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加齢と便秘のメカニズム

看護師国家試験 第105回 午後 第49問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護

国試問題にチャレンジ

105回 午後 第49問

便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化で誤っているのはどれか。

  1. 1.大腸粘膜の萎縮
  2. 2.骨盤底筋群の筋力低下
  3. 3.直腸内圧の閾値の低下
  4. 4.大腸の内括約筋の緊張の低下

対話形式の解説

博士 博士

今日は加齢に伴う便秘の原因となる身体的変化の話じゃ。高齢者の約6〜8割が便秘に悩むと言われておるぞ。

サクラ サクラ

博士、高齢者が便秘になりやすいのはなぜですか?

博士 博士

複数の要因が重なるのじゃ。大腸粘膜の萎縮、蠕動運動低下、腹筋・骨盤底筋群の筋力低下、内括約筋の緊張低下、直腸の感受性低下などじゃな。

サクラ サクラ

この問題は『誤っているもの』を選ぶ問題ですね。

博士 博士

その通り。正解は選択肢3の『直腸内圧の閾値の低下』じゃ。これが誤りじゃぞ。

サクラ サクラ

直腸内圧の閾値ってどういうことですか?

博士 博士

便が直腸に入り、直腸壁が伸展されると伸展受容器が反応して便意を感じるのじゃ。この反応が起こるのに必要な内圧が閾値じゃ。

サクラ サクラ

閾値が低下したらどうなりますか?

博士 博士

少しの便で便意を感じやすくなる。つまり便秘にはなりにくいのじゃ。

サクラ サクラ

高齢者では閾値はどうなるんですか?

博士 博士

加齢により受容器の感受性が低下するから閾値は『上昇』する。便が溜まっても便意を感じにくくなり、便秘が起こるのじゃ。

サクラ サクラ

選択肢1『大腸粘膜の萎縮』は正しいんですね。

博士 博士

そうじゃ。加齢で大腸粘膜は萎縮し、粘液分泌減少・蠕動低下を招く。便の移動が遅れ水分吸収が進み硬便になる。

サクラ サクラ

選択肢2『骨盤底筋群の筋力低下』も正しい?

博士 博士

加齢で全身の筋力が落ちるから骨盤底筋群も例外ではない。怒責が弱まり便の排出困難になるのじゃ。

サクラ サクラ

選択肢4『内括約筋の緊張の低下』は?

博士 博士

これも正しい。加齢で内括約筋の緊張が低下し、排便反射の調整が乱れて便秘をきたす。失禁の原因にもなる両刃の剣じゃ。

サクラ サクラ

高齢者の便秘の分類はありますか?

博士 博士

最多は『弛緩性便秘』で腸蠕動低下や筋力低下が主因じゃ。ほかに薬剤性便秘、直腸性便秘、けいれん性便秘があるぞ。

サクラ サクラ

看護で気をつけることは?

博士 博士

水分摂取、食物繊維、適度な運動、毎朝同じ時間にトイレに行く排便習慣、腹部マッサージじゃ。高齢者は抗コリン薬やオピオイド、利尿薬で便秘が悪化することも多いから薬剤チェックも必須じゃぞ。

POINT

加齢により大腸粘膜萎縮、蠕動低下、骨盤底筋群や内括約筋の筋力・緊張低下、直腸壁の感受性低下が生じ便秘を招きます。直腸内圧の閾値は低下ではなく上昇し、便意を感じにくくなるため選択肢3が誤りです。看護では水分・食物繊維・運動・排便習慣を整え、薬剤による便秘悪化にも注意します。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化で誤っているのはどれか。

解説:正解は 3 です。加齢により便秘が生じやすくなる理由は複合的で、大腸粘膜の萎縮、消化管運動(蠕動)の低下、腹筋・骨盤底筋群の筋力低下、内括約筋の緊張低下、直腸壁の感受性低下などが関与します。このうち『直腸内圧の閾値』については、加齢により直腸壁の伸展受容器の感受性が低下するため、便が直腸に達しても便意を感じるまでに必要な内圧が高くなります。つまり閾値は『低下』ではなく『上昇』するのが正しく、選択肢3は誤りです。

選択肢考察

  1. × 1.  大腸粘膜の萎縮

    加齢により大腸粘膜は萎縮し、粘液分泌が減少、蠕動運動が低下します。これにより便の移動が遅くなり水分吸収が進んで硬便となりやすく、便秘の原因になります。正しい記述です。

  2. × 2.  骨盤底筋群の筋力低下

    加齢により骨盤底筋群や腹筋などの排便関連筋力が低下します。これにより怒責が弱まり、便の排出が困難になって便秘を招きます。正しい記述です。

  3. 3.  直腸内圧の閾値の低下

    加齢では直腸壁の伸展受容器の感受性が低下するため、便意を感じる閾値は『上昇』します。閾値が低下すれば便意を感じやすくなりむしろ便秘になりにくいため、この選択肢は誤りで、正解となります。

  4. × 4.  大腸の内括約筋の緊張の低下

    加齢により肛門内括約筋の緊張が低下します。これは失禁の原因にもなりますが、同時に排便反射の調節が障害され便秘もきたしやすくなります。正しい記述です。

高齢者の便秘は『弛緩性便秘』が最多で、腸蠕動の低下・腹筋の筋力低下・水分摂取不足・食物繊維不足・運動不足が主因です。その他、薬剤性便秘(抗コリン薬・オピオイド・利尿薬・Ca拮抗薬)、直腸性便秘(便意の我慢癖)、けいれん性便秘(過敏性腸症候群型)もあります。看護では水分・食物繊維摂取、適度な運動、排便習慣の確立、腹部マッサージ、必要時の下剤使用や浣腸を組み合わせて対応します。

加齢に伴う便秘の原因としての身体変化を問う問題です。直腸の感受性変化(閾値上昇)を正しく理解しているかが焦点です。