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MCIを正しく掴む:認知症の一歩手前で何が起きているのか

看護師国家試験 第109回 午前 第53問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第53問

軽度認知障害(mild neurocognitive disorder)で正しいのはどれか。

  1. 1.一過性の障害である。
  2. 2.実行機能障害がある。
  3. 3.物忘れを自覚している。
  4. 4.日常生活動作<ADL>が障害される。

対話形式の解説

博士 博士

今回は軽度認知障害、MCIについて学ぶぞ。

サクラ サクラ

MCIって最近よく聞きます。認知症とどう違うんでしょうか。

博士 博士

良い問いじゃ。MCIは正常加齢と認知症の間に位置する状態で、認知機能の低下はあるがADLは自立しているというのが核心じゃ。

サクラ サクラ

なるほど、生活は自分でできるんですね。

博士 博士

そこが重要。Petersenの基準では、記憶の訴えがあり、全般的認知機能は正常範囲、ADLは自立、認知症ではない、という枠組みじゃ。

サクラ サクラ

DSM-5ではどう定義されているんですか?

博士 博士

DSM-5ではmild neurocognitive disorderとして、記憶・実行機能・注意・言語・知覚運動・社会的認知のいずれか1領域以上の軽度低下が含まれるとされておる。

サクラ サクラ

記憶だけじゃないんですね。

博士 博士

そこが選択肢2の正解につながる。実行機能の低下、つまり段取り・計画・問題解決がうまくできなくなることもMCIに含まれるのじゃ。

サクラ サクラ

1の「一過性」はどうですか?

博士 博士

一部は正常に戻る復帰型もあるが、年間10〜15%が認知症に進行するとされる。一過性と言い切れるものではない。

サクラ サクラ

3の「物忘れを自覚している」は一見正しそうですが…。

博士 博士

自覚は多いが必須ではない。家族や同僚の訴えで気づかれる例も多い。自覚は診断の核心ではないのじゃ。

サクラ サクラ

4の「ADL障害」はMCIでは起こらないんですよね。

博士 博士

その通り。ADLが障害されたら認知症のレベルに進んでおる。MCIはあくまでADL自立が大前提じゃ。

サクラ サクラ

早期発見が大事ということですね。

博士 博士

うむ。MCI段階で運動習慣・地中海食・社会参加・認知トレーニングなどを取り入れると進行を遅らせる可能性がある。看護師も地域包括ケアの場面で早期発見の役割を担う。

サクラ サクラ

認知症予防は生活習慣が大きいんですね。

博士 博士

高血圧・糖尿病・難聴・孤立などもリスク因子として認識されておる。Lancet委員会の提唱する12の修正可能リスク因子はぜひ押さえておくとよい。

POINT

軽度認知障害(MCI)は正常加齢と認知症の中間にある状態で、記憶障害を中心とした認知機能低下を認めながらもADLは自立しているのが特徴です。DSM-5のmild neurocognitive disorderでは記憶だけでなく実行機能・注意・言語・社会的認知など複数領域の軽度低下が含まれ、段取りや計画立ての困難といった実行機能障害も該当します。年間約10〜15%が認知症へ移行するとされ、早期発見・早期介入が予防の鍵となります。看護師は地域包括支援センター・認知症初期集中支援チーム・外来などの場で認知機能評価に関わり、運動・食事・社会参加を通じた進行予防や家族支援を担う重要な役割を持ちます。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:軽度認知障害(mild neurocognitive disorder)で正しいのはどれか。

解説:正解は 2 です。軽度認知障害(MCI)は認知症と正常加齢の中間にあたる状態で、記憶障害を中心とした認知機能低下があるが、日常生活動作(ADL)は自立している。DSM-5では軽度認知障害に「複雑性注意・実行機能・学習と記憶・言語・知覚運動・社会的認知」のうち1領域以上の軽度低下が含まれ、実行機能の低下も該当する。MCIは年間約10〜15%が認知症に移行するとされ、早期介入の重要なターゲットである。

選択肢考察

  1. × 1.  一過性の障害である。

    MCIは一部に正常へ戻る例(復帰型)もあるが、多くは持続または進行し、年間10〜15%が認知症へ移行する。単純な一過性障害ではない。

  2. 2.  実行機能障害がある。

    DSM-5のmild neurocognitive disorderでは、記憶・実行機能・注意・言語などのいずれか1領域以上で軽度低下がみられるとされる。段取りや計画立てが苦手になるなどの実行機能障害も含まれる。

  3. × 3.  物忘れを自覚している。

    本人が自覚している場合もあるが、必須ではない。本人または家族・同僚などからの訴えがあれば該当し、逆に自覚のないケースも珍しくない。自覚の有無は診断基準の核ではない。

  4. × 4.  日常生活動作<ADL>が障害される。

    MCIの最大の特徴は「ADLが自立している」ことである。ADLに明確な支障が出ていれば認知症の段階と判断される。

MCIはPetersenらの基準(記憶障害の訴え・全般的認知機能正常・ADL自立・客観的認知機能低下・認知症でない)が広く知られる。アルツハイマー病の前駆状態として注目され、運動・食事・社会参加・認知トレーニングなどの介入で進行を遅らせる可能性がある。国試では「ADL自立」「認知症の前段階」「早期発見が重要」がキーワード。

MCIの診断上の核心(ADL自立+認知機能の軽度低下)と、実行機能障害も含まれる広さを理解しているかを問う問題。