前立腺肥大でなぜトイレが近くなる?残尿が招く頻尿の正体
看護師国家試験 第114回 午前 第16問 / 必修問題 / 徴候と疾患
国試問題にチャレンジ
前立腺肥大症(prostatic hyperplasia)患者の頻尿の原因はどれか。
- 1.多尿
- 2.残尿量の増加
- 3.膀胱刺激症状
- 4.器質的膀胱容量の減少
対話形式の解説
博士
今日は前立腺肥大症のメカニズムじゃ。「肥大しているのにどうして頻尿になるのか?」を考えてみよう。
アユム
なんとなく不思議ですよね。詰まっているなら出にくいだけじゃないの?って思います。
博士
そう、まさにその「出にくい」ことが頻尿の引き金なのじゃ。前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲む臓器じゃろう?
アユム
はい、栗の実くらいの大きさでしたっけ。
博士
通常はそうじゃ。加齢で肥大すると尿道を圧迫して、尿の出口が狭くなる。すると一度の排尿で膀胱を空にできず、残尿が溜まるのじゃ。
アユム
残尿が溜まると、なんで頻尿になるんですか?
博士
ここが大事じゃ。膀胱の容量が例えば400mLだとして、残尿が200mL溜まっていたら、新しく貯められるのは差し引き200mLだけじゃろう?
アユム
あっ、機能的に貯められる量が半分になるってことですね。
博士
その通り!この「実際に使える容量」を有効膀胱容量と呼ぶ。残尿が増えると有効膀胱容量が減り、少しの尿でも尿意を感じてトイレに行く回数が増える。これが前立腺肥大症の頻尿の正体じゃ。
アユム
選択肢4の「器質的膀胱容量の減少」とは違うんですか?
博士
違うのじゃ。器質的容量=膀胱そのものの解剖学的な大きさ。前立腺肥大症では膀胱は変わらない。減るのは機能的容量。区別が大事じゃ。
アユム
多尿は何が違うんですか?
博士
多尿は1日の尿の総量が増えること(>3,000mL/日)で、糖尿病や尿崩症が代表。前立腺肥大症では1日尿量自体は変わらず、回数だけ増えるパターンが多いのじゃ。
アユム
膀胱刺激症状って書いてある選択肢もありましたが…。
博士
それは膀胱炎などで膀胱そのものが刺激されて起こる症状の総称。前立腺肥大症の患者は過活動膀胱を併発することもあるが、頻尿の直接的なメカニズムとしては残尿の方が本質的じゃ。
アユム
治療法も気になります。
博士
α1遮断薬(タムスロシンなど)で尿道平滑筋を緩めるか、5α還元酵素阻害薬で前立腺自体を縮小させる。重症ではTURP(経尿道的前立腺切除術)という内視鏡手術が標準じゃな。
アユム
看護師として観察すべきポイントは?
博士
排尿日誌で頻度・1回尿量・残尿感を把握し、エコーで残尿量を測定する。突然尿が出なくなる尿閉の徴候(下腹部緊満・苦痛)を見逃さないことも重要じゃよ。
POINT
前立腺肥大症は加齢に伴い前立腺が肥大して尿道を圧迫することで起こる男性特有の疾患で、頻尿の本質的な原因は残尿量の増加です。1回の排尿で膀胱を空にできず残尿が溜まると、機能的な有効膀胱容量が減り、少量の尿でも尿意を感じやすくなります。多尿(尿量増加)や器質的膀胱容量の減少(膀胱自体の縮小)とは病態が異なる点が重要なポイントです。治療はα1遮断薬・5α還元酵素阻害薬・経尿道的前立腺切除術(TURP)が中心で、看護師は排尿日誌や残尿測定で症状の経過を把握し、尿閉や尿路感染症の合併を早期発見する役割を担います。「出にくいから頻尿になる」という逆説的な病態生理を理解することが、男性高齢者の排尿障害ケアの基礎となります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:前立腺肥大症(prostatic hyperplasia)患者の頻尿の原因はどれか。
解説:正解は 2 の残尿量の増加です。前立腺は膀胱頸部で尿道を取り囲む男性臓器で、加齢に伴い肥大すると尿道を圧迫して下部尿路閉塞をきたします。十分に膀胱内の尿を排出できないため残尿量が増加し、その分、機能的に膀胱に貯められる尿量(有効膀胱容量)が減少します。結果として少量の尿でも尿意を感じやすくなり、排尿回数が増える=頻尿となります。
選択肢考察
-
× 1. 多尿
多尿は1日尿量が3,000mL以上を指し、糖尿病・尿崩症・利尿薬投与などが原因。前立腺肥大症の頻尿の主因ではない。
-
○ 2. 残尿量の増加
肥大した前立腺による尿道圧迫で1回排尿で出しきれず残尿が増加し、有効膀胱容量が減って頻尿となる。
-
× 3. 膀胱刺激症状
膀胱刺激症状は膀胱炎などに伴う排尿時痛・尿意切迫・頻尿の総称。前立腺肥大症に併発する過活動膀胱でみられるが、前立腺肥大症による頻尿の直接的な原因ではない。
-
× 4. 器質的膀胱容量の減少
膀胱壁の線維化や腫瘍などで膀胱そのものの容量が減る病態。前立腺肥大症では膀胱の解剖学的容量は保たれており、減るのは「機能的容量(容量−残尿)」である。
前立腺肥大症の症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)で評価される。蓄尿症状(頻尿・夜間頻尿・尿意切迫感)と排尿症状(尿勢低下・尿線途絶・排尿開始遅延)、排尿後症状(残尿感)に大別され、進行すると尿閉や水腎症をきたすこともある。治療はα1遮断薬(タムスロシンなど)で尿道平滑筋を弛緩させ排尿をスムーズにする方法と、5α還元酵素阻害薬(デュタステリドなど)で前立腺自体を縮小させる方法、外科的にはTURP(経尿道的前立腺切除術)が標準。看護師は排尿日誌の記録支援や残尿測定(エコー)、尿閉の早期発見が役割となる。
前立腺肥大症で頻尿が起こるメカニズムを「残尿増加→有効膀胱容量減少」という病態生理から理解できているかを問う問題。
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