ペプロウの4段階 入院初日は「方向付け」!人間関係論を看護で使う
看護師国家試験 第106回 午前 第64問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
Aさん(68歳、女性)は、胃癌( gastric cancer )のため入院した。入院初日に「夫も癌になって、亡くなる前に痛みで苦しんでいました。私も痛みが怖いんです」と言った。看護師は、Aさんが夫のように苦しむことへの恐怖や不安があることが分かり、Aさんとともに対処法について考えた。 この時点での患者−看護師関係の段階はどれか。
- 1.方向付け
- 2.同一化
- 3.開拓利用
- 4.問題解決
対話形式の解説
博士
今日はペプロウの患者−看護師関係の4段階を問う事例問題じゃ。Aさんは68歳、胃癌で入院初日。夫を癌で亡くしており「私も痛みが怖い」と話しておる。
アユム
すごく切実な場面ですね。看護師はAさんと一緒に対処法を考え始めた、とあります。
博士
うむ。選択肢は方向付け・同一化・開拓利用・問題解決の4つ。どれが当てはまるかのう?
アユム
えーと、正直どれも似た感じに聞こえます…。
博士
では順に整理しよう。ペプロウは看護を「意味ある人間関係のプロセス」と定義した理論家じゃ。4段階の最初が「方向付け(オリエンテーション)」、出会いの時期じゃ。
アユム
入院初日ってまさに出会いですよね。
博士
その通り。方向付けでは患者と看護師が初めて出会い、患者の抱える問題やニードを共有して、これからどう取り組むかの方向を定める。Aさんが「痛みが怖い」というニードを表出し、看護師が受け止めて一緒に考え始めたのは、まさにこの段階じゃ。
アユム
なるほど。じゃあ「同一化」はどんな段階ですか?
博士
同一化は、患者が自分のニードに応えてくれる看護師を「この人なら頼れる」と選び取り、信頼関係が強まる段階。ある程度の関わりを経てたどり着く場所じゃ。
アユム
入院初日では、まだそこまで信頼を持てていないかもしれませんね。
博士
そう。次に「開拓利用」は患者が看護師や病院の資源を積極的に活用し、問題解決のために使いこなしていく段階。もっと後のステップじゃ。
アユム
最後の「問題解決」は?
博士
患者が看護師からの支援を卒業していく終結期じゃな。退院が近づいた頃や、自立して新しい目標を持ち始めた頃に当てはまる。
アユム
Aさんはまだ治療も始まっていないですから、明らかに初期ですね。答えは1の方向付け、で納得できました。
博士
補足じゃが、ペプロウは看護師が場面ごとに果たす6つの役割も提唱しておる。「見知らぬ人」「情報提供者」「教育者」「リーダー」「代理人」「カウンセラー」じゃ。
アユム
多面的ですね!
博士
うむ。特に方向付け段階では「見知らぬ人」として礼儀正しく関わりつつ、情報提供者として必要な情報を伝える役割が大きい。
アユム
Aさんのケースだと、痛みへの恐怖にどう寄り添うかも大事ですよね。
博士
その通りじゃ。「夫と同じように苦しみたくない」という訴えには、緩和ケアや疼痛コントロールが現代では可能であるという正しい情報提供が効果的じゃ。
アユム
看護師が傾聴しつつ、正しい知識で不安を軽減する。理論と実践がつながりますね。
博士
理論は冷たいものではなく、看護の場面を整理し言語化するための道具じゃ。大事にしてほしい。
POINT
ペプロウは患者−看護師関係を「方向付け→同一化→開拓利用→問題解決」の4段階として整理し、看護を単なる処置ではなく「意味ある人間関係のプロセス」と捉えた理論家です。方向付け段階は出会いの時期で、患者のニードを共有し今後の方向性を定める重要な局面であり、本事例の入院初日は典型的にこれに該当します。看護師はこの時期、「見知らぬ人」や「情報提供者」としての役割を果たしながら、患者の不安や恐怖を丁寧に受け止めることが求められます。緩和ケアが進歩した現代、痛みは適切にコントロール可能であることを伝えるだけでもAさんの安心感は大きく変わります。ペプロウ理論は臨床の看護場面を理解・言語化するうえで有用な枠組みです。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(68歳、女性)は、胃癌( gastric cancer )のため入院した。入院初日に「夫も癌になって、亡くなる前に痛みで苦しんでいました。私も痛みが怖いんです」と言った。看護師は、Aさんが夫のように苦しむことへの恐怖や不安があることが分かり、Aさんとともに対処法について考えた。 この時点での患者−看護師関係の段階はどれか。
解説:正解は 1 の「方向付け」です。ペプロウ(H.E.Peplau)は患者−看護師関係を「方向付け」「同一化」「開拓利用」「問題解決」の4段階として整理しました。方向付け(オリエンテーション)の段階は、患者と看護師が初めて出会い、患者が抱える問題やニードを共有し、今後どう取り組むかの方向性を定める時期です。本事例では入院初日という出会いの場面で、Aさんが「痛みへの恐怖」という自らのニードを看護師に表出し、看護師がそれを受け止めて一緒に対処法を考え始めた状況であり、まさに方向付けの段階に該当します。
選択肢考察
-
○ 1. 方向付け
患者と看護師が初めて出会い、問題を認識し合って援助の方向を定める段階。入院初日にAさんが恐怖を表出し、看護師がそれを取り上げて一緒に考え始めた場面はこの段階に当てはまる。
-
× 2. 同一化
患者が自分のニードに応えてくれる看護師を選び取り、頼れる存在として認識する段階。信頼関係がある程度育った後のステップで、入院初日の段階には至らない。
-
× 3. 開拓利用
患者が看護師や提供されるサービスを積極的に活用し、自分の課題解決のために資源を使いこなしていく段階。問題の整理が進んだ中盤以降の段階である。
-
× 4. 問題解決
患者が看護者からの依存から脱却し、新たな目標に向けて自立していく終結期。入院初日でまだ治療も始まっていない本事例には該当しない。
ペプロウは精神科看護を基盤に、看護を「意味ある人間関係のプロセス」と捉えた理論家である。4段階はオリエンテーション(方向付け)→同一化→開拓利用(活用)→問題解決(終結)と進み、看護師は「見知らぬ人」「情報提供者」「教育者」「リーダー」「代理人」「カウンセラー」など6つの役割を場面に応じて取る。国試では段階名と典型的な場面の組合せが問われやすい。
ペプロウの患者−看護師関係4段階を、入院初日の場面と結びつけて判断できるかを問う問題。「出会い=方向付け」というキーを押さえる。
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