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実行機能障害と失行の違いを整理

看護師国家試験 第108回 午後 第81問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護

国試問題にチャレンジ

108回 午後 第81問

Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)の患者にみられる実行機能障害はどれか。

  1. 1.シャツを前後反対に着る。
  2. 2.調理の手順がわからなくなる。
  3. 3.物音がすると食事を中断する。
  4. 4.鏡に映った自分の姿に話しかける。
  5. 5.歯ブラシで髪の毛をとかそうとする。

対話形式の解説

博士 博士

今日はアルツハイマー型認知症の中核症状じゃ。実行機能障害とは何か説明できるかの?

サクラ サクラ

計画を立てて順序立てて実行する能力の障害、ですか?

博士 博士

その通り。目標設定・計画立案・順序実行・調整という一連の遂行能力が障害される状態じゃ。

サクラ サクラ

選択肢2の『調理の手順がわからなくなる』はまさにそれですね。

博士 博士

うむ。調理は材料準備・順序・火加減調整など複数手順を計画的に進める必要がある。これが困難になるのは典型的な実行機能障害じゃ。

サクラ サクラ

選択肢1の『シャツを前後反対に着る』は?

博士 博士

これは着衣失行じゃ。身体機能は保たれているのに目的に沿った衣服の操作ができない状態で、失行の一種じゃな。

サクラ サクラ

失行と実行機能障害の違いは?

博士 博士

失行は『動作の実行』自体の障害、実行機能障害は『計画立てて遂行する力』の障害じゃ。脳の障害部位も違って、失行は頭頂葉、実行機能は前頭葉が中心じゃよ。

サクラ サクラ

選択肢3の『物音で食事を中断する』は?

博士 博士

これは注意障害じゃ。注意の持続・配分ができず、刺激で容易に中断されてしまう。

サクラ サクラ

選択肢4の『鏡に映った自分に話しかける』は?

博士 博士

『鏡現象』あるいは『鏡徴候』と呼ばれる失認症状じゃ。自分の姿を他人と認識してしまう。

サクラ サクラ

選択肢5の『歯ブラシで髪をとかす』は?

博士 博士

これは観念失行じゃ。物品の用途を理解せず誤った使い方をする失行の一種じゃな。

サクラ サクラ

症状を分類する視点が大切なんですね。

博士 博士

そうじゃ。中核症状は記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失語・失行・失認に大別される。それぞれ区別して覚えよう。

サクラ サクラ

看護ではどう支援すればいいですか?

博士 博士

一度に複数の指示を出さない、手順を細かく区切って声かけする、集中できる環境を整える。患者の残存機能を活かした支援が大切じゃ。

サクラ サクラ

症状の種類ごとに支援方法も変わってきますね。

博士 博士

うむ、その通りじゃ。症状の分類は適切な看護援助につながるから、しっかり押さえよう。

POINT

アルツハイマー型認知症の中核症状は記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語失行失認に分類されます。実行機能障害は計画立案と順序実行の障害で、調理手順が分からなくなるのが典型です。着衣失行、観念失行、鏡現象の失認、注意障害との鑑別が重要で、本問の正解は選択肢2となります。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)の患者にみられる実行機能障害はどれか。

解説:正解は 2 です。実行機能(遂行機能)障害とは、目標を設定して計画を立て、順序立てて実行し、状況に応じて調整する能力の障害を指します。アルツハイマー型認知症では脳のβアミロイド蓄積や神経原線維変化により前頭葉機能が低下し、調理・買い物・家計管理など複数手順を要する行為が困難になります。『調理の手順がわからなくなる』は、材料の準備・調理順序・火加減の調整など計画的遂行が必要で、典型的な実行機能障害の表れです。

選択肢考察

  1. × 1.  シャツを前後反対に着る。

    着衣動作の障害は『着衣失行』であり、身体機能は保たれているのに目的に沿った衣服の操作ができない状態です。実行機能障害ではなく失行に分類されます。

  2. 2.  調理の手順がわからなくなる。

    調理は計画立案・順序実行・状況判断を要する複雑な作業であり、その手順が分からなくなるのは実行機能障害の代表的症状です。これが正解です。

  3. × 3.  物音がすると食事を中断する。

    刺激に反応して行動が中断されるのは『注意障害(注意の持続・配分障害)』で、実行機能障害とは異なる高次脳機能障害です。

  4. × 4.  鏡に映った自分の姿に話しかける。

    鏡の中の自分を他人と認識するのは『鏡現象(鏡徴候)』と呼ばれる失認症状で、認知症の進行期に見られますが実行機能障害ではありません。

  5. × 5.  歯ブラシで髪の毛をとかそうとする。

    物品の用途を理解せず誤った使い方をするのは『観念失行』で、道具の使用に関する失行に分類されます。実行機能障害とは異なります。

アルツハイマー型認知症の中核症状は、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失語・失行・失認の4つに大別されます。実行機能障害=計画立てて実行できない、失行=身体は動くのに目的動作ができない、失認=対象を正しく認識できない、注意障害=集中できない、と症状ごとに分類して覚えると鑑別しやすくなります。看護では、一度に複数の指示を出さない、手順を細かく区切って声かけする、一つの作業に集中できる環境を整える、などの支援が有効です。

アルツハイマー型認知症の中核症状のうち、実行機能障害・失行・失認・注意障害を正しく区別できるかを問う高次脳機能障害の分類問題です。