針刺し事故を防ぐ基本対策
看護師国家試験 第105回 午前 第39問 / 基礎看護学 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
針刺し事故対策で最も適切なのはどれか。
- 1.針刺し部位を消毒液に浸す。
- 2.注射針のリキャップを習慣化する。
- 3.事故の当事者を対象にした研修を行う。
- 4.使用済みの針は専用容器に廃棄することを徹底する。
対話形式の解説
博士
今日は針刺し事故対策じゃ。医療従事者の職業性リスクとして非常に重要なテーマじゃぞ。
サクラ
針刺し事故でどんな感染症のリスクがありますか。
博士
B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVの3つが代表的じゃ。特にHBVは感染力が強く、HBs抗原陽性者からの針刺しでは感染率が高い。
サクラ
選択肢1の消毒液に浸すは適切でしょうか。
博士
これは誤りじゃ。事故時はまず流水と石けんで十分に洗い流す。消毒液への浸漬は推奨されていないし、傷を強く絞り出す行為も効果は証明されていない。
サクラ
選択肢2のリキャップの習慣化は。
博士
これは絶対にダメじゃ。リキャップは針刺し事故の大きな原因で、多くの施設で原則禁止となっておる。やむを得ない場合は片手すくい上げ法を使うのじゃ。
サクラ
片手すくい上げ法とは。
博士
針を持つ手だけを使い、キャップを机上に置いてすくい上げる方法じゃ。もう一方の手を使わないので指を刺すリスクが減る。
サクラ
選択肢3の事故当事者だけの研修は。
博士
誤りじゃ。研修は全医療従事者を対象に定期的に実施すべきじゃ。当事者だけでは予防効果が限定的じゃからな。
サクラ
選択肢4の専用容器への廃棄徹底が正解ですね。
博士
そう、これが正解。耐貫通性の専用廃棄容器に使用後すぐに廃棄することが基本かつ最も確実な予防策じゃ。
サクラ
容器はどこに置くのが良いのですか。
博士
使用場所の近くに設置するのが鉄則。運搬中に刺すリスクを減らすためじゃ。また容器が満杯になる前に交換することも大切じゃぞ。
サクラ
事故が起きてしまった場合の対応を教えてください。
博士
①流水・石けんで洗浄、②直ちに上司・感染管理部門に報告、③感染源患者の検査(HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体など)、④曝露者の検査、⑤必要に応じて予防処置を行う。
サクラ
予防処置とは具体的に。
博士
HBVではHBs抗体が不十分ならHBIGとワクチン接種。HIV曝露ではなるべく早期、できれば2時間以内に抗レトロウイルス薬の予防内服を開始する。HCVには確立された予防薬はなく経過観察となる。
サクラ
事故を起こさない工夫も大事ですね。
博士
安全機構付きの注射針や翼状針を使う、手袋を着用する、作業時には焦らない、廃棄容器をすぐ手の届く場所に置くなどが重要じゃ。
サクラ
正解は4の専用容器への廃棄徹底ですね。
博士
よく理解できた。スタンダードプリコーションの一環として日常的に徹底するのじゃぞ。
POINT
針刺し事故の予防はリキャップ禁止と使用後の針の専用廃棄容器への即時廃棄が基本です。事故発生時は流水と石けんで洗浄し、速やかに報告して感染源検査や予防処置を行います。研修は全職員対象で、安全機構付き器材の導入も有効です。本問の正解は選択肢4で、スタンダードプリコーションの観点から日常的な徹底が重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:針刺し事故対策で最も適切なのはどれか。
解説:正解は4です。針刺し事故(針刺し・切創・皮膚粘膜曝露)はB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどの血液媒介病原体に曝露する可能性があり、医療従事者の重大な職業性リスクです。事故予防の基本は使用後の針をリキャップせず、その場で耐貫通性の専用廃棄容器(感染性廃棄物容器)に廃棄することです。これはスタンダードプリコーションの一環でもあります。
選択肢考察
-
× 1. 針刺し部位を消毒液に浸す。
誤りです。事故発生時は直ちに流水と石けんで十分に洗浄するのが基本です。消毒液への浸漬は推奨されていません。傷を強く絞り出すことも効果が証明されておらず必須ではありません。
-
× 2. 注射針のリキャップを習慣化する。
誤りです。リキャップは針刺し事故の主要原因で、原則禁止とされています。やむを得ず行う場合は片手すくい上げ法(ワンハンドテクニック)を用います。
-
× 3. 事故の当事者を対象にした研修を行う。
誤りです。研修は全医療従事者を対象に定期的に実施するべきで、事故を起こした当事者だけに限定するのは予防策として不十分です。
-
○ 4. 使用済みの針は専用容器に廃棄することを徹底する。
正しい記述です。使用済み針は耐貫通性の専用廃棄容器に即座に廃棄することが、針刺し事故予防の基本かつ最も確実な対策です。容器は使用場所の近くに設置します。
針刺し事故発生時の対応は①流水・石けんで十分に洗浄、②直ちに報告、③感染源の検査(HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体)、④曝露者の検査と予防処置(HBVワクチン未接種者にはHBIGとワクチン、HIV曝露には抗レトロウイルス薬の予防内服)、⑤経過観察という流れです。安全機構付き器材の採用も重要な対策です。
針刺し事故の予防策としてリキャップ禁止と専用容器への廃棄という基本原則を理解しているかを問う問題です。
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