死別直後のグリーフケアーエンゼルケアを共にする意義
看護師国家試験 第106回 午前 第40問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
入院中の妻を亡くした直後の夫へのグリーフケアで最も適切なのはどれか。
- 1.妻の話を夫とすることは避ける。
- 2.夫の悲嘆が軽減してからケアを開始する。
- 3.夫が希望する場合は死後の処置を一緒に行う。
- 4.妻を亡くした夫のためのサポートグループへの参加を促す。
対話形式の解説
博士
今日はグリーフケアを学ぶぞ。死別直後の家族にどう関わるかは、看護師の大切な役割じゃ。
アユム
グリーフケアって、遺族のケアのことですよね?
博士
その通り。グリーフ(grief)は「深い悲しみ・悲嘆」を意味する。大切な人を失った遺族の悲嘆反応を受けとめ、時間をかけて乗り越えていく過程を援助するのがグリーフケアじゃ。
アユム
選択肢1「妻の話は避ける」は、配慮のようにも見えますが…
博士
これは誤り。話を避けると夫は感情を押し込めてしまい、悲嘆の作業(グリーフワーク)が妨げられる。「話したいときは話せる環境」をつくるのが基本じゃ。
アユム
選択肢2「悲嘆が軽減してからケアを開始」は?
博士
これも誤り。グリーフケアは死別前から始まり、死別直後、急性期、数か月後、数年後と継続的に必要。特に直後の関わりがその後の悲嘆プロセスを大きく左右する。
アユム
選択肢3「希望する場合は死後の処置を一緒に行う」が正解なんですね。
博士
そうじゃ。エンゼルケアを共に行うことには深い意味がある。妻の身体に触れ、清拭し、着替えさせ、化粧をする過程で、夫は感謝や別れの言葉を伝え、現実を受け入れ始める。
アユム
無理に勧めないのが大切ですね。
博士
その通り。「よろしければ一緒にされますか?」と選択肢として示すのがよい。強制はダメじゃ。
アユム
選択肢4のサポートグループは?
博士
サポートグループは有効だが、死別直後の混乱期には情報が入りにくい。ある程度悲嘆が整理され、他者と体験を分かち合える段階で紹介するのがよい。直後の最適解ではない。
アユム
悲嘆の段階って、キューブラー・ロスの5段階ですか?
博士
それは有名じゃが、元は患者の死の受容モデル。遺族の悲嘆についてはボウルビィの4段階(無感覚→思慕と探索→混乱と絶望→再建)やウォーデンの4つの課題も知っておくとよい。
アユム
ウォーデンの4つの課題?
博士
①喪失の事実を受け入れる、②悲嘆の苦痛を経験する、③故人のいない環境に適応する、④故人との情緒的絆を残しながら新しい生活を見出す、じゃ。
アユム
「故人との絆を残していい」というのが、心強いですね。
博士
そう。近年は「絆を断ち切る」のではなく「形を変えて続ける」という考えが主流じゃ。
アユム
「複雑性悲嘆」って聞きますが?
博士
6か月以上持続する強烈な悲嘆で、日常生活に支障をきたす状態。自殺念慮、抑うつ、不眠、身体症状などを伴い、専門的介入が必要じゃ。特にリスクが高いのは突然死、事故死、自死、子どもの死、介護の末の死別、サポート不足など。
アユム
看護師としてできる具体的ケアは?
博士
死別前からの信頼関係づくり、臨終時の配慮(プライバシー・時間確保)、エンゼルケアへの家族参加案内、遺族へのねぎらい、お茶や休息場所の提供、傾聴、必要時は遺族外来・カウンセラー紹介、遺族訪問・追悼会などじゃ。
アユム
ねぎらいの一言って大事なんですね。
博士
「よく看病されましたね」「奥様もきっと感謝していらっしゃいますよ」の一言で夫は救われることがある。沈黙に寄り添うことも立派なケアじゃ。
POINT
グリーフケア(悲嘆ケア)は、大切な人を失った遺族の悲嘆プロセスを支える継続的な支援で、死別前から始まり、直後、急性期、長期にわたって必要です。死別直後は夫が希望するなら死後の処置(エンゼルケア)を一緒に行うことが、妻と向き合い別れを受け入れる貴重な機会となり最適なケアです。一方、「妻の話を避ける」「悲嘆軽減を待つ」のは感情表出を妨げ機会を失う不適切対応、サポートグループ紹介は有効だが直後よりも悲嘆が整理された時期に適します。ボウルビィの悲嘆段階やウォーデンの4課題などの理論を背景に、看護師は傾聴・家族参加支援・ねぎらい・必要時の専門資源への橋渡しを通じて遺族の回復を支えます。複雑性悲嘆のリスクを見極め早期に適切な支援へつなぐことも、看護の重要な役割です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:入院中の妻を亡くした直後の夫へのグリーフケアで最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。グリーフケア(悲嘆ケア)とは、大切な人を失った遺族の悲嘆反応(grief)を受けとめ、喪失の悲しみを乗り越えていく過程を援助する支援です。死別直後の夫には、亡くなった妻と向き合い別れを受け入れる時間が必要で、希望があればエンゼルケア(死後の処置)を一緒に行うことは、最後のケアを通じて故人との絆を確認し悲嘆の表出を助ける重要なグリーフケアとなります。
選択肢考察
-
× 1. 妻の話を夫とすることは避ける。
故人の話を避けることは、遺族の感情表出を妨げ悲嘆を抑圧させる。遺族が故人について語りたいときは、傾聴することで悲嘆の作業(グリーフワーク)を支援するのが原則。
-
× 2. 夫の悲嘆が軽減してからケアを開始する。
グリーフケアは死別直後からすでに必要であり、むしろ直後の関わりが今後の悲嘆プロセスを左右する。軽減を待つのは機会損失。
-
○ 3. 夫が希望する場合は死後の処置を一緒に行う。
エンゼルケアを共に行うことで、夫は妻の身体に触れ、感謝や別れの気持ちを伝える貴重な機会を得る。強制はせず、希望に応じて行うことが重要。
-
× 4. 妻を亡くした夫のためのサポートグループへの参加を促す。
サポートグループは有効な支援資源だが、死別直後の強い悲嘆の中では本人の受け入れが難しい場合が多い。ある程度悲嘆が整理された時期の紹介が適切。直後の最適解ではない。
悲嘆のプロセスとしてキューブラー・ロスの5段階(否認・怒り・取引・抑うつ・受容)、ボウルビィの4段階(無感覚・思慕と探索・混乱と絶望・再建)、ウォーデンの4つの課題(喪失の事実を受容する・悲嘆の苦痛を経験する・故人のいない環境に適応する・故人との情緒的つながりを残しつつ新しい生活を見出す)が有名。複雑性悲嘆(6か月以上持続する強烈な悲嘆)では専門的介入が必要。看護師のグリーフケア実践:①死別前からの関係構築、②臨終時の配慮あるケア、③エンゼルケアへの家族参加、④遺族へのねぎらいと傾聴、⑤必要に応じたグリーフカウンセラー・サポートグループ紹介、⑥遺族訪問・追悼会など。
死別直後の遺族に対する基本的グリーフケアの姿勢と、不適切な対応の判別を問う問題。エンゼルケアへの家族参加が重要なケアであることを理解する。
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