガス交換は胎盤で行われるため、『静脈だが動脈血相当』『動脈だが静脈血相当』という成人と逆転する構造を持ちます。胎児循環には静脈管・卵円孔・動脈管という3つのシャントがあり、肺循環を最小化して脳・心臓に優先的に酸素を届ける仕組みになっています。出生後、肺呼吸開始とともに肺血管抵抗が低下し、これらのシャントは機能的に閉鎖して成人型循環へ移行します。新生児看護では呼吸循環の移行期を安全に見守ることが重要で、先天性心疾患(PDA、PFOなど)の理解にも胎児循環の知識が不可欠です。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:胎児循環で酸素を最も多く含む血液が流れているのはどれか。

解説:正解は 1 の「臍静脈」です。胎児は肺呼吸をしていないため、ガス交換と栄養摂取は胎盤を介して母体から行われます。胎盤で酸素化された血液は、臍帯内を通る1本の太い臍静脈から胎児に運ばれるため、臍静脈には胎児循環の中で最も酸素飽和度の高い(動脈血に相当する)血液が流れています。その血液は一部が静脈管(アランチウス管)を経て下大静脈へ合流し、右心房から卵円孔を通って左心房へ、左心室→大動脈と流れて主に上半身(脳・心臓)に供給されます。使用後の低酸素血液は2本の臍動脈を通って胎盤に戻るという逆方向の構造が、胎児循環の大きな特徴です。

選択肢考察

  1. 1.  臍静脈

    胎盤から胎児へ酸素と栄養を運ぶ1本の太い血管。胎児循環の中で最も酸素飽和度が高い血液(動脈血相当)が流れる。『静脈』の名は心臓へ向かう血管という解剖学的定義によるもので、内容物は酸素豊富な血液である点が特徴的。

  2. × 2.  臍動脈

    胎児から胎盤へ老廃物と二酸化炭素を運ぶ2本の血管で、静脈血相当(低酸素血)が流れる。心臓から出ていく『動脈』だが酸素は少ない。

  3. × 3.  肺静脈

    胎児は肺呼吸をしていないため肺循環の血流量は少なく、肺静脈を流れる血液量もごくわずか。酸素飽和度は臍静脈より低い。

  4. × 4.  肺動脈

    右心室から肺動脈へ向かう血液の多くは動脈管(ボタロー管)を経て大動脈へ短絡するため、肺動脈へ残る血流は少なく、また静脈血(低酸素血)である。

胎児循環には3つの特徴的なシャント(短絡路)がある。①静脈管(アランチウス管):臍静脈→下大静脈へのバイパスで、肝臓を一部スキップする。②卵円孔:右心房→左心房への孔で、酸素飽和度の高い血液を左心系(全身)へ優先的に送る。③動脈管(ボタロー管):肺動脈→大動脈への短絡で、肺循環をスキップする。出生後、肺呼吸開始により肺血管抵抗が低下し、卵円孔は機能的に閉鎖(解剖学的閉鎖は生後数ヵ月〜1年)、動脈管は生後数時間〜数日で閉鎖する。閉鎖が遷延すると動脈管開存症(PDA)や卵円孔開存(PFO)となる。『静脈血が流れる動脈』『動脈血が流れる静脈』という、成人と逆転した構造を押さえるのが国試攻略の鍵。

胎児循環における血液の酸素濃度の分布を問う問題。『臍静脈=動脈血相当・臍動脈=静脈血相当』という成人と逆転する関係を理解する。