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高齢者の血液検査、どの値が上がる?加齢と臓器機能の変化

看護師国家試験 第112回 午後 第87問 / 老年看護学 / 高齢者の健康

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第87問

高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなるのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.血小板数
  2. 2.尿素窒素
  3. 3.白血球数
  4. 4.食後血糖値
  5. 5.AST<GOT>

対話形式の解説

博士 博士

今日は高齢者の血液検査値の特徴じゃ。臓器の変化から予測できるから、暗記より理解が大事じゃ。

サクラ サクラ

加齢で腎機能が下がるって聞きますが、それが検査値にどう出るんですか?

博士 博士

糸球体濾過量(GFR)が下がるから、老廃物の排泄が遅れる。結果として尿素窒素(BUN)と血清クレアチニンが上昇するのじゃ。

サクラ サクラ

高齢者は皆、腎機能が悪いってことですか?

博士 博士

完全に悪いわけではないが、80歳になる頃には若年時の約60〜70%程度に落ちていることが多い。ただし筋肉量減少でクレアチニン産生も減るから、見かけの数値は大きく上がらないこともある。

サクラ サクラ

それでeGFRを使うんですね。

博士 博士

その通り。血清クレアチニンだけでは過小評価しやすいから、年齢・性別・クレアチニンから推算するeGFRやシスタチンCを併用する。

サクラ サクラ

食後血糖が上がるのはなぜですか?

博士 博士

加齢で膵β細胞のインスリン分泌反応が遅れ、食後に高血糖がピークを作る。加えて筋肉量が減り、脂肪が増えることで末梢のインスリン感受性が下がる。

サクラ サクラ

サルコペニアとつながっていますね。

博士 博士

鋭い。筋肉は血糖を取り込む最大の臓器じゃ。減ると耐糖能が悪化する。運動療法が高齢者糖尿病で重視される理由じゃ。

サクラ サクラ

逆に、加齢で下がる値は何がありますか?

博士 博士

総蛋白・アルブミン(肝合成低下、栄養状態低下)、赤血球数やヘモグロビン(加齢性貧血)、動脈血酸素分圧PaO2が代表じゃ。PaO2は80歳で70台mmHgまで下がることもある。

サクラ サクラ

血小板数や白血球数は変わらないんですね。

博士 博士

数は大きく変わらない。ただし免疫機能の質は低下する。T細胞機能低下や炎症性サイトカインの慢性高値(inflamm-aging)で、CRPが軽度上昇していることもある。

サクラ サクラ

薬の投与量も変わってきますよね。

博士 博士

その通り。腎排泄型薬物(ジゴキシン、バンコマイシン、新規経口抗凝固薬など)は腎機能に合わせて用量調整が必要じゃ。ガドリニウム造影剤は腎性全身性線維症のリスクで慎重投与となる。

サクラ サクラ

看護師は検査値をどう活用すべきですか?

博士 博士

年齢と既往を踏まえて『この人にとっての平常値』を把握し、変動の早期発見に努める。栄養状態や脱水の評価も忘れずに。

POINT

加齢に伴い糸球体濾過量が低下するため尿素窒素(BUN)やクレアチニンが上昇し、インスリン分泌遅延と末梢のインスリン抵抗性増大により食後血糖が上昇しやすくなります。一方、総蛋白・アルブミン、赤血球数、PaO2は低下傾向を示し、血小板数・白血球数・ASTは加齢単独での大きな変動は乏しいのが特徴です。高齢者の腎機能評価では血清クレアチニンのみでなくeGFRやシスタチンCを用い、腎排泄型薬物の用量調整に活かします。看護師は加齢による基準値の変化を理解し、個々の患者にとっての『平常値』を把握して変動を早期発見することが求められます。

解答・解説

正解は 2 4 です

問題文:高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなるのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は 2 と 4 です。加齢に伴い糸球体濾過量(GFR)が低下し、老廃物である尿素窒素(BUN)やクレアチニンの値が上昇します。また、膵β細胞からのインスリン分泌反応低下と、筋肉量減少・内臓脂肪増加による末梢のインスリン抵抗性増大により、食後血糖値は上昇しやすくなります。血小板数、白血球数、AST(GOT)は加齢による基準値の大きな変動はありません。

選択肢考察

  1. × 1.  血小板数

    加齢による明確な変化は乏しく、基準値は成人と大きく変わらない。

  2. 2.  尿素窒素

    加齢で糸球体濾過量が低下するため、BUNやクレアチニンが上昇傾向となる。

  3. × 3.  白血球数

    絶対数は大きく変わらないが、免疫機能の質的低下(T細胞機能低下)はみられる。

  4. 4.  食後血糖値

    インスリン分泌遅延と筋肉量減少に伴う抵抗性増大により、食後血糖が上昇しやすくなる。

  5. × 5.  AST<GOT>

    肝機能指標であるASTは加齢単独での明確な上昇はない。

加齢で上昇傾向を示す項目は『BUN、クレアチニン、食後血糖、中性脂肪、LDL-C、CRP(軽度慢性炎症)、ヘマトクリットは不変〜軽度低下』。低下傾向を示す項目は『総蛋白・アルブミン(栄養・肝合成低下)、赤血球数(加齢性貧血)、クレアチニン・クリアランス、動脈血酸素分圧PaO2』。高齢者の腎機能評価では血清クレアチニンのみに頼らず、推算糸球体濾過量(eGFR)やシスタチンCを用いる。薬剤投与量は腎機能に合わせて調整が必要で、とくに腎排泄型薬物(ジゴキシン、バンコマイシン、ガドリニウム造影剤など)で注意。

加齢変化に伴う血液検査値の傾向(腎機能低下と耐糖能低下)を問う問題。