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気管内吸引を安全に行う5つのキホン

看護師国家試験 第113回 午後 第85問 / 基礎看護学 / 診療に伴う看護技術

国試問題にチャレンジ

113回 午後 第85問

成人の気管内吸引の方法で適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。
  2. 2.吸引圧は−40kPa(300mmHg)に調整する。
  3. 3.気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いる。
  4. 4.カテーテルは気管分岐部にあたらないように挿入する。
  5. 5.カテーテルの挿入開始から終了まで30秒で行う。

対話形式の解説

博士 博士

今日は気管内吸引の手順問題じゃ。侵襲の大きな手技ゆえ、正しい手順を押さえねばならんぞ。

サクラ サクラ

まず選択肢1の『実施前に咽頭部の分泌物を吸引する』は正しいですよね。

博士 博士

そのとおり。カフ上に溜まった分泌物を先に吸わんと、気管側へたれ込みVAPの原因になるんじゃ。

サクラ サクラ

閉鎖式吸引システムやサクションポートを活用する施設も増えていますね。

博士 博士

そうじゃな。次、吸引圧はどれくらいが適切かの?

サクラ サクラ

成人では−20kPaくらい、つまり150mmHg以下が目安と習いました。

博士 博士

正解。ガイドライン2023では200mmHg(−26.6kPa)以下が推奨されておる。選択肢2の−40kPaは高すぎじゃ。

サクラ サクラ

カテーテルの径はどう選ぶのでしょう?

博士 博士

人工気道の内径の1/2以下が原則じゃ。同じ径では閉塞して急激な陰圧がかかり無気肺を起こす。

サクラ サクラ

挿入長はどう決めるのですか?

博士 博士

気管チューブの先端までが基本で、気管分岐部(カリーナ)に当てると咳嗽や出血、迷走神経反射を起こす。

サクラ サクラ

だから選択肢4が正しいのですね。

博士 博士

そのとおり。吸引時間については?

サクラ サクラ

1回15秒以内、陰圧をかけるのは10秒以内と覚えています。

博士 博士

完璧じゃ。30秒も吸い続ければ低酸素と不整脈を招いてしまうからの。

サクラ サクラ

実施中はどんなモニタリングをすればよいですか?

博士 博士

SpO2、HR、呼吸音、患者の表情を観察し、異常があれば即座に中止して100%酸素を投与するんじゃ。

サクラ サクラ

吸引前後のバッグマスクによる換気で酸素予備能を確保するのも大事ですね。

博士 博士

その通りじゃ。安全な吸引は手技の正確さと観察力、そしてチーム連携の賜物じゃ。

POINT

気管内吸引は、先に咽頭部の分泌物を吸引し、気管分岐部に当てない適切な挿入長で、−20〜−26.6kPa以下の吸引圧で15秒以内に行うのが安全基準です。カテーテルは人工気道内径の1/2以下を選び、吸引前後のSpO2・HR・呼吸音観察を徹底します。VAP予防の観点からも上気道の先行吸引は重要です。

解答・解説

正解は 1 4 です

問題文:成人の気管内吸引の方法で適切なのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は1(実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。)と4(カテーテルは気管分岐部にあたらないように挿入する。)です。気管吸引ガイドライン2023に基づき、先に上気道の分泌物を除去し、カテーテルは気管チューブ先端を超えない位置で吸引することで合併症を防ぎます。

選択肢考察

  1. 1.  実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。

    カフ上部や口腔・咽頭の貯留分泌物を先に除去することで、気管内へのたれ込みと気管吸引後の再汚染・VAPリスクを軽減できます。

  2. × 2.  吸引圧は−40kPa(300mmHg)に調整する。

    成人の吸引圧は−20〜−26.6kPa(150〜200mmHg)以下が推奨されます。−40kPaは高すぎて気道粘膜損傷や無気肺を招きます。

  3. × 3.  気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いる。

    カテーテルは人工気道内径の1/2以下が原則です。同径では気道が閉塞し陰圧が強くかかって無気肺・低酸素をきたします。

  4. 4.  カテーテルは気管分岐部にあたらないように挿入する。

    分岐部に当てると粘膜損傷、出血、咳嗽、迷走神経反射を招くため、気管チューブ先端までの長さに留めて挿入します。

  5. × 5.  カテーテルの挿入開始から終了まで30秒で行う。

    1回の吸引は15秒以内が推奨です。陰圧をかけている時間は10秒以内に抑え、低酸素と循環変動を最小限にします。

日本呼吸療法医学会の気管吸引ガイドライン2023では、吸引前の酸素化・鎮静状態の確認、サイドストリーム式など閉鎖式吸引の活用、吸引前後のバイタル観察が推奨されています。人工気道の長さを把握し、挿入長を事前にマーキングしておくと安全です。吸引中に低酸素やHR変動が現れたら速やかに中止し、100%酸素投与を行います。

気管内吸引の安全基準(圧力・時間・カテーテル径・挿入長・上気道の先行吸引)を総合的に理解しているかを問う設問です。