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与薬手技の基本を総ざらい 点眼は下眼瞼結膜の中央に

看護師国家試験 第112回 午後 第41問 / 基礎看護学 / 診療に伴う看護技術

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第41問

成人への与薬方法で正しいのはどれか。

  1. 1.筋肉内注射は大殿筋に行う。
  2. 2.坐薬は肛門から1cm挿入する。
  3. 3.バッカル錠は、かんでから飲み込む。
  4. 4.点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は成人への与薬方法じゃ。投与経路ごとに手技の基本があるから、解剖や薬物動態と結びつけて理解するのじゃ。

サクラ サクラ

筋注って大殿筋じゃダメなんですか?大きい筋肉だから安全そうですけど。

博士 博士

逆じゃ。大殿筋は坐骨神経や上殿動脈が走行しており、損傷のリスクがある。成人の殿部筋注は中殿筋を用いる。クラーク点(上前腸骨棘と大転子を結ぶ線の前方1/3)が代表的な穿刺部位じゃ。

サクラ サクラ

他に筋注に使える部位はありますか?

博士 博士

上腕の三角筋、大腿の外側広筋じゃ。ワクチン接種では三角筋、乳幼児では大腿外側広筋が標準になる。

サクラ サクラ

坐薬は1cm挿入では浅すぎるんですね。

博士 博士

成人で3〜5cm、示指の第二関節程度の深さまで挿入する。内肛門括約筋を越えないと排出されてしまうからじゃ。

サクラ サクラ

なぜ坐薬は肝臓を通らないんですか?

博士 博士

直腸下部の静脈血は下大静脈に直接流入するため、初回通過効果(肝代謝)を受けにくい。そのため坐薬は経口投与より効果が早く強く出ることがあるのじゃ。

サクラ サクラ

バッカル錠と舌下錠の違いは?

博士 博士

バッカル錠は臼歯と頬粘膜の間に、舌下錠は舌下に置く。どちらも口腔粘膜から直接吸収されるため、咀嚼・嚥下してはならん。ニトログリセリン舌下錠が代表例じゃな。

サクラ サクラ

噛んでしまうと効果がなくなるんですか?

博士 博士

消化管に入ると肝臓で代謝されてしまい、初回通過効果で有効成分が激減する。狭心症発作時に舌下錠を噛んでしまったら効かないのじゃ。

サクラ サクラ

点眼薬は下眼瞼結膜の中央が正しいんですよね。

博士 博士

うむ。下眼瞼を軽く引いて結膜嚢を露出させ、1滴滴下する。容器の先端が睫毛や結膜に触れないよう注意するのじゃ。

サクラ サクラ

点眼後のケアはどうしますか?

博士 博士

静かに閉眼して涙嚢部を1〜2分軽く押さえる。これにより鼻涙管への流出を防ぎ、全身吸収を減らして局所効果を高められる。

サクラ サクラ

複数の点眼薬を使う場合の注意は?

博士 博士

5分以上の間隔をあける。連続して使うと先の薬剤を洗い流してしまう。また、水性→懸濁性→眼軟膏の順で使うのが原則じゃ。

サクラ サクラ

与薬は単純そうで奥が深いですね。根拠を知ると手技の意味がわかります。

博士 博士

その通り。「なぜこの部位か」「なぜこの方法か」を問い続けることで、応用力が身につくぞ。

POINT

成人の与薬手技では、筋肉内注射は中殿筋・三角筋・外側広筋を用い大殿筋は避ける、坐薬は3〜5cm(示指第二関節程度)挿入して内肛門括約筋を越えさせる、バッカル錠・舌下錠は咀嚼・嚥下せず口腔粘膜からの吸収を利用する、点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下し涙嚢部を圧迫して全身吸収を抑える、が基本です。これらの手技はすべて解剖学的構造と薬物動態(初回通過効果の回避、神経・血管損傷の予防など)に基づいています。看護師は6R(right patient, drug, dose, route, time, purpose)を徹底するとともに、各剤形・投与経路の特性を理解し、効果と安全の両立を図ることが与薬業務の中核となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:成人への与薬方法で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。点眼薬は下眼瞼を軽く引き下げて結膜嚢を露出させ、下眼瞼結膜の中央に1滴滴下する。容器の先端が睫毛や結膜に触れないようにし、点眼後は静かに閉眼させ、涙嚢部を1〜2分間圧迫すると全身への吸収を抑え、効果を高められる。

選択肢考察

  1. × 1.  筋肉内注射は大殿筋に行う。

    殿部への筋注は坐骨神経・上殿動脈損傷のリスクがある大殿筋ではなく、中殿筋(クラークの点、ホッホシュテッターの部位)を用いる。上腕では三角筋、大腿では外側広筋が部位として選ばれる。

  2. × 2.  坐薬は肛門から1cm挿入する。

    坐薬は内肛門括約筋を越えるように成人で3〜5cm(示指の第二関節程度)挿入する。1cmでは薬剤が排出されたり吸収が不十分になる。

  3. × 3.  バッカル錠は、かんでから飲み込む。

    バッカル錠は臼歯と頬粘膜の間に挟み、唾液でゆっくり溶かして口腔粘膜から吸収させる製剤。咀嚼・嚥下すると吸収経路が消化管になり、初回通過効果を受け効果が減弱する。

  4. 4.  点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。

    下眼瞼を引いて結膜嚢に1滴滴下するのが正しい手技。容器先端が睫毛に触れないよう注意し、点眼後は閉眼して涙嚢部を軽く圧迫する。

筋肉内注射の部位選択では、成人の殿部には中殿筋(クラーク点:上前腸骨棘と大転子を結ぶ線の前方1/3の部位、またはホッホシュテッター部位)が推奨される。乳幼児は大腿外側(外側広筋)、ワクチン接種では上腕三角筋が標準。坐薬は吸収経路(下大静脈に流入し肝臓を経由しない)により初回通過効果を避けられる利点がある。バッカル錠・舌下錠も同様に口腔粘膜から全身循環へ直接吸収される。複数点眼薬を使う場合は5分以上の間隔をあけて洗い流しを防ぐ。

成人の与薬手技について、注射部位・坐薬挿入長・バッカル錠の使用法・点眼手技の基本を問う問題。それぞれの製剤・手技の根拠となる解剖学的・薬物動態学的理由を理解する。